ブリキのリズ
このクルマのモデルは、フォードT型と言う、初期のクラシックカーです。
日本では、T型フォードと呼んでいますが、
向こうでは、ティン・リジー❨ブリキのリズ❩と呼んでいた様です。
クルー全員がハテナマークで有るが、ともかくリズを、ピット裏の工房に運び込む。
「何処まで出来るか分かりませんが、みなさんに準備して頂きたいものが有ります」
「よ・良し、言ってくれ」
さすがドリュウスさんだ、一番に顔付きが変わった。
「コーナーで全くタイヤが付いてきてくれません。原因はバイクの様に細いタイヤ巾です。二重重ねの、タイヤを付ける事は可能でしょうか?」
「タイヤか・・・ 取り付けボルトを延長すれば良いんだろ」
「はい。でも、只でさえタイヤがむき出しなのに、二重タイヤと言うのも、空気抵抗の問題も有りまして」
「なら、カバーを掛けてみるかい? マッドガードをフロント迄伸ばし、はみ出した部分も加えて、全体を包めば良いんだろ?」
モーガンさん、理解が早い。現行のタイヤカバーを延長し、オーバーフェンダーにすると言う。さすが板金職人だ
「はい。お願いします。そして、カーライルさんには、安定装置を作って貰おうと思います」
「いきなり、さん付けかよ。気持ちワリイなあ。なんだ、その装置とやらは?」
「そこに丸材が在りますよね。決められた長さで切断し、決められた場所で曲げて欲しいのです。スタビライザーと言う安定装置です」
「オレには、ただの棒に見えるがな」
「ただの棒ですよ」
「はは・・・ そうか、ただの棒か」
「曲げた後は、700度の熱で20秒程、加熱して、徐冷して下さい。急冷して、焼きを入れないで下さいね」
「軟らか過ぎねえか?」
「焼きなまし程度が、ちょうど良いんです。完全に焼きが入ると、ボキンですよ」
ボクは、この世界の鋼材をあまり信用していない。本当はガッチリ焼き入れして、ハガネにしたいが、脆くなっても困る。鋼材のバネ性に賭けて見ようと思っている。
「これが設計図です。コの字に曲げて、センターをシャーシに固定します。先端はサスペンションの上に来る様になっています」
「了解だ。前後2本で良いんだな?」
「はい、お願いします。ボクはこれから、裏山の林へ行って来ますので」
「何が有るんだ?」
「金剛竹と言う、とても固い竹が有るようです」
「それも魔法か?」
「ええ、生き物図鑑で調べました。そうそうドリュウスさん!」
「ん?」
「シャフトの調整もお願い出来ますか?」
「ああ、解ってるよ。いつまでも羽根を入れとく訳にも行くまい」
「ありがとうございます。それでは行って参ります」
クルーにお願いした後、金切ノコを持って、山に分け入った。
あまり太くても意味無いし、細いと強度に問題が出る。Φ30位かな?
「おっ! あった! これが良いな」
〈おう! 見つけたのか?〉
ドリュウスさんからの念話だ、ビックリしたぜ。
〈ドリュウスさん、ビックリさぜないで下さいよ。レンチを頭に当てて何してるんです・・・〉
〈えっ? 見えるのか?〉
〈見えていませんケド、それくらい解りますって〉
〈はは・・・ すまん、すまん、こっちは順調だ山道気を付けなよ〉
〈・・・ありがとうございます〉
念話を覚えたから使いたくって仕方ないんだな。電話と念話。うん、似てるな。
同サイズの竹を4本カットし、腰に取り付ける。
内側をドリルで削るのは良いとして、さて、パッキンをどうするかだな・・・
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¦ シリンダーパッキンに代用できる物
¦ 素材 ブルーパンサーの小腸
¦ 生息地 H 254m R 84度 の地点
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ここから254mか・・・ 山ライオンの腸を検索する辺り、この図鑑、デキル!
2m程度の竹を、手に取り、先端をとがらせる。
「元冒険者をナメんなよ!」
しばらく生息地に向けて歩いていると、どうやら向こうも、こちらを察知した様だ。
「グギャアア」
はは・・・ バカだなあ、戦う前から叫んで居場所を教えてくれる。
ブルーパンサーは、青い体毛の獣で、一気に突進してくる。10m手前まで来ると、ジャンプして飛び掛かって来た。
竹ヤリを相手の胸へと、狙いを定めると、そのままズブズブと突き刺さり、ブルーパンサーは横倒しと成り、口からは血液混じりのアワを吹いている。
「叫ぶのは、相手を倒してからだ」
竹ヤリで倒したブルーパンサーを首から担ぎ、山を降りる事にする。
「ん?」
またも、生き物図鑑が反応する。
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¦ バケットシートに代用できる物
¦ 素材 シルバースライム
¦ 生息地 H 135m R 284度 の地点
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「ただいま戻りました」
「!!」
クルーのみなさんが二度見してくる。首から担いだ、ブルーパンサーはともかく、背中に背負った巨大なスライム。
ショイコが無いので、ロープでグルグル巻きにして背負っている。
「オイオイ、行商がやって来たぜ!」
さすがカーライル、的確なツッコミだ。
まだまだ、セコい改良ですが、最初はこんな感じでしょう?