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プロローグ

初心者です。

ご感想やアドバイスを頂けましたら幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。





人々は、今日も通勤通学に急ぎ行き交う。

そんな当たり前の日常の風景を非日常が破壊した。

突如として交差点の中心に出現した紫色の光が周り全てを飲み込んだ。

やがてその光は日本を中心に世界中を改編していき一つの壮大な地形を作り上げた。


       ★


ー三年前・異界化中心地・日本ー


突如として荒廃した土地には崩壊したビルなどの建物があちらこちらにつきだしている。

魔族たちは人々を襲ってはその生命を食らい、己の力としていく。

 抗いようのない最悪に見舞われるなか、これに立ち向かう者たちがいた。

生まれながらに聖力と聖剣を宿す者。

彼らは契約した女神と共に戦い、奮闘する。しかしそんな者たちも力のない者から順に倒れてゆく。




 「おいしっかりしろって優汰」


「僕は······大丈夫 

ちょっと擦りむいた······だけだからさ 

瞬······奏さんもそんな顔しないでくれよ」


優汰の腹部からは尋常じゃないほどの血がにじみだしている。

致命傷なのは確実だった。


「······でも」


どうにかして、助けてやりたい。

そんな気持ちが確かにあった。

が、そのときの俺と姉の力ではどうにもならずその一点を見つめることしかできなかった。


「今は! ······なすべき事があるだろう

僕のことはいい······進むんだ瞬!! 」

 

「······」


「······ごめん······ごめんね優汰君

瞬ちゃん行こう!!······こんな事、もう終わらせなきゃ」


傍らにいる姉の瞳は震え潤み必死に涙をこらえているのが伝わってきた。



「······必ず向かえに来る」


「······うん待ってる······僕待ってるよ······瞬······奏さんご加護を···」

 

今思えばそれが、親友と交わした最後の会話だったのだ。

優汰の気持ちを無駄にしない為にも必死に俺と姉は下級魔族と応戦しながらこの異変の中心地へと急いだ。

 その場所で聖王と共に両親が殺戮の世界を終焉させるため必死に魔王と戦っているはずだ。

 力にならない事はわかっていた。

恐怖と不安が取り巻くなか、ただ両親の傍で終焉を見届けたいその一心だった。

 しばらく進んでいくと倒壊した建物などで狭くなっていた通路が開け、月の光が大地を照らし出す広々とした空間が目の前に広がった。

中心地に到着したのだ。

離れた場所では白と紫の剣技が幾度も交差しそのたびに強い光を放っている。

そんな剣技の攻防に圧倒されるなか、何やらぐちゃぐちゅという異様な音が微かにしていることに気がつき俺は、恐る恐る目線を上にあげていった。

すると自分の視界に両親が宙に浮いている姿が写し出されたのだ。

 両親の腹から背中までを白く輝く光剣が突き破り、赤い鮮血がどくどくと止めどなくあふれでている。その血は一滴も下に落ちる事なく光剣に吸収されていく。

 

「やっと来ましたねぇ瞬くん、待ちくたびれちゃいましたぁ」


背後からの声に警戒して、漆黒色の刀を構え振り向く。

そこには、よく知る人物がたたずみ、いつも俺に向けていたあの優しい笑みを浮かべていた。

彼女の髪は淡い金色で、黄金色の瞳は神々しく輝いている。

 出過ぎず、足りなすぎずな完璧な軆つき。そして指先から足先まで白くて柔らかそうな肌、整った顔立。

白いドレスのような羽衣をまとった聖王の娘たる彼女の声はすべてに癒しを育むような優しい印象を与える。

そんな彼女は、親父の契約女神だった。


 光剣が消えるとドサッと音をたて両親だった骸は倒れた。

 

「ふぅ、ごちそうさまでしたぁ」

 

「アリシアさん······がやったの······? よくも!! 」


姉が聖剣を構えアリシアに飛びかかったが

 

「奏、あなたには用ないんですぅ」


かわされると手刀をくらい、地面に叩きつけられた。

それ以降姉が動く事はなかった。

目の前で起こっている現象に頭がついていかず。

自分の口から発せられた声は言葉にならない弱々しいものだった。

 

「大丈夫ですょ、気絶させただけですから

もちろんこの場にはいませんがぁ、私のお姉様。アテナにも気絶してもらいましたぁ」

 

「どう···して? 」

 

「はぁい? 」

 

「何でこんな事するんだよ?! 」


「それはぁ」


 途中で会話が途切れた。

彼女を危険な存在だと察知した聖王と魔王が剣術を放った為だった。

白と紫の炎がそれぞれ一直線に放たれアリシアを消し去ろうと迫っていた。

 彼女はそれに向け右手をかざすと巨大な光剣を具現化させ盾のように防せぐ。

 そして、そのまま右手を振り払う動作をし、彼女の動きに連動した光剣がそれぞれの火炎を容易に凪ぎ払いかき消す。

 

「邪魔ですねぇ…そうだ!!

