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10、猫をあまり洗ってはいけません

――やめてぇぇぇぇ。


あしはもう何度目かの悲鳴をあげた。


風呂はいい。

風呂は歓迎してもいい。

だって今のあたしときたら、ものごっつい犬臭い。犬の唾液でもうすんごいことになっている。

 だから風呂で洗われるのは、いい。


だからといってどうしておまえと入らねばならんのだ、ロイズ!

この変態!

そのキタナイものをあたしに見せるなっっっっ!



いやよぉぉぉぉぉ!!!!


***


激しく暴れていた白い猫だが、やがて魂が抜かれたように静かになった。

それをいいことに、同じ浴槽に入れながらロイズは丁寧に猫を洗い始めた。

石鹸を泡立てて丁寧にわしゃわしゃとやってやる。


猫は死にそうな声をあげていたが、今は「みぃぃぃ」とか細い声をあげるだけだ。

子猫のうちに風呂に慣れさせれば猫も風呂好きになると聞いている。

ならばこの猫も毎日のように風呂にいれておけば、風呂好きになるかもしれない。


――猫は月に何度も風呂に入れてはいけない!

というのを知ったのは後のことなので、とりあえずその時のロイズは毎日の日課にしようと心に定めた。


ぐったりとした猫を、無造作に湯から出ている膝の上に乗せる。

なんだかでろんとしていて、今にも死にそうだが……まぁ、大丈夫だろう。


***


 あたしはロイズの顔を視界に入れながら、もう幾度も唱えた言葉を呟いた。

もうお嫁に行けない……――

見てはいけないものを見てしまった。

全身を洗われるし、もうイヤだ。

こんなになるまでなっても生きている自分ってなにさ?

もういい。

死にたい。


「ブランマージュ」


びくりと言葉に反応する。

ああ、それがやっぱり名前なのか。

確定なのか。嫌がらせか?


あたしは眼差しを上にし、ロイズを見た。


 それは確かに猫へと向けられた台詞であったが、ふいに彼は眉を潜めた。

「そういえば、あの魔女……最近見かけないな」


 ここにいるからね。

あたしは「ふみゃー」と鳴いた。


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