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15、献身と書いて使い魔と読む

……あたしの体がエイルの元にある。


それは絶望だ。

あたしはちいさな体を更に縮こめて「なうぅぅー」と鳴いた。


魂の無い抜け殻なんぞ素直に燃やしておけよ。

正直、燃やされるよりとっておかれるほうが破壊力がすさまじい。

あたしはそれから一週間程の間激しく落ち込んだ。



月の光が窓から差し込む。

月と太陽は魔力を与えてくれる。

だからあたしは窓辺で月に照らされながら悲しみにくれていた。


と、こつこつっとちいさな音。


あたしはがばっと身を起こした。


「マスター」

囁きと共に、ひょこりと上空から飛来した蝙蝠が、ぱっと姿を人形へと変えた。

エイルの姿だった。


更に気分が滅入った。


「マスター?」

自分莫迦。

どうしてこいつの姿をエイルにしてしまったのだろうか。

イヤ過ぎる。


使 い魔はずんっと落ち込んだあたしの姿に首をかしげたが、すぐに手を窓の鍵部分に当てた。

カチャリとそれが解かれる。


両開きの扉を開き、使い魔は嬉しそうに丸パンを差し出した。

「マスター、やっとこれだけ溜まりました!」

差し出されたパンにはたっぷりと蜜が乗っている。

月の魔力を吸い込んだ蜜。

月の光を受けた朝露と新鮮なオレンジとで作られた魔力たっぷりの一品。

ほんの一匙作るのも至難の品で、今では魔導師でさえ作らない。


面倒くさいから。


――そもそも魔女はそんなものいらないし。

わずかばかりのものだが、それでも枯渇しているような現状でそれはそれはありがたい。


「偉い! 褒めてやるっ」

みゃうおぅっ!

元気一杯にあたしは言い、がぶりと――蜜を塗ったパンを頬ばった。


バタン!


がぶりとやった途端、背後から音がしてあたしははぐはぐと口を動かしながら振り返り、

「この、使い魔!」

ロイズがぎちりと激鉄をあげるのを見た。


「うひぃぃぃっ」

使い魔が慌てて蝙蝠へと変化して飛んでいく。激しい舌打ちをしてロイズはつかつかとこちらへと近づいてくる。


まて、ちょっとまて。

もう少しコレを食べてから!


はうはうっとあたしは必死にパンを食べる。

魔力の蜜がたっぷりとつけられたパンは、美味しいけれど子猫にはなかなか難解だ。


「ブランマージュ!」

「もうちょっと!」

まってなさいよっ。


って、あれ……あたし、今、しゃべっちゃいましたか?


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