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魔眼の忍者は地球と自分の未来を憂う  作者: 入栖
魔眼の忍者は個性豊かな仲間達と出会う
6/38

06

湊音吉 (みなとおときち) 主人公

ナズナ 湊を助けてくれた女性

喜介 (きすけ) ナズナの師匠

 

「ふぅー」

 喜介きすけさんはキセルを口から離すと、小さく息をつく。

「ふむ。事情は分かったよ。どうやら君は転位してしまったようだね」


 今までのいきさつを目の前に座っている喜介さんとナズナに話して、得られた答えはそれだった。

「転位、ですか?」


 確かに不思議な穴に落ちたのは分かっていたけど……。それがどうして転位に? あの穴は世界を渡れるどこでもドアのようなものなのだろうか?


「ああ、その通りだ。君は地球から、この世界『ヴォーア』に落ちた。つまり転位してしまったんだろう。珍しい話ではあるが無いわけではないからね。であれば林の中で倒れていたのにも納得できるし」


「えっ? 俺、林の中で倒れてたんですか!?」

「そうだよ、倒れている君を抱えて連れて来てくれたのはナズナだからね。感謝しておいた方がいいよ?」


「ふっふーん!」

 ほとんどない胸を張りながら、勝ち誇った笑みを浮かべるナズナ。何故だかお礼を言いたくは無い。だけど助けてもらったのは事実であるみたいだから、お礼はした方が良いだろう。

 

「誠に遺憾だけど、助けてもらったのは事実のようだしな。一応な、その……ドウモアリガト」

「ちょっとちょっとぉ、なーにぃその心の無い謝罪は! もっとあたしを褒め称えなさいよ、いえそれじゃ足りないからあがめなさいよ!」


 自分が神にでもなったつもりなのだろうか。お前がなれるのはせいぜいミジンコが良い所じゃないだろうか。つか、俺の腕にはお前に押さえられて出来た跡がまだ残っているのだが、どれだけ力があるのだ。人の皮をかぶったゴリラなのではないか。


「まぁまぁ。君もそんないぶかしげな顔をしないでさ。ナズナはね血相を変えて僕の所に飛び込んできたんだよ? それにつきっきりで君の面倒を見ていたんだから」


 と喜介さんがそう言うと、ナズナは慌てた様子で前に手を突き出し、喜介さんの口を塞ごうとするも、喜介さんは軽くかわしてしまった。


「ちょっと、ししょー! ソレは言わない約束でしょう!」


 彼女の様子を見るに、どうやら本当に心配をかけてしまったようだった。彼女は少しだけ顔を赤くして両手をパタパタ振っている。


「えっと、その。ナズナさん、ありがとうございます」

 俺は仕切り直してもう一度彼女にお礼を言い頭を下げた。どうして俺は林に倒れていた俺を連れて来てくれた上に、看病もしてくれたと言うのに、なぜ彼女に対して怒りを感じてしまったのだろうか。いや、仕方ないと思う。


「え、いや……あのねっそう萎縮されながら言われるとあたし調子狂っちゃうんだけど! それにあたしの事はナズナで良いからっ! 頼むから頭をあげてぇぇ!」


「うんうん。よきかなよきかな。ナズナもお礼の言葉も貰ったようだし……じゃぁ切り替えて今後の話と行こうか」


 俺はゆっくり頭を上げる。ナズナは僕から顔をそむけながらも、たまに横目でチラチラこちらを見てくる。

 喜介さんはそんなナズナさんを見てにやにやしながらキセルを口に当て息を吸い込む。そしてゆっくり吐きだした。


「聞いた話だから本当かどうかは知らないけれど、僕たちの世界では魔物と呼ばれる人間種に害をなす生物が存在している。君達の世界には居ないんだって?」


「魔物……?」

 魔物ってゲームとかに出てくるやつの事だろうか? 戦って倒してレベルを上げるような。


「その様子からすると、やっぱり君の世界に魔物はいないようだね。端的に言えば魔物は僕たちを襲って畑を荒らしたり、自らの食料としたり、魔物の苗床にされたり……まぁ敵だと思ってくれて構わない」


