表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

【32 まずは動画のコメント・チェック】

・【32 まずは動画のコメント・チェック】


 ナノはまたスマホに映像を転送させている。

「それ、ナイトルーティンのヤツか?」

「そうなの。一応撮ったし、アップロードしとくの。こういうのは毎日更新が基本だから撮ったヤツはアップするのがいいの」

「そういうもんなのか……」

 あのナイトルーティンをアップロードするということが確定したので、やっぱりちょっと怖くなった。

 まあそれを言い出したら食リポもASMRも酷いけども。

 いやこれからだ、これから地元密着型の北嘉村ロケ・ユーチューバーとしてやっていくんだ。

 さて、ナノがスマホを転送したり、アップロードしている時は比較的暇になる。

 四年間、離れていたとはいえ地元のことは良く分かっているつもりなので、そっちを調べるよりも、まず動画についたコメントを調べるか。

 どういうモノが好まれているか、分かるかもしれないから。

 ……ロリっこのナノちゃんが可愛い、っていうのが多いなぁ……あっ、そのコメントへの返信とかもあるんだ。

 ユーザー同士何か掛け合っているのか、返信が多いコメントがある、見てみよう。

 ……えっ?

「ロリとかいない?」

 俺はつい声が出てしまった。

 バッとナノのほうを見ると、何だか誇らし気な表情をしたナノがいて、

「ナノはヤオのお姉さんなのですっ!」

 と叫んだ。

 いや

「何か、そういうことじゃなくてさ。コメントにロリがいないって書かれているんだけども」

「ナノはヤオのお姉さんだから当然なの!」

「多分そういう意味合いじゃなくて、まるでナノがいないように書かれているんだけども……」

「なじょなー! そういう悪質なノリのヤツを読み上げないでよー! ナノの自尊心がパックリしちゃうの!」

 悪質なノリ、まあイジリみたいなもんか。

 というか昨日もそんな会話したなぁ。

 でも何か、ただのノリの割に議論が白熱しているような。

 何かもう水掛け論の様子を呈しているような。

 まあ好きなロリが変なイジリされていれば、白熱するか。

 ファンとアンチのせめぎ合いというヤツなのかもしれない。

「なのっ! アップロードできたの! さて次は何するのー!」

「北嘉村のラーメン屋制覇とかいいんじゃないか?」

「なのーっ! 長期企画なのーっ!」

「まあ50店舗以上あるからな」

 ナノは明らかにワクワクしているような感じだ。

 そのテンションを維持した状態で、早速ラーメン屋に行こうとしたその時だった。

 ナノのスマホが鳴った。四季さんからだった。

 電話に出て、四季さんと会話したナノはこう言った。

「四季がナノの写真撮ってくれるの! 宣伝してくれるんだって!」

 写真か、まあ四季さんのSNSは写真目当ての人たちがいっぱいフォローしているわけだから、効果は多少あるかもしれないな。

 とか考えても意味は無いか、四季さんの発案を基本的に無視できないし。

 というわけで、俺とナノは家から出て、四季さんのいる神社の社屋に行った。

 そこに行くと、バッチリ巫女の恰好をした四季さんが、小さめの巫女の衣装を持っていて、こう言った。

「じゃあナノ、巫女の衣装に着替えるんだ」

「なじょなー! 巫女さんなのっ! 憧れの巫女さんなのっ!」

 そう言ってピョンピョン飛び跳ねて喜ぶナノ。本当に小さな子供みたいだ。

 四季さんは満足そうに頷きながら、

「ユーチューバーをやるナノのために、良いサイズの巫女の服を探した甲斐があった。早く着替えてくるんだ」

 そう言ってナノに巫女の衣装を手渡すと、ナノは嬉しそうに受け取って、そのまま社屋の中へ入っていった。

 そしてすぐさま着替えたナノがでてきて、かなり自慢げな表情をしながら、

「ヤオもビックリしてるの!」

「いや全然してないよ」

「照れなくてもいいのー! ヤオの照れ屋さんオープンしていいのー!」

「オープンしていいのなら照れていいんじゃん、いや照れてもいないけども」

 ナノは頬を膨らませているが、だって俺全然照れてないし。

 まあいいや、早く写真でも撮るか、と思ってスマホを構えるとナノが、

「ヤオ、女の子を撮ることに慣れているの……そういう怪しい趣味も持っていたの……」

 と言って震えだした。

 いやいや

「無いよ、普通に構えただけだから」

「お金払って女の子の写真撮るクラブに出入りしていたの……」

「していないって、ハッキリ言ってめちゃくちゃ慣れていないからな」

「それはそれで寂しい人生だったの」

 さっきまでの震えは嘘のように、そうあっけらかんと言い切ったナノ。

 いや!

「過去形で言うな! 故人を偲ぶように言うな! これからだから! 俺の人生これからだからな!」

 そしてナノの写真を撮り出した俺。

 でも何かあれだな、うん、思った以上に全然そそらないな。

 やっぱり子供過ぎるんだよな、早くナノを元の大きさに戻したいな。

 そのためには頑張らないと。

 写真撮影会はつつがなく終了し、早速写真をアップロードすることに。

 四季さんがどんどんアップロードしていく。

 でもよく考えたら、四季さんのスタイルとナノのスタイルは全然違うので、ナノの写真を四季さんのSNSにアップロードしても意味あるのかな、と思った。

 四季さんの抜群のスタイルを見たい人が集まっているSNSだから、ナノのようなちびっ子を見たいわけじゃないだろうし。

 でもそれは杞憂だった。

 ナノの写真にもすぐに反応があり、コメントもどんどんついていく。

 早速三人でチェックすると『ロリw 最高w』みたいな書き込みが多い。

 まあそれ以外、言うことも無いだろうしな、と思っていると、またしてもあのアンチが沸いてきた。

「何そのボケw、とか、風景画だろ、とか……」

「なじょなー! いちいち読み上げなくてもいいのー! 粒立てなくていいのー!」

 いやでも、と言い出したのは俺じゃなくて四季さんだった。

「僕の、SNSにも、そういう連中が、噴き出る、なんてな、汚い射精、しすぎだろ」

「その言い方のほうが汚いですよ、汚くない射精なんて無いですし」

「いや、愛と、愛の、重なり合いの、射精は、美しすぎる、だろ」

「まあそうかもしれないですけども、こういう平場で言う射精は汚い射精でしょ」

 と会話しているとナノが両耳を手で押さえながら、

「ヤオのそういう会話は禁止なのー!」

「ゴメン、ゴメン、四季さんの嫌なペースに飲み込まれないようにするから」

 そう言いながらナノの手を握って、手を下げさせた。

「なの! じゃあもう大丈夫なの!」

「でも、大丈夫、じゃない」

 四季さんは少し深刻そうにそう言った。

 さらに四季さんは続ける。

「僕の、フォロワーの、民度が、低いなんて、ちょっと、ショックだ……」

 いやでも女子のエロい自撮りを見たいフォロワーなんて元々そんな民度高くないだろと思いながらも、四季さんは落ち込んでいるようだったので、言わないことにした。

 うんうん唸っている四季さんは最後にこう言った。

「ナノが、子供、だから、みんな、舐めている、のかな?」

 いやでも子供を舐めるフォロワーというのも嫌だなって、思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