友達と居場所
フロウとボンボルドンドの助力を得て一先ず窮地を脱する事は叶ったが・・・問題は何一つ解決してはいない。
住む場所を追われ、大切な人を失くしたドワーフ達は怒りと悲しみに打ちひしがれていた。
脱出できた数は・・・8割程か?
あの状況下で8割も生存できていれば十分すぎるが・・・それは数だけの話だ。
失ったのは命だ・・・もう戻る事は無い。
何も出来なかった自分の無力さを痛感し、唇を噛み締める。
暫し後・・・重苦しい雰囲気の中、フロウに尋ねる。
「フロウ・・・これからどうするんだ?」
「え?どうするって?」
こんな時でも彼女は普段通りの声色で首をかしげる。
「そうだねぇ・・・実を言うと私も悩んでいるんだ。必要最低限の荷物は持っては来れたが、ここからエルフの領土に向かうには些か不足が過ぎるからねぇ。一旦、王国領に戻るか半ば強引に突き進むか・・・どっちがいいと思う?」
「・・・は?」
「ん?あぁ・・・いやいや、大丈夫、大丈夫。ちゃんと全員分のお皿は持ってこれたから。どの道食料は道にある草に頼る事になるけど、やはり食事にはお皿が無くては取り分で喧嘩してしまうからね。我ながらナイスな判断だと思うよ・・・うんうん」
「そうじゃなくて・・・」
「え?だったらなんだい?・・・はは~ん、そういう事か。すまない・・・ナナシ君。残念だが、君の寝具だけは置き忘れてきてしまったんだ。最近は夜も冷えるから確かに心配なのは分かるけど・・・いや、仕方がない。これも私のミスだ。私と共に寝ようか。大丈夫、大丈夫、私はこう見えても体温が高くてね。文字通り人肌で温めてあげるよ」
「いや・・・だから・・・」
「・・・っふ、ふふ。ちょ、ちょっと待ってくれたまえ・・・ふふふ。私さっき・・・面白い事言ったよね?目的地に向かって道草を食いながら道の草を食べるって・・・ふふふ、あっは・・・あははは!こ、これは我ながら傑作だ!私の身体からユーモアが溢れ出てないかい?っひひひひ・・・」
意味不明な事をのたまい笑いだす彼女に―――自分の中で何かがキレた。
「そんな事言ってる場合じゃないだろう!!お前っ・・・何て言った!?ドワーフ達を見捨ててこのまま立ち去るって言ったのか!?」
その怒鳴り声を前にしても彼女は笑いを続け、ようやく落ち着くと目尻に浮かぶ涙を拭う。
「い、いやいや・・・誰もそんな事・・・ふふっ、い、言って無いだろう?」
「だったら「けどまぁ・・・結論は概ね君の言う通りだ。何だい、今日は随分と察しがいいじゃないか。成長したね、偉いぞ。フロウちゃんポイント4点あげちゃおう」
「ふざけるな!!」
再び怒鳴り付けると、彼女は鼻を鳴らして肩をすくめる。
「何をそんなに怒っているんだい?お腹でも減っているのかい?・・・あ、あの野草なら食べれるよ?」
「そんな事どうでもいい!お前は・・・このまま本当に何もしないのか!?助けてやらないのか!?」
「助けたじゃないか。何が不満なんだい?」
「助けただって!?全員助ける事が出来なかったのに・・・よくそんな事―――」
瞬間―――フロウの目つきが鋭くなる。
「君は・・・何かい?私が困っている人全てを助けて、全ての命を救えるとでも思っているのかい?」
「それは・・・お前なら「答えよう。無理だ。全ての命を助ける事など出来る訳が無いだろう?むしろ、あの状況下でこれだけ救えたのだから成果としては十分じゃないのかい?全てが理想通りにいくなど・・・おこがましい事この上ないよ」
そんな事は・・・分かっている。
それでも・・・
「・・・『黒砂』はどうするんだ?このまま見捨てるのか?友達じゃ・・・なかったのか?」
「友達だよ?君に言われるまでも無くね。けど、黒ちゃんの実力は知っているし、それは・・・いや、何でもない」
何かを言いかけたフロウに眉を顰め、尋ねようとする・・・が、周囲のドワーフ達が次々に口を開く。
これからどうするんだ!?
安全な場所は無いのか!?
早くここから離れた方がいいんじゃないか!?
私の子を・・・子供を見ませんでしたか!?
至る所で各々が騒ぎ始め、最早収拾などつくはずも無い。
その状況に困惑していると・・・これまで沈黙していたティルティーラが動き出す。
彼女はフロウの前で立ち止まり―――膝をつき、頭を地面につける。
その光景に騒めきは静まり、静寂が訪れる。
「・・・何のつもりだい?」
「先ずは・・・私達を助けて頂き・・・ありがとうございますですの」
「礼を言う相手が違う。それはナナシ君とパルシィ君、ボンボルドンド君に言うべきだ。彼らの言葉が無かったら、私は君達を助ける気なんて毛頭なかったよ」
「必ず皆さんにも致しますですの。それでも・・・貴方にも言わなければなりませんですの」
「そうかい。で?用件は?」
彼女は拳を強く握る。
「・・・無理を承知でお願いしますですの。私と共に・・・アズとの救出と国の奪還に力を貸してくださいですの!」
「何故だい?私は言ったよね?君の事が嫌いだと・・・そんな私が頷くと思っているのかい?」
「思いませんですの。でも・・・私だけでは駄目なんですの!アズを助けて国を取り戻すには・・・私だけでは駄目なんですの!!『不老』の魔女様・・・どうか・・・力をお貸しくださいですの・・・」
涙を浮かべ懇願する彼女に周囲のドワーフ達は呆気に取られていたが・・・
・・・お願いします!
お助け下さい!
私達の国を・・・家族をどうか・・・!
次々に膝をつき、至る所で声が上がる。
しかし、フロウは表情一つ変えずにティルティーラを見つめる。
「それは復讐の為かい?」
「・・・いいえ、違いますですの。私の大切な友達と皆の大切な場所を取り戻す為ですの」
「・・・そうかい」
暫しの静寂が流れる。
「・・・頭を上げたまえ。それから、立ってくれ。折角の洋服が汚れてしまうだろう?」
「いえ・・・返事を聞くまでは「いいから・・・ほら。ドワーフの皆も立ち上がりたまえ」
強引に彼女を立たせ、ドワーフ達が後に続き―――全員が驚愕した。
当然だ。
先程までとは立場が変わり・・・今度はフロウが膝をつき頭を下げているのだから。
意味が分からず困惑するティルティーラだったが、フロウは静かに口を開く。
「ドワーフの王女。これまでの無礼、心よりお詫びいたします。貴方の気持ちは理解しました。この『不老』の魔女―――身命を賭して『黒砂』の魔女の救出、及びタルワーグ王国の奪還に尽くす事を約束します」
ボンボルドンドとパルシィも膝を付き頭を下げ―――少し遅れてナナシも頭を下げた。
最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。
評価は広告下の☆をタッチすれば出来ます。
続きが気になる方がいらっしゃいましたらブックマークをよろしくお願い致します。
皆様が読んでくれることが何よりの励みになりますので、至らぬ点もございますがこれからもよろしくお願いいたします。




