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魔眼の忍者は地球と自分の未来を憂う  作者: 入栖
魔眼の忍者は個性豊かな仲間達と出会う
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 授業が全て終わり、1時間が経過する。普段だったら帰宅してゲーム機の電源を入れている所だが、今は違う。


「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」


 現在俺は生徒会役員と言うことで生徒会室にいるのだが、実のところ俺は今何もしていない。社内ニート、いや役員ニートとでもいえばいいだろうか。庶務がやるべきであろうお茶くみですら、書記の女性がやってくれた。


「あのー。私何かやることはありませんか?」


 俺はパソコンに向かって何やらうちこみをしている斎藤真副会長にそう言う。副会長は仕事中だからか仏頂面ぶっちょうづらである。すこし見方を変えれば疲れているようにも見える。


「今のところは無い……だがこれから忙しくなるだろうから、いやでも手伝ってもらうことになる」


 何も無いっていうなら帰っても良いだろうか……? しかし瑛華先輩が魔法ギルドの事もあるから基本、毎日来いと言っていたから来なければならないのだろう。


「ああ、そうだ。スマホを新調したので連絡先教えてもらえないでしょうか?」

「買った? ああ、そう言えば壊したんだったな……さて、これが私の連絡先だ」


 スマホを差しだしながら、俺にだけ聞こえる声で斎藤副会長は呟く。

(一応校長の連絡先も教えておこう)

「ありがとうございます」

(基本的に魔法ギルドの事に関しては、会長ではなく君に連絡がいく可能性が高いからそのつもりで頼む)


(え、なんでですか?)

(……まぁ色々有るんだよ)

 そう言うと彼はスマホから手を離しパソコンに向かう。俺は二人のアドレスを登録すると、スマホを先輩に返した。


 さて、どうしようか。

 書類作りに没頭している副会長。それ以外の人間は本当にほぼ接点が無い。さっき簡単に自己紹介をしたがそれだけだ。


 現在生徒会室に居るのは肩まで伸びた髪を後ろで一つにまとめている書記の一年女子に、これと言って特徴のない2年の男子議長。そして副会長。会計と生徒会長は今席をはずしている。


 はぁ。と、ため息が漏れる。

 ちらりと横目で書記ちゃんが俺を見つめる。目線が合うのは何度目だろうか。書記ちゃんが3で議長君が2だろうか。多分二人とも混乱しているだろう。休み明けの始業式でいきなり生徒会人員の追加発表なのだから。逆の立場だったら俺だって動揺して混乱するだろうし。ていうか俺自身もいきなりすぎて少し動揺しているし。


 俺がお茶をながしこんでいると、不意にがらりとノックもなくドアが開く。

 そこに現れたのは待ち望んでいたと言っても良い生徒会長だった。

「集まっているな。おお、音吉もきてたか。自己紹介はしたか?」

 先輩は俺の所に来るとぽんと肩を叩く。


「会計さんを除いてしましたよ」

「なら、いい。ちょっと力仕事を頼む。生徒会準備室でお前の会っていない奴が、今年の文化祭に使う資材を分けてるんだ。重いのを持ってやってくれ」

(確かにそう言うのは俺が適任かもな)


 魔力による肉体強化が出来る俺は、100キロぐらいなら片手で、それも簡単に持ち上げることが出来る。バーベル上げの世界記録がいくらだか知らないけれど、1トンいかないのであれば片手で記録を塗り替えることが出来るだろう。