「そんなのが生息しているんですか……?」

 喜介さんは笑みを消し神妙な顔でコクリと頷く。


「奴らは人間よりも弱い者から、人間なんかとは比べ物に比べられないほど力がある者もいる。だけど人はそれにやられっぱなしにしなかった。対抗するために魔法と言う力を発明したんだよ」


「魔法……ですか?」

 最近聞いたことのある単語だ。それもこの世界ではなく日本で。じゃぁあの黒い球体と狼は魔物だったのか?


「ああ、魔法は君の世界にも有るんじゃないかな? 君は目にしたんだよね、人払いの魔法とやらを」

「……はい。魔法は多分あります。それと、もしかしてですが俺が出会った黒い狼や球体が……」

「いや、それは魔物に近いのだけど魔物とは少し違うね。人間に害をなす生物というくくりの魔物に含まれるが、一般的な魔物ではない」


「どういうことですか?」

「それらはケイオスの軍勢だ。この世界を崩壊に導こうとした悪意の塊」

 彼が何を言いたいのかが良く分からない。


「つまりっ!」

 ナズナは手を前に突き出し、人差し指、中指、薬指を立てて3を作る。


「この世界は3つの勢力があるのよ。私たち人間やエルフや獣人の勢力。魔王と呼ばれる人物が生み出した魔物と呼ばれる勢力。そして君が見た漆黒の球体や狼なんかが含まれる私たちがケイオスと呼ぶ勢力。音吉おときちが会ったのはこのケイオスと呼ばれる勢力ね」


 彼女は俺を苗字ではなく名前を、それも呼び捨てで呼んだ。まぁ別に俺も彼女を呼び捨てにしているから今さらなのだけど。

「ケイオス……」


「そのケイオスはね魔物と人でも敵わない圧倒的な力を持っていたらしいのよ。彼らは本当は別の世界に居た筈なんだけど、何らかの魔法でこの世界『ヴォーア』にパスをつなげたわ」


「僕達のご先祖様たちは死ぬ気で戦ったらしいよ? 敵の敵は味方。魔王とも手を組み出来ることはすべて尽くした。それでも追い払うことができなかったんだ」


「そしてだんだんと追い詰められ、うつ手が無くなった私たちの先祖は最後の賭けに出た」

「最後の賭けですか?」

「ああ、異世界からの勇者召喚だ」


 びくりと体が震える。異世界からの召喚? 俺みたいに穴に落ちたとかではなくて? わざわざ召喚?

「勇者たちは初めは弱かったそうだが、訓練をするうちにぐんと力を付け、ある程度追い払うことまでは成功した」


 追い払うことには成功したと言っているが、今この世界には3つの勢力があるとも言っていた。ならばまだケイオスは存在するのだろう。


「だけどね、ただ追い払えただけだった。私たちはまたいつ来るかわからない、いつ来てもおかしくないケイオスの軍団に体を震わせる事しかできなかった。そんな時勇者が提案したんだ。『地球』と『ヴォーア』のパスをつなげ、『ケイオス』の軍団達が使っているパスを壊してしまおうと」


「えっ? そんなこと、出来るんですか」


「出来たんだ。それにすぐに実行されて現にそうなったんだから。まぁ結果的に見ればある程度上手くいった。『ケイオス』とのパスはとても小さくなり、大群が押し寄せてくるようなことは無くなった。良く言えばなんとか勇者に頼らず『ケイオス』軍を倒せるくらいまでになった。だけど悪く言えば完全にケイオスとのパスを断ち切ることは出来なかった。また悪いことはそれだけじゃない」


 それだけじゃない? ケイオスは完全に滅することができなかったというのに他に何が起きたのだ?


