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21、罪人には罰を

――レイリッシュ。

ストレートな黒髪の美貌の主に年齢を聞いてはいけません。


そんな諸注意が思わず過ぎる。

彼女は魔女。

この大陸に六人いる魔女のうちの一人。そして、王と契約している魔女。


 びょんっ、と彼女が取り出したのはエノコログサでは無い。ウサギの毛を使用した艶やかな猫じゃらし。

 なんというか、もうお尻のあたりからムズムズする感じ。

柔らかな毛のついたおもちゃって、なんでああそそるのかしらね。


それを右に左にみょんみょんと移動させながら、赤い爪の魔女は「ふふふふふ」と甘い笑みを零す。

「ほぉら、楽しいわよぉ」

「……」


「あらぁ、子猫ちゃんは頑固ね」

 くすくすと笑い、ついで彼女はその猫じゃらしの先端でぺしぺしとあたしの頭をはたいた。


「あたくしを無視するなんて、なんて可愛い子」

「ふしゃーっっ」


威嚇してみた。


ぺしっ。


猫じゃらしの先端が頭をはたく。

「ふふ、どうしてあたくしがここにいるか判るかしら、子猫ちゃん?」

 ふりふりと猫じゃらしを動かしながら笑っていたレイリッシュだったが、ふいにあたしへと手を伸ばした。


あたしは横っ飛びに逃げようとしたのだが、体は石のように動かなかった。


――魔法!


 こんな魔法に囚われるなんてっ。

口の間から怒りの呼気が漏れたが、あたしの体はなす術もなく魔女の手にぶら下げられた。


「愚かなブランマージュ。

魔女の(ことわり)を破ってしまったお莫迦な妹。

――おまえに罰を与えるわ」


 その静かな宣告に、あたしは「どういうことよ!」とやっと口を開いた。

「人には人の理がある。

そして魔女には魔女の理――掟があるのよ。

人を騙し陥れるとしても構わない。色欲にふけり国を滅ぼしたところで魔女は感知しない。

 それは人の理によるものだもの。

けれど魔女にも禁忌がある。

おまえはそれをやぶってしまった。

自らの命惜しさに、浅ましくもちいさな生き物から命をはじき出し、その器を奪う行為を魔女は許さない」

判らないとおもっていた?


ふっとレイリッシュは笑い、

「本来であればおまえの体を燃やしつくし、その魂を永久凍土に閉じ込めてやるところだけれど」


その眼差しを細めた。

「年若く愚かな妹。

おまえの母に感謝おし。おまえが罪をおかして後の三月、おまえの姉であり母であり師であるエリィフィアがどれだけ尽力したか知れぬ」


エリィフィアの名にあたしは心臓をつかまれたような衝撃を受けた。


「けれど罪は罪。

おまえはその罪を償わねばならない。

幼い末の魔女ブランマージュ、おまえに罰を」


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