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92、旅のとも2

あたしとエイルと幼女で旅!

なんということでしょう。もう色々とありえませんよ。

あたしはエイルのむっつりエロ幼女趣味の変態に対して激しい怒りを覚えるより先に、今後のことで頭を悩ませた。というかもう何もかもおまえのせいだ!


あたしは物凄く悩んだ。悩んで悩んで、悩みぬいた挙句―― 素晴らしい、かどうかはちょっとあやしいんだけれど、一つの回答を導きだした。


「ロイズ!」


チビ魔女ブラン姿で町中をうろつくのはとってもイヤだったけれど、巡視中のロイズをあたしはやっとこ捕まえた。

 あれから三日日――魔女狩大陸へは一応船の定期便が出ているということで、二日後には船で旅立たなければいけない。そんなギリギリでロイズを捕まえることがかない、あたしは物凄くほっとした。


「ブランマージュ」

塀の上から声を掛ければ、ロイズは驚いた様子で瞳を瞬いたが、すぐにふっと目元を和ませた。

「どうした? 元気にしてるか?」

「元気よ。それより」

「ああ、そうだ――あの首輪、ありがとうな。ちゃんとうちの猫に」

ロイズはそういいながらふと言葉を切った。


じっとあたしを見つめ、みるみるうちに動揺したように視線を揺らし、自分の口元を軽く手で押さえた。

「なに?」

なんだ、その反応?

「……いや、おまえ――うちの猫と同じ首輪、っていうかえっと……ネックレス、っていうのかソレ?」


しどろもどろに言われる言葉に、あたしはハっと息を飲み込んだ。

迂闊!

しっかりと忘れていた。

あたしの首には赤い首輪。

白猫ブランマージュと同じ首輪が当然のように掛かっている。ロイズを捕まえることばかり考えていたものだから、四六時中首にあるコレを完全に失念してしまっていた。


ヤバイ!


あたしは慌てて自分の首に手を掛けて、わたわたとしながら、

「これはチョーカーって言うの。首輪じゃないわよ」

「あ、そうか」

「猫とおそろいなの。可愛いでしょう!」

強気で畳み掛ける。

異論は認めません。これは猫とおそろいのチョーカーであって同一の品物ではございませんっ。猫のアレは首輪でコレはネックレスの一種です。まったくの別物!


そんな慌てるあたしとは違い、少し落ち着いた様子のロイズは瞳を細めた。

「ああ、良く似合ってる」

よし!

なんとか誤魔化せた。よしよしよーしっ!

もうこれの話題に触れるでないっ。


「それよりっ! ねぇ、ロイズ。あんたに頼みがあるのよ」

「え、ああ……なんだ?」

「あんたってお休み取れる? ちょっと長いんだけど、半月くらい」

今回の任務は移動時間も結構かかる。だから前回みたいに五日という訳にはいかないのだ。だから自分でも結構無理を言っているのは判っていた。


「一緒にシャリテの大陸に行って欲しいの」

「――」

ロイズはしばらく目を見張るようにしてあたしを見ていた。

凝視されているのは居心地が悪い。自分でも無茶を言っているのだから尚更だ。

あたしはどんどん不安になり、耳がぺたりと下がるのを感じた。

だってロイズは第二警備隊の隊長なのだ。休みたい、はいそうですかって休めるかと言われればやっぱり難しいと思う。普段から休暇はあまりないのに。


「やっぱり無理?」

あのね、二日後なんだけど……

あたしは吐息と共に尋ねた。

「いや……前回の出張もあって長い休みも勧められている」


「じゃあ平気?」

「……急だが、なんとかなる」

 ロイズはどこか上の空のような声で応えたが、あたしはぱっと耳が立ち上がるのを感じた。

「じゃあ一緒に行ける?」

「ああ」

どこかぼんやりと返事をしたロイズだが、すぐに目元を和ませた。

「嬉しそうだな?」

「そりゃあね」

「……そうか。それは良かった」

「良かった! 本当に急で悪いんだけど、明後日の昼頃に港で待ってるから」

「ああ」

あんたって本当にいいヤツよね。

絶対に無理だと思ったのに。

逡巡したけれど、言ってみるものよね? 

「荷物はそんなに多くなくていいわよ? 必要ならあたしがいくらでもあんたの家から転移してあげるんだから」

人間の転移は無理だけれど、荷物の転移くらいなら多少距離があっても平気だと思う。

あたしは簡単に説明し、ぱっと塀の上で立ち上がった。


「じゃあ、明後日ね!」

とんっと塀を蹴って浮かび上がる。それをロイズは「ああ。楽しみにしてる」と笑顔で見送ってくれた。


***


「どうかした?」

翌々日、港で再会を果たしたロイズはしばらく無表情だった。

いつもの隊服ではなく、ロイズは普段着。でも普段は腰に吊るされた銃を、今は上着の脇の下辺りに隠していることをあたしは知っている。

エイルにしても今日はいつもの魔道師の外套では無い。あくまでも旅行者を装っているのだ。


ロイズはあたしの問いかけに瞳を眇めた。

なんというか、ちょっと眉間の皺が深いですよー。

「……いいや?」

低く返された言葉に、あたしはてへへっと微笑み返した。

いや、うん原因は判りますよ。エイルでしょ? あんた達なんか微妙に不仲だもんね?

エイルも一緒だといったら来たがらないかな、と思ったから故意に言わなかったんだけどね?


港で顔を合わせた二人の顔ときたら、なんか言葉にならない感じ。

二人して眉間に皺を刻み、ついでその二人の視線があたしへとざっと向けられた。

私は元気に「はい、これでメンバーは揃ったね!」と言ったのだが、どうにも居心地は悪かった。


今更行かないとか言わないでよね!


むっつりとしているエイル同様、なんだかロイズまで気分が下降しているっぽいけど今更逃がしませんよ!


今回のメンバーはあたし、エイル、ロイズ、それでもって静かにたたずんでいる白いドレスの美少女ティラハール。

黒緑の髪のティラハールを馬面が連れてきた時は眩暈がした。

だってやっぱりティラハールは人形のように可愛らしくたたずんでいたし、エイルは思案するようにそれを眇めて見ていた。ううう、なんというかオソロシイ。

見るでない、この変態め。


二十歳過ぎている男二人と十歳の猫耳猫尻尾のあたし、今回はしっかりと帽子が手放せません。そしてやっぱりあたしと同年齢くらいのティラハールってもうどんなメンツだよ! と突っ込みどころ満載です。

ああ、今回は蝙蝠も一緒。


 案の定ティラハールは無表情で一言も喋ろうとしませんが、とりあえず新しい任務出発!

……仲良くしろよおまえたち。


あ、エイルはティラハールと仲良くしちゃ駄目だ!

危険人物は幼女に触れてはいけません。

――なんであたしがこんな気苦労背負い込まないといけないんだ誰か説明してくれ。


もう本当に頭痛いです。

でもロイズも巻き込んでやったから少しは負担が減るだろう。

あたしの!


まぁとにかく。さぁ出発!!

って、皆ちょっとノリが悪いわよっ。

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