「それはね、君が落ちてきた『穴』だよ。この世界と君の世界にパスが通ってしまったせいで『穴』が出来てしまったんだ。それはどう言う原理かは知らないけれど、不規則の場所に不定期で現れる」


 俺が、落ちたと言う『穴』。会話から予測するに『穴』自体が世界と世界を行き来できる、転位装置のような役割を果たしているのだろう。


「じゃぁ俺はそれに落ちたんですか?」

「そう、その『穴』に落ちたんだ……とはいっても『穴』はすぐに塞ぐことが出来るんだけどね」

「塞ぐ?」


「そうさ、大きな魔力をあてて無理矢理その繋がったパスを飛ばしてしまうのさ。とはいっても大本のぶっといパスが残っている所為で、時間がたてば別の場所に『穴』があいてしまうんだけどね。まぁ説明はこのへんで止めておこう。とりあえず君は穴に落ちてこの世界に転移した。此処まで良いね?」


「はい」

 とりあえず此処が『ヴォーア』と呼ばれる居世界で、俺がそこに来てしまったことは分かった。確かに此処にはエアコンもないし、蛍光灯もないし。そもそも言葉が通じなかった。


「さて、本題に入ろう。君は元の世界に帰りたいかい?」

 その答えは『はい』である。しかし、

「もちろんです。って帰れるんですか?」


 俺の問いに喜介さんは神妙な顔で頷く。

「2つ方法があるけれど、どちらもすぐには無理だ。年は覚悟した方が良い」

「年……ですか?」


「ああ、だが聞いた話によると君の世界とこの世界では時間の流れが違うらしい。だからこちらで一年たったとしても、そちらの世界ではもっと年数がたっているかもしれないし、ほんの一日なのかもしれない。うーん、結構前に聞いた話だから時間が早いのか遅いのかは忘れた。後で調べておくよ。でも期待しないでね、資料なんてこの村にはほとんどないだろうから」


「よろしくお願いします」

「さて、帰る方法だけど、僕は二つあると言ったが、その二つを教えるよ」

「はい」

「一つは簡単。君が落ちた時と同じようにこちらで発生した『穴』に落ちる事さ。これは簡単ではあるが、いつその穴が発生するかが分からない」


(そうか、逆にこっちから穴に落ちれば地球に戻れるんだな。ただ『穴』は不定期に発生するからソレがいつになるのか分からない)


「もうひとつは……この世界の大都市に移動することだね」

「それはどういうことですか?」

「いくつか理由があるのだけど、一つは君みたいな人は稀に居るってことだね」

(俺みたいな人が稀にいる? ソレはもちろん『地球』から『ヴォーア』に落ちる人がいると言うことだろう。だからなんだというんだ……)


(ふぅ、一旦落ち着こう)

 俺は大きくため息をつくと思考を回転させる。


(落ちてしまった人がいる。落ちてしまった人は何を考える? 俺と同じなら地球にかえることを考えるだろう。ならば? この世界に落ちてしまって、帰りたい人が居るってことか。もしかして帰りたい人ように穴をあけっぱなしにしている? 可能性はある。『穴』は閉めることが出来る、と言っていた。ならば閉めなくても良いのではないか?)


「……まさか大都市では穴をわざと開けっ放しにしているとか……?」

「うむ、その通りだよ。理解が早くて助かるね」

 穴をあけっぱなしにして大丈夫なのだろうか?


