プロローグ
プロローグてか設定。次から短編みたいな感じで書いていく。
2058年。人口の増加による貧困が続いていた。それに伴い、自殺者も増え続けている。そして8月10日のこと。日本に新しい法律ができた。自らの自由で死を選ぶことは犯罪である。必ず政府機関に届け出ねばならない。
自殺する意思のある者は、自殺者保護センターに届け出ねばならない。そこで人を確実に脳死にさせる薬剤を投与される。そして次に薬剤を無効化させる薬を手渡される。脳死薬は2日間体内に滞在し、その後脳組織を破壊する。その2日間の間に薬を飲めば生きられる。
脳死にするには訳があった。臓器を取り出すためだ。自殺者の臓器は、生きたいと願う者のために有効に使われる。もはや人間は増えすぎた。死にたい者は勝手に死ねばいい。その代わり体を置いていけ。そういう話だ。
もちろん倫理的な問題がどうたらで、いろいろと論争を生んだ。しかし皆分かっているのだ。このまま人口が増え続ければ、間違い無く人類の大半が死ぬことになると。誰もがその中のひとりになりたくなかった。死にたいという者は歓迎するべきなのだ。
自殺志願者は、自殺者保護センターで法的に守られる。最後の2日間を快適に過ごすための空間が与えられる。自殺志願者にはこの自殺者保護センター内では、あらゆる行為を許される。そして、それは外部からは決して侵犯できない。鉄壁の要塞。自殺志願者達はそこで、2日間自らの死と向き合うことになる。
これから始まるのは、自殺志願者達の命の2日間の物語。彼らはそれでも死を選ぶのか、はたまた生きたいと願うのか。そんな、たった2日間の物語。