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38、猫VS熊

「臭い……」

 ロイズは片手でがしりと持ち上げた猫の足の裏をかいだ。

「おまえ、どこの隙間に入り込んでるんだ?」


……今日はねぇ、エリッセンの町で下水処理です。

なんで水ばっかだと思う? レイリッシュの趣味?

あの大魔女ってば絶対に自分がイヤなしごとこっちに回してるよね?


つうか、それは魔女の仕事なの?

レイリッシュが今までやってたのか?


絶対やってないだろ?

どうせあの高慢ちきで女王様な魔女は「ほーほほほっ」とか笑いながら魔導師とかをこき使ってるのよ。


そもそもあの魔女だって使い魔がいるでしょ。

あたしの蝙蝠みたいにつっかえないヤツじゃなくて。

「おまえ、毛に何かひっついてるぞ?」


まいど恒例の御風呂もなれたわよ。

もう乙女の恥じらいなんて無いわね!


あたし、あんたの全裸みても平然と見返せる自信があるわよ。

ま、視界の関係であんまり見れないっていうのはあるんだけどさぁ。

ってか、ごめんこれはさすがに品がないわ。


 風呂で丸洗いされ、ワシャワシャとタオルで拭われている時にロイズが突然妙なことを言い出した。


「おまえ、毛に何かひっついてるぞ?

ゴミか? 毛玉?」

……それはあんたのお手入れの怠慢なんじゃないの?


 あたしはね、うつくしーい猫なのよ。

ちょっと長毛入ってる感じなの。

ブラッシングしないとそういう目にあうのよ。


って、その手に持ってる鋏みはなによ。

「こら、動くなっ」


やめてよ!


 ゴミだか毛玉だか知らないけれど、鋏みをつかって切ろうなんて野蛮人のすることよ。

 丁寧にぬぐうとか、ブラシをかけるとか一般的にはするものでしょう!


鋏みで毛を切るなんて乱暴すぎると思わないの?


 禿げるのはあんた一人で十分なんだからっ。

美しいあたしにハゲ、ハゲ、ハゲェェェ。


「キシャーっっっ」

それ以上近づいたら、絶対に許さないわよっ。

って言ってるのに。

――猫VS熊

軍配などどちらにあがるか……言うまでもない。


「まぁ可愛い」

という侍女の言葉をあたしは信じたりしない。


 ぷっと吹き出したのをちゃんと耳にいれたしね!

ハゲ……それはいったいどうしたことか、あたしの頭の後ろ。

首の上辺りに存在する。

ちょうど、猫の手足が届かない感じのトコ。


 あのあと一杯ロイズを噛み付いてやったが、ロイズは平然としていたし、それなら、自慢の爪の味をとっくと味あわせてやる!

と、にゃきんっと爪を出したが、


しっかり切られている為にそれはヤツにいかほどのダメージも与えたりはしなかった。


「マースータ?」

ふんっ。


 迎えにきた使い魔を無視する。

「どうしたんですか、マスター?

行きましょうよ?」

 窓をこっそりとあけ、ちょいちょいっと手招きする使い魔。


無視。


 使い魔は不思議そうな顔をし、部屋の中、中央のソファで香箱座りのあたしを見る。


「マスター?」


「行かない」

「へ?」

「今日は――ってかしばらく行かない」


「何言ってるんですかぁ。レイリッシュ様に叱られますよ?」

「行かない」


 あたしは首をふらずに言う。

首を振ってハゲが見えたら困る。


 しかし、使い魔は瞳を瞬いて、窓の枠に手をかけ、ひらりと室内に入り込んだ。

 ちっ、そんな無造作な行動がちょっと格好いいとかおもっちゃったじゃないか。

 使い魔のくせに。

エイルの顔のくせに。


「具合でも悪いんですか?

大丈夫ですか?

マスター?」

「くるなっ」

 近づくでないわっ。

そう、今はおまえがどうであろうと関係が無い。


 シャーっとあたしが威嚇すると、さらに使い魔の顔が心配気に歪む。

ってか、あんたエイルの顔だからね!

何度も言いますが!


エイルの顔で心配顔って、見ていて心臓に悪いんですがっ。


しかし、使い魔はひょいっと近づくとあたしを掴みあげてしまった。


 じたばたじたばた。

暴れても抱え込まれる。


それからぴたりと使い魔の動きがとまり、


ぷっ――


「マスター可愛いぃぃ」


おまえいま笑ったろう!!!

ぷって噴出したろうっ!


「地肌がぴんくー」

「はーなーせぇぇっ」


「ああ、早く行かないと!

エイルさんが怒り心頭にきちゃいますよっ」

「やだってばぁっ」

「大丈夫ですよ!

今のマスターをみればどんな怒りだって静まります」


だからヤなんだよ!!!


地肌がぴんくー……

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