「君の顔から察するに、何か心配をしているようだけれどもそのへんは大丈夫だよ。多分」

「って多分なんですか!」

「だあって僕は『穴』を管理している人間ではないしね。まぁ問題が起きたってことは聞かないから大丈夫でしょ」


 それって国が情報規制しているだけではなかろうかとも思ったけど、まあとりあえず気にしないでおこう。

「えと。その都市に行けば、管理された『穴』があるから元の世界に帰れるんですね」


「うん。そうだよ。だけどねその都市に行くにあたって難点が幾つかある」

「難点?」

「その都市までは此処から結構遠いんだ。日数で言えば馬で1か月ってところかな」


 馬って……。まぁこの世界に車が無いのだったら、それは仕方がないのかもしれないが。

「はぁ、でもさっき一年かかると言ってませんでした? なのに1か月で『穴』のある街まで行けるんですよね?」


「そうだね。その理由を説明しよう。実を言うとね、その道中には危険な魔物が多数出現するんだ。はっきり言えば今の君は数秒で食われておしまいだろう」


「魔物ですか……?」

「うん。君は想像しづらいかもしれないけれどね、君みたいな一般人が魔物と出会って勝てる確率はほぼないよ。ましてやケイオスの軍勢にでも会ったら即死だろうね」


「……どうにかしていく方法はないんでしょうか?」

「そりゃもちろん方法はあるよ、それも簡単さ。傭兵や冒険者を雇えばいいんだよ」


 なるほど、自分が戦えなくても他の人に任せればいいと言う事か。

「ならっ!」

「ならば? ならばどうするって? 君はお金を持っているかい? 全く戦えない自分を守ってもらうために必要な実力を持った人を雇うほどの。それも1カ月以上かかるの道のりの水は? 食料は? 馬は? 歩きとは言わないよね。用意するだけの金、それに値するだけ価値のあるものを持っているのかい?」


 思わず言葉に詰まる。

(今自分は何か持っているか? 金……いやここは日本じゃないぞ? じゃぁ金になりそうな何かを……)

 ポケットを探る。財布は入っているけれど中のお金なんて飾り以外の何物でもない。反対のポケットは?


「あっ!」

(スマホだ、スマホが入っている。これをどうにかして売れ――)

 そして取り出したスマホを見て、俺は思わず倒れそうになるのを何とか堪えた。俺は頭に金槌を当てられるような衝撃を受けた、それはもちろん比喩ではあるが、その金槌を実際にスマホは受けていた。


 その白くて無機質なスマホの画面はまるでクモの巣を細かくしたようなヒビが入っていた。俺が落ちた時に画面へ大きな圧力がかかったのだろう。もう、使い物にならない。

「どうやら無いようだね」

「……はい」


 じゃぁどうやって移動する? 金は? ない。じゃぁ喜介さんに…………。


(いや、ちょっとまてよ? 今思ったけど、俺は喜介さんやナズナにここまで助けてもらったのに、俺自身は何も返せていない。ただお礼をいっただけだ。それなのにまだ俺は頼ろうとしているのか?)

(それって人として最低じゃないか)


 だんだん顔から血の気が引いていくのを感じる。始まった自己嫌悪を止めることはできず、自分の頭には後悔と絶望で埋め尽くされる。


(最低だ。もし俺が日本で人が倒れていたのを見つけたらどうする? 他の人が何とかするだろうと放置して帰るだろう。なのにナズナは此処に連れて来てくれた。そして見ず知らずの俺に二人は看病してくれたり、翻訳コンニャクのような不思議な球体をくれたし、今は自分の現状を教えてくれる。俺は帰る前にまずは二人に恩を返さないといけないのでは? ではどうやって返す? そもそもどうやって今からこの世界で過ごすんだ? 家は無い。親族もここにはいない。金もない。何も……ないじゃないか)


「ちょ、ちょっとあんた大丈夫? 顔真っ青だよ、ちょっと休んだ方いいって!」


(休んでどうにかなる問題じゃない。最悪だ。現在進行形で相手に心配までかけている。どうすればいいのだろう。俺はどうしたらいいのだろう? 此処で死ぬ? いやだ。それに助けてもらったナズナに申し訳ない。ならばどうやって生きる? 働ける場所はあるか? 分からない。でも働くしかない。働けばお金がもらえる。働いてそして彼らに恩を返して、そうして都市に移動する。それしかない)


