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49、悪夢

――最近気づいたこと。


随分と眠い。

やっぱり猫だからかしらね。

凄く眠いし、疲れる気がする。


大魔女から押し付けられた仕事をこなして、エイルの部屋で食事を済ませる。その頃にはもうすごく眠くて、あたしは寝椅子でぽてりと寝入ることが多くなった。

――これって、アレかしらね。

体が負担を感じているのかしら。


ど こか遠くそんなことを感じながらうつらうつらと瞼を閉じる。

そうするとね、ばさりと外套が掛けられるのよ。

――エイルが、そうしてくれるの。


それって微妙。

転寝をすると、あたしはいやな夢を見てしまう。

ロイズの寝台で一緒に寝ている時は悪夢は見ないけれど、一人で寝てしまうと時々悪夢におわれる。

――内容はイロイロ。

エイルに殺される夢とか、見知らぬ誰かに囚われてゆっくりと切り刻まれていたりとか。

自分の体が燃やされていく夢とかね。


もうどうしょうもない感じの夢。

そういう夢を見てさ、目覚めるとエイルの外套に包まれている訳。

もしやコレが原因でないのか?

――エイルの匂い。

 平気なつもりでも、やっぱりどこかでエイルに怯えている気がする。

そりゃ、半殺しの憂き目をみた訳だから、そういう相手と仲良しこよしなんて普通無理だしね。


 仕方ないよ。

それはもう本能の問題だから。

それで片付けたいのに。

「……」

あたしはあたしに手を握られて寝椅子の下で座ったまま寝ている男の姿に困惑する。


――むしょうに体の内部がこそばゆいような感覚。

これってつまり、あたしがこいつの手を握ったのよね。

それで、ご親切にも振りほどくこともなくこいつってば寝椅子の下なんかで寝てしまったわけで。


口元がなんというかぐにぐにと歪む。

どういう顔をしていいのか判らない。

――ああ、いやだなぁ。


あたしはエイルの寝顔なんていう珍しいものを眺めながら眉を潜めた。

キライになれたらいいのに。

キライになって憎めたら良かったのに。


そしたら、あたしが猫と融合しちゃった後のあんたの心配なんてしなくてすむのにね。

以前なら考えもしなかったけど、あたしが完全に猫になってしまった時、もしかしてあんたの心のどっかが傷つくような、そんな気がするんだよ。

――気のせいかな。


できれば、傷つかないといいなぁ。

なんて、キライになれたら思わなくてもいいのにね。

あたしは眉を潜めながらぽてりと寝椅子にまた横になる。


手を――離せばいいのにね、あたしもさ。


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