表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/122

7、勘弁して

 もう嫁にいけないんじゃないかという屈辱に身を震わせたあたしは、寝るというよりむしろ気を失う勢いでその日を終えた。


――ありえないありえない。


他人様の面前で排泄をさせられたことも屈辱ならば、それを促されたなんて!

どんなプレイだよっ!


なんだってあたしは猫になってしまったのか?

そもそもどうしてロイズが飼おうとかしているのさ?

これがまたまったく別の人間ならばもう少し心が軽いだろう。


 ロイズ!

それはあたしの天敵の名前だ。

いや、もう一人、もっと厄介な男がいるのだけれど。ロイズだって問題だ。魔術など使えない癖にあたしを追い詰める警備隊隊長。

――あの気迫というか、威圧というか……

いや、からかうと面白いとは思うのだけれど、ちょっと冗談が通じない時をなんとかして欲しい。


あたしは嘆息を落とし、更に身を丸めた。

それに……あの腐れ魔導師め。


あたしは顔をあげて窓の外を眺めた。

ちょっとからかっただけじゃないか。何故あんなにも短気なんだろうか。もう少し人生を楽しめ。腹がたったからといって魔女を殺そうとするなんて、呪われてしまうぞ。

「ブランマージュ」

長椅子で寝ていたあたしの襟首がひょいっと持ち上げられる。

「ふしゃーっ」

ってか、その名前は辞めなさいよ!

というあたしの怒りなど知らぬ気に、ロイズはあたしの首に赤いリボンを巻きつけた。

淡々とした様子で無表情に。


「朝飯」

そのまま床に置かれた皿を示される。


……ミルクだ。

ミルクの中にお米が入れられている。


「若様、もうお時間ですから」

着替えの手伝いに訪れていた侍女が微笑ましいというように顔をゆがめてあたしとロイズとを眺め、

「食事が終わったら排泄させてやってくれ」

「はい、かしこまりました」

……絶対逃げ出してやる。


 あたしはその為にも体力をつけねばと――渋々そのミルク粥を食べ始めた。

ちゃんと鳥でダシが取られていて美味いのがまたシャクに触る。屋敷の主が出かけると、侍女が興味深い様子でしげしげとあたしを覗き込む。


「ちっちゃくってふわふわー」

ふふふと笑いながら頭を撫でる。


 くぅっ。

 今に見てなさいよっ!

がうがうとあたしはミルク粥を食べて、汚れた口元を前足で丁寧にぬぐう。

侍女はひょいっとあたしの体を持ち上げるとひっくり返し、ぽこんとふくれた腹をつんつんと突いた。

「はい、お腹一杯ですねぇ。

美味しかったでしゅかー?」

でしゅかーって、あんたあたしを馬鹿にしてる?


「食べたらちゃんと出しましょうね!」

って、だからソレは辞めて!!!

自分でできるから!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