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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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不老の魔女の問題集


 全員の理解が追い付かず沈黙が流れる。

 ・・・は?

 奇襲?

 ・・・何で?

 

 「ちょっと待て。・・・意味が分からないんだけど?詳しく話してくれないか?」

 「えぇ!?端的に話せといったのは君だろうに・・・全く、我儘さんだね」

 「いやいや、端折るにも限度があるだろうが。お前の言ってる事、滅茶苦茶だぞ?順序があるんじゃなかったのかよ?それなのに、いきなり奇襲って・・・意味が分からないんだが?」


 その疑問に賛同した多くのドワーフやティルティーラも頷く。


 「そうか・・・それじゃあ、少しゲームをしよう」

 「は?」

 「問題を出すから答えてくれたまえ。簡単に言うとクイズみたいなものさ。正解したら1問毎に3フロウちゃんポイントを上げよう」

 「いや、いらな「第一問!」


 返事も聞かずフロウは強引に話を進めていく。


 「私達に今一番足りない物はな~んだ」


 ・・・足りない物?

 暫し考えるが・・・答えは一つしかないだろ?


 「・・・戦力?」

 「随分とふわっとした物言いだが・・・まぁ、正解にしておこうかな。おめでとう!3フロウちゃんポイントゲットだね」

 「いや、だからいらな「第二問!戦力の少ない私達が優先的にするべき事はな~んだ」


 ・・・馬鹿にしてる?

 流石にそれくらいは考えるまでも無い。

 

 「戦力の補充だろ?」

 「おぉ!素晴らしい!正解だ!いいね、いいね!調子出てきたね!これで合計6フロウちゃんポイント獲得だ!このまま全問正解を目指して頑張りたまえ」

 「え?まだ続「第三問!私達が戦力補充をする場合、するべき事はな~んだ?」


 ・・・するべき事?

 ・・・え?

 何だ?

 先程までとは違い、困惑する。

 戦力を整える為にするべき事は・・・交渉か?

 ・・・どこと?

 『エルトタレッセ』は・・・駄目だよな。

 距離が離れすぎているし、あそこだってまともな戦力はシャルロットだけ。

 そんな彼女を引っ張り出す事は出来ない。

 帝国は論外として・・・王国はどうだ?

 ドワーフに襲われている境遇は同じだ。

 力を貸してくれないだろうか?

 ・・・いや無理だな。

 確かに共通の敵を持つが、こちらにもドワーフがいる。

 事情を説明しても信じてもらえる保証はない。

 むしろ事態を悪化させる可能性の方が高い。

 他に打つ手があるとすれば・・・4つか?

 パルシィの種族への要請も・・・駄目だよな。

 ボンボルドンドの仲介でオークに・・・オークも向こう側だ。

 エルフ・・・は、話した事も無い。

 だとすれば・・・一番可能性が高いのは、逸れているドワーフ達を着実に仲間にする・・・か?

 これしかない・・・か?

 

 「逸れている・・・ドワーフを・・・仲間にする?」

 「ほうほう・・・なるほどね。流石ナナシ君・・・ぶっぶ~!!大外れ!全然外れ!!一ミリもカスってないよ!!芸術的な外れ!!ここまで行くと才能だよ、素晴らしい外れ!!フロウちゃんポイント没収で~す!!ざんね~~~ん!また次回の挑戦を待ってるよ」


 何が楽しいのか・・・何度も手を叩き笑う彼女に僅かに悔しさが込み上げる。


 「ポイントはいらないけど・・・だったら正解は何だよ?」

 「はぁ~あ・・・笑った、笑った。ん?正解?超ボーナス問題だったんだがねぇ。最初に答えを言ったじゃないか」


 ・・・はぁ?

 最初に答え?

 そんなの言って無―――え?

 ここでフロウの言葉を思い出す。


 「・・・奇襲?」

 「そう、それ。なんだい、なんだい・・・ちゃんと覚えてるじゃないか」

 「いや・・・ちっとも分からないんだけど」


 戦力補充と奇襲が・・・どう繋がるんだ? 

 っていうか、矛盾してるだろ?

 戦う為の力が無いのに戦うのか?

 意味が分からず呆けていると、ひとしきり笑い終えた彼女は説明を始める。


 「簡単に言えば、今回の奇襲は黒ちゃんの救出がメインだよ。考えて見たまえ。現状の戦力では国を取り戻す確率は0%だ。でも、黒ちゃんをこちらに取り戻せれば、そうだね・・・6%くらいま上がる」

 「いや、でも・・・結局戦う事になるんだろ?」

 「違う、違う。戦わないよ。いや・・・少しは戦うけど、あくまで救出だ。正面から挑んでも数の利で押されるだけ。だが、奇襲ならば少数精鋭でなんとかなる。向こうも奇襲自体は想定しているだろうが、ここまで早い事は想定していないだろう。それに、向こうの戦力を地下に閉じ込めている今が奇襲のチャンスだ。この機を逃す事はあるまいて」

 

 あぁ・・・さっき言っていた『またとない好機』ってこの事だったのか。

 しかし・・・そう上手くいくのか?


 「実際・・・どうするんだ?少数精鋭って?」

 「作戦はすでに私とボンボーニンボー君で幾らか立てている。ボンガラドンガ君、説明を頼むよ」

 「ボンボルドンドです。それでは、僭越ながら説明させていただきます」


 ボンボルドンドは広げた盤に駒を置き、説明を始める。

 ドワーフ達が熱しにそれを聞いている間、フロウが手招きをしている。

 何だ?

 自分も作戦を聞いた方がいいだろうに・・・。と、そんな事を思いながら近づく。


 「ナナシ君。一つだけ君に言っておく事がある」

 「何だよ?」

 「君は後方待機だと思うが、万が一戦闘になった場合は・・・分かってるね?」

 「分かってる。なるべくドワーフとオークを殺さない様に「違う。逆だ」


 ・・・え?

 先程までとは打って変わって真剣な表情で・・・彼女は見つめる。


 「手心を加えるなんて考えるな。相手は容赦なく命を奪いに来る。躊躇わず―――殺すんだ」

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