「分かりました。ってああ、そうだ。瑛華先輩。スマホを買ったので後で登録してください」


 正確に言えば貰ったなのだけど。

「ああ、分かった。では仕事が終わったら校長室に来てくれ。私もこっちを片づけたら行くからそこで待ち合わせだ」


「はい、ってそういえば俺生徒会準備室に行ったことが無いんですけど、どこですか?」

 先輩は知らないのかとばかりに首をひねる。


「ああ、そうだったか? ええと、」

「僕もいきますよ」

 そう名乗りを上げたのは議長君だった。彼は書類を片づけると俺のそばに来る。


「そうか、ならよろしく頼む」

 瑛華先輩はそう言うと俺の肩から手を離し、書記の所へ歩いて行った。

「じゃあいこうか」


 議長君にそう促され俺達は生徒会室を出た。

「湊君はあの生徒会長と仲がいいように見えるけど、もともと知り合いだったの?」


「いえ、まともに話したのは二日前だったと記憶していますけど……」

 こちらから一方的に知っていると言うならば、この学校に入学した辺りから知っている。しかしまともに話したのは2日前が初めてだ。


「それなのに名前で呼んでるんだね?」

「え、珍しいんですか?」

「珍しいも何も、彼女を名前で呼ぶ人なんて、僕の知る限りこの学校じゃ一人もいないよ。湊君が初めて」


 なるほど。昨日副会長が驚いていたのはそのせいだったのかもしれない。

「てっきり君が会長と昔から親しかったのだと思っていたけどね?」


「そうではないですね。俺のなにかが琴線(きんせん)(れでもしたんじゃないですかね。何かは分からないですよ? あの変人だし」

「うーん、会長を変人だと確信して言える時点で仲がいいように見えるんだけど。さあ、ついた。此処だよ」


 そう言って彼が指さしたのは、一つの部屋。ここが生徒会準備室? と思ったが確かにそこには生徒会準備室と書かれているプレートがぶら下がっていた。

 その部屋の中には既に一人の女性がいた。少しだけ茶色に染めた彼女は、棚に置かれた荷物を凝視している。どこかで見たことが有るような気がするが、見たことが無いような気もする。所謂どこにでもいそうな、そんな女性だった。


「あ、新人君じゃん」

 彼女は俺を見つめるとそう言う。俺達は簡単に自己紹介をすると、彼女の見つめていた棚にそろって目を向ける。


「いやぁ会長って華奢な癖にすっごく力あるじゃん? さっきまで荷物をひょいひょい移動してくれてたんだけど、別の事もしなきゃいけないって言って生徒会室行っちゃったんだよね」


「ああ、それで彼が呼ばれたんだよ。僕は道案内。じゃぁ僕は職員室に用が有るから行くよ?」

「ありがとうございます」

 俺が例を言うと議長君は何かを思い出したように手を叩いた。


「うん、ああ、そうだ。君のアドレス教えてよ。今後何かあったら連絡入れるだろうしね」

「ああ、はい」


 と、俺がスマホを取り出すと彼も同じようにスマホを取り出す。そして瑛華先輩では考えられない速さで登録を終えると、二人揃ってスマホをしまった。

「さ、登録も済んだし、また……明日かな? 今日は校長室に行くんだよね?」


「そうですね、何をするんだか分かりませんけれどね……」

「がんばってね、じゃ」

 そう言って彼を見送ると、俺は会計さんに向き直る。


「それで俺は何をすればいいんですか?」

「うーん、とりあえずこれ持てる?」

 そう言って指さしたのは彼女が入った時に見つめていた、一つの段ボールだった。中には紙が大量に詰まっているようで、結構な重さが有りそうだ。


「はい」

 だけどそれは一般的な人間で有ればだ。俺や先輩みたいに魔力を操作できる人なら、楽々持ち上げることが出来る。


「……力持ちなんですね」

 片手で持っただけなのだが、彼女が若干引いているように見えるのは気のせいだろうか?


「瑛華先輩だってこれくらいやりそうですけど……」

「瑛華先輩?」

 彼女が目を大きく開き、俺の事を信じられないものでも見るかのように見つめてくる。そして小さな声でぼそぼそしゃべり始めた。


「うわぁ、これは③が一番近かった? いやでもそうしたら副会長が知っている理由にならないし! じゃぁ②だった? でも……」

(何の話か分からないけれど、とりあえず俺は手に有るこれをどうにかしたいのだが)


「あのー、荷物どうすればいいですかね?」

「あっご、ごめん。重かったよね、そこに置いて。その後はそれをこっちにもってって……」


 と、なんやかんや荷物を出したり、隣の教室に運んだりし、作業が終わったのは此処に来てから30分ほどしたところだった。

 

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