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ネコ。

この世界に何の意味があるのだろう?

僕は呟く。ベランダの欄干に肘をかけて。

このベランダの鳥かごの檻の上で寝そべっているのは、よく見かける野良猫のティムだ。

彼、いや、彼女。性別は分からないが、小動物の動きを敏感に察知する瞳は、僕らの家族が暮らすマンションのはるか上、晴れた空の隅を見据えていた。


「やあ、ティム。おまえは何を見ているんだよ。」


僕は高校の授業をサボって観ていたドラマの台詞みたいな口調で話しかける。


尾をふり、耳を立て、一瞬、二つの黄ばんだ目が、僕を見て流す。

飛び降りる。身の毛を逆立て、僕の制服のズボンにまとわりつく。

そして、離れる。勝手知ったると言いたげに、網戸と戸口のすきまからリビングに入っていく。


僕は鳥カゴを見る。


檻のなかでは、数年、飼いならされたセキセイインコのつがいが、声も出さずに肩を寄せ合っている。


「そうか。おまえも飽きたんだな、ティム。」


僕は呟く。眼下に広がる街並み。その一画で、私立高校の看板を掲げ、次代の人の子の育成に励んでいるはずの建物の敷地がやたらと小さく、かすんでさえ見える。


「競い合わなくても、生きていく方法なんて、いくらでもあるはずなのにな。」


リビングの奥で、鳴き声がする。

僕は室内に戻り、ティムと名づけた野良猫に、今日も昼飯の残りを分け与えた。

       

         ・


(Thanks.)

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