いっそのことお父さまもぉ魔王さんもぉ

私がぁ食べてあげましょう 瞬くん、ちょっと待っててねぇ♪ 」


 彼女は少し頬を赤らめると口元を緩ませ、瞬間移動で魔王と聖王に向かっていった。


 

 彼女が出現した場所を予測するかのように聖王剣と魔王剣が素早く振りかざされる。

 頭上に振りかざされたそれにアリシアは手をかざすと巨大な二対の光剣を出現させ攻撃を受け止め、さらに弾き返した。

 聖王と魔王は体制を崩されながらも斬撃を放ち、それぞれ別方向へ距離をとりつつ立て直す。

 白と紫の肉骨を容易に切断するであろう鋭くすばやい斬撃だ。

 そんな斬撃を、彼女は、容易に防げるといわんばかりの顔で一方の巨大な光剣を盾にしばらく防ぐと、もう一方の巨大な光剣をバネのようにしならせ踏み台にする。

 はるか上空で反転し、今度は盾がわりにしていた光剣を空中に出現させ、それを踏み台がわりに下へ向け加速する。

 途中、狂った笑みを見せると上空の光剣を再び出現させ両手で振りかぶり、狙いを定めたのか魔王に向けよりいっそう加速した。

 数秒後、魔剣と振りかぶった光剣が合わさりものすごい風圧が辺りを襲った。


 俺は飛ばされまいと残り少ない聖力を使って白い防御壁を作り姉をかばいながらなんとかしのぐ。


 その間にも光剣に加わる力と光はだんだんと強くなり魔王はとうとう片膝を地面についてしまった。

 黒い鎧に身を包んでいるため顔色は伺えないが、明らかに苦戦を強いたげられている事は確かである。

やがて魔王の片膝を中心に地面に亀裂が走り始めた。

魔王がやられる。そう思った瞬間だった。

 彼女が少しずつ押し返され始めたのだ。

――――それはなぜか。

聖王が魔王剣を聖王剣で下から支え始めたからであった。

アリシアの顔からは笑みが消え焦りが見える。

 

「なんのつもりだ聖王?

我輩が死ねば、貴様に都合が悪い事など」

 

「勘違いするなよ魔王 お前を助けた訳ではない。お前を、処刑するのはこの私だ 

ただ、それだけの事だ!! 」

 

「あらぁ、お二人ともぉおしゃべりですかぁ? ずいぶんと余裕なんですねぇ

なんかぁ本当にムカつきます!! 」

 

「アリシア!! 正気に戻れ 父はお前の味方だぞ」

 

「はぁい、お父様。 

私の為にぃ死んでください。

ついでに魔王さんも殺して、私がこの世全ての覇者になるんですぅ」

 

「············仕方あるまい 魔王」

 

「なんだ」

 

「これより、聖と魔。

両族を滅ぼしかねない強大なる存在を抹殺する!! 故に、一時共闘を願えたい」

 

「承知した、今ばかりは貴殿に一時協力するとしよう」

 

とたんに聖剣と魔剣がそれぞれ凄まじい光を放ち光剣を弾く、弾かれた光剣はひび割れ一瞬で破壊され、衝撃でアリシアは地面に叩きつけられた。

 魔王と聖王は間髪入れず先ほどの技を今度は融合させ至近距離で放つ。

 白と紫の炎渦か驚愕した彼女を先ほどの位置よりも遠い場所まで押し流し大きな音と共に強大な爆発を起こした。

間違いなく死んだであろう彼女を中心に爆風とともに土ボコリがあがり、やがて聖王も魔王も包みこんでいった。

 戦況が見えない状況のなか、しばらく静寂が続き何も起こらなかった。


たが、静寂のなか嫌な予感を感じた俺は、倒れている姉の肩を担ぎ上げ首に回し、引きずりながらも安全な場所まで退避させその場から出来る限り離れた。

 そんなさなか、突如として光の斬撃が一閃はしりドサドサと何かが落ちる音が立て続けに起きた。

そしてぐちゃぐちゃと何かをひとまとめにする粘気質な音がしばらく響いていた。

予感が的中してしまったのだ。

土ボコリが晴れていくとアリシアが白と紫のリンゴを頬張りながら歩いて近づいてくる。

お腹が深くえぐれ血肉や骨が見えた状態。

もはや歩けるはずもない彼女の傷口がリンゴを頬張る度にだんだんと塞がっていく。


「さて、ハムハム ほーはく、ふはりで、(ようやく二人で) 

ハムハム 話せますねぇ、ごちそうさまでしたぁ。

ふぅ······しかしながらさっきは危ないところでしたぁ。

まさか、お父様と魔王さんが手を組むなんてぇ、おかげでフル稼働した光剣は消失。

せっかく吸収した聖力のほとんどを失っちゃいましたぁ。

まぁ、お父様と魔王さんの力を吸収してぇ全回復しましたけどぉ」


アリシアはリンゴを食べ終えるとよりいっそう近ずいてきた。

俺は、今まで感じたことがない威圧感を感じとっさに真後ろに飛んで離れる。

 