 俺は胡坐から正座に変えて勢いよく頭を下げる。

「誠に恐縮ですが、私にも出来る仕事を紹介して頂けないでしょうか。それと数日……いや、一日でも良いので此処にすませてもらっても良いですか?」


「ちょっと、ちょっと! 頭を上げてって! それに師匠なら大丈夫だって、ね、いいでしょ? 師匠!」

「顔を上げてくれるかい?」

 俺はゆっくり顔を上げ、喜介さんを見つめる。彼は何を考えているのか分からなかったけど、キセルを手に持ったまま、俺を見つめた。


「うん、君なら構わないよ。しっかりと現実が見えているようだし……。とりあえず、仕事は考えなくていい」

「でもっ……!」

「大丈夫、大丈夫。食料は一人増えても困らないぐらいあるし」


 いや、俺が言いたいのはそう言う事ではない。


「そうではなくてお世話になりっぱなしって言うのは、何かできることが有ればしますので」

「ああーそっか、そっか。じゃあ……ええと……うん、そうだね。しばらくしたら何か見つくろう……いや、君は。ふふ、どうしようか?」

(いえ、あの俺に聞かれても困るのですが)


 と、俺がなんて言おうか迷っていると、不意にナズナが手を叩く。そしてニコニコしながら口を開いた。


「師匠、私思いつきましたよ、思いつきました! 音吉を鍛えましょう。落ちてくる異世界人は魔法適性が高い場合が多いっていうじゃないですか! そうすれば狩りとかも出来るんじゃないですか? それに帝都まで行くための力もつけることが出来る。うっわ、あたしあったまいいー!」


「うーん僕もそれ考えたんだけどね。危険じゃないかな?」

「大丈夫ですよ、狩りの時は私や梅次郎が付いていけばいいんですよ!」


「うん。どちらにしろある程度の魔法は身につけてもらわないと生活も厳しいし、訓練はした方がいいね。そうなると魔法の基本を教えねばならないか」

 魔法と言う言葉に俺の体がピクリと反応する。使える物なら使ってみたい。


「あの、お願いしてもよろしいですか?」


 俺は喜介さんを見つめながらそういう。だけど。

「ふっふーん。仕方ないわね! あたしがそこらへん手取り足とり指導してやるわよ!」


 俺のお願いに返事をしたのはナズナだった。スズメの涙程度しかない胸を張って、素敵な笑顔を浮かべる彼女はなぜか自信に満ちあふれている。


(あれ、俺は喜介さんに言った筈なんだけど)

 ナズナに教えてもらう? ソレを頭の中で咀嚼し、その先を想像する。しかし何故だろうか、お先真っ暗な未来しか見えない。塩と砂糖を間違える位に危険そうな気がする。


「……あの出来れば喜介さんに色々ご指導してもらいたいんですけど」

 俺は自分の勘が当たっていることを信じ、喜介さんに頭を下げた。


「ってちょっとぉ! あたしじゃ不安だっていうのぉ!?」

 彼女はそう俺に言うが、そりゃ決まっている。


「不安だよ! 当り前じゃないか!」

「キィィー! あたしがせっかく教えてあげようと思ったのに! 師匠っ、しっしょおおぉ! こいつ最低です、今すぐ追い払いましょう! 塩まきましょう塩!」


 その反応が不安を呼び起こしていることを彼女は気が付かないんだろうか。

「はっはっはー音吉君は勘が良いね! 僕もナズナの指導は不安だよ」


「そうだそうだー追い払えぇーって、えええぇぇぇえ! そっちぃ!? し、師匠ぉぉ! 私そんなに信用ないんですかぁ!」


「まぁまぁ、とりあえず湊くんもナズナも落ち着いて、ていうか君たち本当に今日初めて会ったのかい? 漫才を見ているようだよ」

「初めてです!」

「初めてよっ!」


 声が重なり、二人同時ににらみ合う。こいつ人の言葉真似してんじゃねえよ。俺はナズナに指を差し大きく口を開ける。それと同時にナズナも俺に向かって指を差し大きく口を開けた。


「こんな奴自分が生まれて一度も会ったことがありません!」

「こんな奴あたしの生涯で一度も見たことが無いわよ!」


 喜介さんは俺達を見つめながら大きな声で笑った。


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