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76、始原の森探検21

シンっと静寂が立ち戻る。

あたしはあきれ果ててロイズを睨んだ。

「あんたねぇ、なんとかなったからいいけど、魔獣の上に乗っかるとかもぅいろいろ無茶しすぎ!」

一発目の弾丸を落とされたのだ。ニ発目だって利かなかったかもしれない。

それを思えばなんという行き当たりばったり! なんという恐ろしさ。

魔獣の背中に乗っかるなんて正気の沙汰ではない。


「背中が弱点だと言っていたからな」

イケルとは思ったんだ。と不貞腐れるようにロイズが言う。

「……そうだっけ?」

「おまえ、覚えてないのか?」

ロイズが苦笑するのを打ち消すように、背後から気配が近づいて声を掛ける。

「ブランマージュ」


当然その気配にも気づいていたし、誰だかも気づいていた。

もう一体の火蜥蜴を捕らえたのはエイルの魔道だったのだから。

あたしは嘆息しながら振り返り、エイルにも一言物申してやろうと睨もうとした。


浜辺で待っていろと言ったのに!

意味も無く留守番しろと言った覚えは無い。

おまえは自分の体をどう思っているのだ馬鹿者め。

説教だ、説教!

そんなあたしの憤りはヤツには届かなかった。


やつはあたしの前まで来るとひょいっと荷物のようにあたしを持ち上げ、無言で唇を合わせたのである。


――っっっ!!!

なんじゃこりゃっ。

その思いを押し流すように合わせた唇から清涼なる魔力が流し込まれる。

枯渇しようとしていた水分が一気に体全体を充たすような心地よい感覚。

染み渡る喜びにあたしは肩の力を抜いた。


「何をしているんだ!」

ロイズの怒鳴り声が耳に入り込む。

そろそろ魔力の流れもか細くなるから、あたしはぐっとエイルの胸を押したのだが、エイルは離れない。

更に力を込め、口付けを深めてくるエイルにあたしは焦った。

まてまてまて、もう平気だから。大丈夫だから。

流してるほうには判らないのか?

「エイル!」

ロイズがどなる。

「おまえ、何をっ」

そこでやっと唇が離れるから、あたしは息をついてロイズに応えた。


「魔力の補給」

「魔力の提供」


……はもりましたよ、また。

まぁ、馬面とじゃないからまだいいけどね。

なんというかデ・ジャ・ビュ――どっかであったよこんなシーン。


「またか!」

苛立つようにロイズが言う。

そう、おそらく同じデ・ジャ・ピュをロイズは感じている筈だ。

「そもそもなんでエイル? おまえでも魔力の受け渡しができるのか?」

眉間に皺をくっきりと刻み込み、エイルへと鋭い視線を向けている男に、あたしは怒りっぽいやつだなぁと思いながら、ふと気づいてしまった。


うわっ、これってもしかして!


いまだあたしを抱っこしているエイルの腕から落ちるように逃れ、わたわたとロイズの元へと行き、その腕を引っ張る。

「ちょっ、あんたっ」

「なんだ?」

あたしはぐいぐいとロイズを引き、身を屈めるようにと示して声を潜めた。

「あんまり突っ込んじゃ駄目よ」

まったくあんたってばデリカシーとかそういったものが欠如しているのではありませんか?

良く考えれば判ることじゃないの!



「きっと今のエイルはすごーく不機嫌なのよ」

苛立ってる雰囲気駄々漏れでしたしね。

「意味がわからん」

「もう、莫迦ね!

あいつから渡された魔力はレイリッシュの魔力なのよ。魔女の魔力! そんなものを普通魔道師が持てるわけないでしょ!」

「……」

「可哀想に、あいつってば馬面に――」

 小さな声でロイズがうっ、と呻く。


今頃気づいたのか、馬鹿め。

きっとエイルってばあの馬面に押さえ込まれて無理矢理魔力を流し込まれたに違いない。

ああ、なんて不憫な!

あたしであればもうある程度は仕方ないと思えるが、あの馬面の鬼畜さといったら酷すぎる。自分で魔力を届けるのが面倒だったのか、よりにもよってエイルを使ったのだろう。


鬼だ……聖なる獣などと偽りに違いない。


「不憫……」

ロイズの小さな囁き。

でしょう?

可哀想なんだからあんまりそう突っ込んで聞いては……



「おまえ達、いったい何の話をしている!」

地の底からとどろくような言葉に、あたしとロイズは顔を見合わせて、ははははっと微妙な笑いを交し合った。

「いっぺん死んでみるかっ」


あらやだ、しっかり聞こえてた?

でもそんなに怒ることないじゃないの。

――ま、怒るなら馬面にしといてよね。

大丈夫よ、ダーリン。

男、というかオスと口付けしたことなんてちゃっちゃと忘れておしまいなさい。それこそ犬に噛まれたようなもんよ?


馬だけどね。


*私はノーマル派です。今回の表現はブランマージュの妄想であり、この作品にそのようなものは一切存在しません! ただの妄想!

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