「あらあら逃げちゃいましたぁ 残念ですぅ」


凄まじい威圧感だけでなく彼女自身にも変化があった。

黄金色の左瞳が怪しく光る紫色に侵食されていったのだ。

 

「そういえばぁ、どうしてって言ってましたよねぇ。

私自信の力を高める為でしょうかぁ。

奏や私のお姉様を殺さなかったのは、私以上の力を持っていなかったからなんですよぉ

吸収したところでぇ私の力は強化できませんし、余計な消費は避けたいですからぁ。

まぁ、アテナお姉さまがいたら君のご両親の力を吸収するのにぃ、もうちょっと手こずってましたし♪ 」

 

「············」

 

「それに、瞬くん。 君の為でもあるんですよぉ」


彼女の目が急に鋭くなった。

 

「俺の······為」

 

「瞬くん、気づきませんかぁ?

私が烈太と怜奈を殺したお陰でぇ、封印がとかれてぇ君は本来の力を取り戻したはずですよぉ。

禁じられた聖剣を よかったですね!! 」


「禁じられた聖剣?! 」


心臓が急に熱くなった。

聖力、身体能力、洞察力、思考力、全てにおいて格段に上がっているのを全身を流れる血をとうして感じる。

不可能なんてなく、何でも出来そうな気がした。

俺はその聖剣の名を知っている。

 

「そう、君の中に眠る聖剣は自らの使い手の契約を無限化させ交わした者の力を操り増幅させる優れものなんです。

言うなればどんな属性技も使い放題てところでしょうか。

その代わり、契約しただけ契約者本人の精神負担が大きくなる代償があるんです。

············まぁ、聖と魔2つの力を持つ今の私には関係ないのでぇその聖剣を吸収して禁じられた力を我が物にするのですぅ。

それで全属性を手にした私がぁ瞬くんやこの世を全ての理を……と考えていましたが吸収しすぎてぇ今は無理そう うぅ少し吐き気がぁ」


もう決心はきまっていた。

だから怒りまかせに力を振るうことにした。

そう思った時にはアリシアに飛びかかっていた。

 

「我が使役にしたがい顕現せよ、ファイオラセル!!! 」


アリシアが召喚したまかまがしい大剣と西洋の剣と刀を融合させたような形のファイオラセルが合わさり、ガツンと重く低い金属音が鳴り響いた。しばらくして辺り一面を先ほどとは比べもなにならない衝撃波が襲う。

 

「よかったぁ、ついでに魔剣と聖剣を融合しておいて正解でしたぁ。

私の光剣では絶対破壊されてるところでしたよぉ。 もうだせないですけど」


彼女はそう言ってあの頃と変わらない優しい笑みを向けてきた。

今まで過ごしてきた思い出が甦り。

こいつは俺から大切なものを奪った。という恨みがこみ上げより一層強くなる。

 

「俺の為? 自分が力を得てこの世界を、全てを支配したいだけだろう!! 」

 

つばぜり合いが続くなか、力を込めるとファイオラセルが白い光を放ち出した。

それに呼応するかのようにまがまがし大剣が紫の光を放ち出す。 

 

「まぁそれもありますけどぉ、結果的には瞬くんの大国をつくる為なんですからねぇ。

私、それが今。いちばん楽しみなんですぅ」

 

そう言うと彼女は頬を赤らめる。

 

「そんな欲望の為に、親父も母さんも!! お前の身内も!! みんな殺したって言うのか!!」

 

「そうですょ、でも安心してください。

私が吸収するのは禁じられた聖剣だけでぇ君は殺しません……だって私は君を愛していますからぁ。

私は君が欲しくて、欲しくて、しかたないんですぅ♪ 

だから全てを支配したい♪ 」

 

「……狂ってやがる」

 

「はぁい♪ なので一緒に来ませんかぁ? 魔域へ」


以前の面影はまったくなく、自分の欲のままに殺戮したこいつはまるで別人だ。

だからこそ俺は············

 

「ふざけるな!! 

俺はお前を一生恨み、憎み続けてやる!! そしてかならずお前を殺す!! 」


 より一層力を込めるとあたり全体が白い光に包まれた。 聖力の暴走だ。

白と紫のドーム状の光が対立し強く眩しい光を放ちながら大地に広がっていく。

 

「まだコントロールできないみたいですねぇ

私、半魔なので消えちゃいますぅ!?

なんて、冗談はさておき。

瞬くんが私の物になる日を楽しみにしていますからねぇ♪ 」


 俺が意識を失いかけるなかアリシアの声だけが響いていた。

 

――――これは俺が憎しみの闇を背負った過去の記憶である。


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