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13、役立たずと書いて使い魔と読む

 猫からも魂が抜けたかと思うように、ぷしゅりと力を無くしたあたしが正気を取り戻したのはそれからどれほどたった後だろうか。


いくらあたしだって、人間の体から魂を抜き取りその体をのっとるなんて……できやしない。あたしはこのまま猫なのか?


使い魔――シュオンはあたしを両手で掴んだまま頬ずりを繰り返し、

「ああ、マスターが可愛い」

などと戯言を吐いていたがそれは無視。


突然犬の声が聞こえ、ついで低い声が聞こえた。

「その猫、返してもらおうか」

だんっと屋根の上に乗っかったその体躯に、あたしも――そして使い魔も硬直した。


「……エイル? エイル・ベイザッハ?」

屋根の上にあがり、そこにいた相手、魔導師の姿にロイズは目を見張ったが、明らかに様子の違う相手に眉を潜め、


「違うのか?――」

と呟いた。


「あの、えっと……こんにちは」

使い魔、動揺する。


「その手の猫は、うちの猫だろう」

 静かな問いかけ。

使い魔は引きつった笑みを浮かべたまま、

「いいえ、このこはうちの子ですよぉ?」

声が裏返ってるぞ、阿呆。


 犬は屋根にのぼれない為下でわんわんほえている。

どうやら侍女が本当に警備隊に通報したようだ。

そもそも彼女の主は警備隊の隊長だしな。


「その首輪はうちの紋章だがな?」

ロイズの言葉は低く、ゆるぎない。

その威圧感は物凄い。絶対垂れ流してはいけないものを垂れ流している。

――触れれば死ぬ。

まさに毒ガスのような何か。


 あたしは思わず「うみゃー」とないた。

こわかった。

うひぃーだった。


 まるでそれを合図にしたように、ロイズが近づき、腰に吊るした拳銃を引き抜く。

「窃盗で同行してもらう」

「あの、あのっ」

使い魔、逃げろ!

逃げるのだっ。


あたしの言葉に、ぎゅっとあたしを抱く手の力が増した。

「駄目です! この猫はぼくのですっ」

言ってから、照れたように、

「いえいえ、ぼくがこのこのモノであって、モノっていうか、下僕っていうかぁ。決してこのこがぼくのものって訳じゃなくて、ああ。それだったらどんなに……」

「頭腐ってるのか?」

ロイズは眉間に皺を刻んだ。


「変態?」


いや……否定はしないけどね。

なんか今むしょうに燃やしたい気持ちになったし。


「いいから、もう行きなさい!」

 ロイズの手が激鉄を起こす。

威嚇だとは知っていても、あたしは慌てて命じた。

 警備隊隊長の銃に装填された弾丸は清き泉の洗礼を受けた銀の弾丸だと聞いている。魔とつくものにそれは間違いなく脅威だ。



勿論、声は「ふみゃおぅっ」だったけれど。


 がぶりと指に噛み付くと、使い魔はぱっとあたしから手を離し、ぽんっとその音をさせて蝙蝠へと変化し、飛びさった。


「……使い魔?」

ロイズは怪訝そうに呟き、ぽてりと屋根の上に落ちたあたしを拾い上げた。


「無事か、ブランマージュ」

ひょいとあたしを掴み上げ、じっと瞳を見つめてくる。

あたしは視線を剃らした。


――マスター、きっと救ってみせます!


最後に残された使い魔の言葉が涙を誘う。

我が使い魔ながら、本気でつかえねぇぇぇぇ!


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