秘密
俺は世界でたった一人にしか許されない秘密を知ってしまった!
うわぁあああああ! ついに知ってしまった!
どうしよう俺? こんなはずじゃなかった。
ただ単に知りたいか? って聞かれたから
はい。と素直に答えたらこのザマだ。
やけに細かい決まり事を話された気もするが、程よく酔っ払って
て上の空。
簡単に受けちゃった。本当にいいんですか? と何度も確認され
たのに。
笑っちゃうよな。バカだった俺。いやいや、笑ってる場合じゃな
い。
この秘密を知ってもいいのは一人だけ。
前任者は秘密を伝え終えた途端、この件に関する総ての事を忘れ
るという。
細かい決まり事も、その時、後任者の脳裏に自然と焼きつくよう
だ。
その細かい決まり事の中には、後任者の条件、資格もびっちりと
存在する。
で、極めつけが、秘密を後任者以外の誰かに洩らしたら、その時
点で世界が滅亡するらしい。
そんなバカな。いやでも。この秘密を聞いたら、事実かもしれな
いと誰もが思うだろう。
しかし、しゃべりたい! 話したい! 一人で抱えるにはこの秘
密は大き過ぎる。
今思えば、前任者も今の俺と同じ気持ちだったのだろう。
そうだ! 俺は決心した。後任に道を譲ろうではないか!
そこで俺は飲み屋街の裏道で 酔っ払いに声をかけることにした。
しかし人選は困難を極めた。まず細かい条件、資格が第一の関門。
それから完全に酔ってる奴はダメ。ある程度自分の意思で選択が
出来る奴に限る。それに信用出来そうな奴。
何と言っても重大な秘密を握る事になるのだ。簡単に秘密を他人
に話され、世界が滅亡したら寝覚めが悪い。あ、その時には俺も当
然存在しなくなる訳だが。
そうこうしている内に早一年が過ぎた。思い起こせば、俺が今の
俺になったのはこんな寒い晩だったな。
いつものように飲み屋街の裏道でカモを待っていると、ついに見
つけた!
細かい条件、資格もオールオッケイ!
いかにも人の良さそうな、程よい酔っ払いを!
俺は彼に近づき、そして話しかけた。
「お兄さん、世界の秘密を知りたくない? 今ならこっそり教えち
ゃうよ?」
***
うおぉおおおおおお! なんというコトだ! 世界の秘密を知っ
てしまった!
どうしよう? こんなはずじゃなかった。秘密を知りたいかって
聞かれたから素直にうん、と答えた結果がこのありさま。
やけに細かい決まり事を話された気もするけど、程よく酔っ払って
て上の空…
その秘密とは…世界が消滅すると困るのでお教え出来ませんw