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異世界レーシング  作者: 吉澤悦男
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異世界に来たら無免許なのにレーサーになちゃった

 えっと、プロローグです。

 機械好きのオタクな主人公が、失った記憶を思い出し。前世の記憶を頼りに異世界で奮闘するお話にしたいと、思います。

 ドリュウスさんのイライラは限界だった。


「まだか、まだ来ないのか…」

 ドライバーのスナップさんが、まだやってこない。今日は、スタートポジションを決めるタイムアタックだと言うのに・・・


 まあ、連敗続きで落ち込んでいた様だが、開始時間に遅れるなんて・・・ かれこれ2時間もこの状態だ。


「だめだ・・・ もうすぐ出走の時間だ!」

 チームリーダーのドリュウスさんは、渋い顔に成っている。


「おいエンジン! お前代わりにレースやらないか」 

「はあ?」


「ドライバーとしてな」


「ボクが、ですか?」

「メカニックのお前なら、このクルマの動きは掴んでるだろ。」

「いやいやいや、調整するのと、レースするのとでは・・・」


「これから登録してくる!」


「いや、ちょっと待って下さいよ! 第一ボクは運転免許証すら、持って無いのに」

「? 運転めんきょ? 何だそれ」


「運転するなら、免許証は当たり前でしょ?」

 まさか免許証も持たず、クルマを運転したり、レースしてるの? それじゃ、ボクと同じじゃないか。


 ・・・って。記憶が混濁しているな。免許証ってなんだろう?


 そんな時・・・


 過去の記憶が一気に流れ込んできた・・・ 氷室礼二・・・ ボクの名前だ・・・ 日本人で・・・


 工業高校を卒業した後、小さな工場に就職して、朝から晩まで油にまみれ、機械加工の仕事をしていた。まあそれほど大した経歴では無いけれど、機械加工をするのはキライじゃ無かったから、性に合っていたと思う。


 働き出してからは、実家の方にもご無沙汰していて、たまには両親に顔見せしようと考えていた。そんな矢先、帰りの電車でウトウトしていると、突然体中が光り出し、気が付くとこの世界にやって来ていた。


 この世界はどうやら異世界らしくて、鎧兜のイタリア人みたいな人が、モンスターと戦ったりしている・・・ 不思議と言葉が通じたりするし、まるでTVゲームの様な世界だ・・・


 とりあえず異世界でボクは、冒険者となって木の実を採取したり、モンスターと戦ったりして生活していた。


 一年くらい経った頃だろうか。レベルが100に成って浮かれていた所、背後からモンスターに襲われ、致命傷をおった。回復魔法により徐々に復活していったものの、記憶が失なわれていた。


 自分が誰かも判らず、街をさ迷っていた所、ドリュウスさんに出会い、助けてもらった。食事、寝る所、仕事を与えてもらったのだ。


 ドリュウスさんはエンジンの製造メーカーで在りながら、自動車レースへの参加も積極的で、クルマをもっと普及させ、貴族だけで無く、一般市民にも購入可能なコストに押さえたクルマ造りを考えているらしい。

 レース参加は、そのデモンストレーションだと言っていた。


 この世界には、電気もガソリンも存在しない。


 主にバルバ山で採れる、風の実をタンクに入れ、スロットルを操作する事で、4気筒のピストンを動かし、シャフトを回す仕組みだ。


 工具や加工機械も圧縮エアーを使用している。


 ボクもこの2年間、ピストンの組みバラシから初め、今ではメンテナンスもさせてもらっている。


「エンジン! 登録してきたぞ」

 意外と強引な人だね。でもまあ、自分がメンテしているリズに乗れると言うのも、少しワクワクする。


「処でドリュウスさん、ボク記憶を取り戻しました」

「ほう、そりゃ何よりだ。で、何者だったんだ」

「冒険者です。魔法も使えます」


「そ・そうか・・・ じゃあ、もうクルマに乗ってもらえ無いのか?」

「そんな事ありませんよ。リズに乗れるのは嬉しいです」

「う・うむ・・・ そうだ名前も思い出したのか?」


「はい。氷室礼二と言います」

「ヒロム・・・」

「今まで通り、エンジンと呼んで下さって良いですよ」


 記憶が戻った事で、テンションも上がってきた。タイムアタックとは言え、初のレースだ。燃えてくる。


「ちょっとドリュウスさん、そこのレンチ取って貰えませんか?」

 魔法を思い出したので、ちょっと試してみたくなった。


「ん? M8で良いのか?」

「ええ。それをこめかみに当ててみて下さい」

「??」

 訳が分からないままだが、素直にレンチをこめかみへと当てて下さるドリュウスさん。


〈もしもし、聞こえますかドリュウスさん〉


「うわあ、レンチから声がした!」

〈念話です。指向性のある。この金属は念話を通し易いんですよ〉

「驚いたなあ」

「これを使えば、レース中、クルマとピットで会話が出来ますよ」

「むう、便利だなあ」

「タクシー無線みたいなもんですね」

「ああん? まあ、ともあれ準備してくれ。後3台タイムを採り終わったら、次はお前の番だ。力まず、気楽にやってくれりゃあ良い」

「はい、解りました」


 リズの置いてあるピットに向かう事にした。リズのコックピットはシンプルだ。シートベルトすら無い。そのベンチシートに腰を降ろすと、クルーのカーライルがやって来た。


「よおエンジン、ドライバーだって? 壊すんじゃねえぞ」

「さあね、そん時ゃカーライルの徹夜が確定するだけだろ?」

「はは・・・ ちげえねえ。よし、ピストン回すぞ」


 カーライルはフロントにあるクランクシャフトを回し、エンジンをスタートした。軽くスロットルを開くと、回転数が跳ね上がった。せめてスターターが欲しいよな・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

¦ 20HP T型  リズ

¦ 1、スターターが無い   ¦ イグニッションコイルが必要

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ボクの左側の空間に、突然スクリーンが現れた。

 メモ帳である。そうそう、これもスキルの一つだった・・・

 思い付いた問題点等表示してくれる。うーん、便利。


 カーライルは、ニカっと笑いながら・・・


「良い感じにフケるじゃねえか」

「ああ・・・ 最高だ。タイム楽しみにしてろよ!」

「おっ! 言うねえ、期待してるぜ」


 よく記憶喪失の人が、記憶を取り戻すと以前の事を忘れると言うが、覚えていられて良かった。リズの機嫌の取り方も心得ている。


 このクルマはオード社のT型で、一般にT型オードと呼ばれている。A型から始まり、20回のモデファイや改良をされたクルマだ。何故か、ティン・リジー❨ブリキのリズ❩と言うニックネームが有る。


 20馬力で、2速❨LOWとHI❩のトランスミッションを足で切り換える方式だ。この様なクラシックカーを前世の知識だけでは動かせないし。この世界での記憶が残っていて助かった。


 そうこうしている内に、順番が回ってきた。

「よおし、いっちょうやってやるかぁ!」


 この世界では、電気とガソリンの様なエネルギーを使いません。圧縮エアーを使って、リューターや、サンダーの様な、エアー工具を使う設定です。

 最新のエンジン開発では、ハイブリッド・水素電池に続き、空気エンジンが開発中らしい。実は、未来のクルマなのかも?


 起承転結の結から書き出したので、オチと伏線が存在します。こうご期待下さいませ。

次回は、コースを走ります。

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