表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔眼の忍者は地球と自分の未来を憂う  作者: 入栖
魔眼の忍者は個性豊かな仲間達と出会う
5/38

05


(まぶ……しい?)

 腕で影を作り日差しを遮ると、ゆっくり目を開ける。そして体を起して辺りを見回した。

「此処は何処だよ……」


 慣れ親しんだベッドではない。自分が寝ていたのは灰色の布団で、上には薄い掛け布団がかけられていた。

 周りは踏み慣れたフローリングでもない。俺の家には一切和室なんかない筈なのに、周りには畳が敷いてある。


 そして辺りの壁は完全に木だ。壁紙は貼られていなくて木目が見える。天井には電灯が無くて、何かをひっかける為のだろう、鉄で出来たS字フックがぶらさがっていた。

 横にかけられているカーテンは雑巾のようにボロボロで、それもかなり薄い。また所々破れているせいでカーテンとしての役割をしっかり果たせていないように見える。だって窓からの日差しは俺に降り注いでいるし。


「――――――!」


 俺は声が聞こえてそちらに目を向ける。そこに居たのは橙色だいだいいろの着物を着た女性だった。十代前半だろうか。少しあどけない顔に黒い髪に黒い目。パッと見た限りでは純日本人のように見えるが、彼女の口から発せられる言葉によって、ここが日本でないことははっきり分かった。


「え?」

「っ、――! ――――――?」


 彼女は何らかの言葉を発しているようだったけど、それは日本語では無かった。また英語でもなかった。

「な、何を言ってるのか分かりません。あ、アイドンノウ」

 僕がそう言うと彼女は踵を返し、部屋から出ていく。そしてなにかを大声で叫んだ。


「――――! ――――!」

 俺はどうしていいか分からず、その場でほうける事しかできなかった。

 少しして彼女は部屋に戻ってきた。それも40代くらいの男性をつれて。彼は身長180は超えているだろう。灰色の着物を着ていて、手には水筒のようなものを持っていた。


「――――」

「――――」


 彼らは俺を見ながら何かを話しあっている。俺はどうしていいか分からず、とりあえず声をかけて見た。

「あの? こんにちわ」

 俺の言葉を聞いたのか聞いていないのか、その男性は懐から巾着を取り出す。そしてベージュ色の飴玉みたいなものを俺に差し出した。


(これを俺にどうしろと?)


 彼はその玉を持ち上げ、口を開いた。そして口に入れる寸前で手を引き、また俺に渡してくる。

(え、なんだ? 飲めってことか?)


 俺はとりあえず玉を受け取って、ソレをじっと見つめる。形はそこらへんに落ちている石ころのようにいびつで、表面がざらざらしている。

(毒じゃないよな?)


 俺は鼻まで持ち上げると匂いを嗅ぐ。だけど匂いは無い。俺は光に当てて見たけど、なんらわかることは無かった。

「――――!」


 不意に女性の声が聞こえたかと思うと、俺は手を抑えられ布団に押し倒される。そのまま彼女は俺に馬乗りし、手に持っていた玉を奪う。


(ちょ、コイツ本当に女かよ!? 本気を出しているのにびくともしない!)

 信じられないことに彼女は俺の両手を、ほっそりした左腕一本で押さえていた。それも俺が出来る限りの力を入れても不動で、まるで巨大な岩に固定されているかのようだった。


(クッソなんだこの女は!? 中学生ぐらいだよな……っておい、ちょっとまて近づいてるっ!)

 可愛い女性と密着。言葉だけでは思春期男性が羨望する状況かもしれないが、今の俺はそうではない。徐々にその玉が俺に近づいていたからだ。


 俺は近づくその玉を見て首を振るも彼女は止まることは無かった。

 彼女は右手で簡単に口をこじ開けると、玉を口に入れた。そして入れるのと同時に彼女は鼻と口を抑える。

(絶対に飲むこむものか!)


 布団の上で俺達は暴れていたが、不意に彼女は俺の押さえていた手を離すと、脇に手を伸ばす。

 そして彼女は俺の体をくすぐり始めた。

(や、止めろ、くすぐりは卑怯だ)


 ゴクリ。俺の喉から玉を飲み込む音が聞こえる。俺は舌で恐る恐る口の中を探すも、その玉はやっぱり見つからなかった。予想通り飲み込んでしまったようだ。

「くっそぉ、な、何するんだっ! くすぐりは卑怯だぞ。飲み込んじまったじゃないか!」

「あたしの言葉、分かる?」

「分かるに決まっているだ……え? 言葉が通じる!?」


 目の前の少女は見せつけるようにため息を吐き、やれやれと首を左右に振った。

「ったくどこかのだれかさんが抵抗するから。まったく、さっさと飲み込なさいよ。わざわざ飲み込ませたてあげたのに文句を言われるし……手間かけさせないで」


 俺の上に馬乗りになっている彼女に、上から目線でそんな事を言われてしまえば、少しだけムッとしてしまうのは仕方がないだろう。俺は彼女を押しのけようと体に力を入れる。しかし彼女はびくともしなかった。


「クッソ、元はと言えばお前が無理矢理飲ませようとしたのが原因だろう、そんなことされたら不審に思って当然だ!」


「不審に思うとこなんて全くないじゃない。それにこぉぉんなにも可愛らしくて美人でやさしいあたしが、飲ませてあげたのよ? 感謝されたって良いぐらいよ」


 手で彼女を押し飛ばそうと思い、力を込める。だれど、圧倒的に力は彼女に負けているようで一向に動く気配がない。

「よく言うぜ、人を抑え込んで無理矢理突っ込んだ癖に。可愛らしい? 優しい? どこが――」


「お前たち」

 俺と馬乗りになっている女性は同時に男性を見つめる。


「布団の上でいちゃいちゃするのは構わないけれど、それは私のいない所でやってくれないかな?」

 俺達は顔を見合わせる。布団の上、かわいい? 女の子、腕が絡み合う、馬乗り。

 

 俺達は同時に顔を真っ赤にし、慌てて離れた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