614年8ヵ月2日と11時間48分55秒ぶりの再会
「いや~ほんまに久しぶりやね!何年ぶりくらいなるかな?600年ぶりくらい?星ちゃん、あの頃と何も変わっとらんやん!相変わらず可愛ええなぁ」
「正確には614年8ヵ月2日と11時間48分55秒だよ。もう、黒ちゃんは相変わらずのお茶目さんじゃないか。しかし、黒ちゃんは随分と大人っぽくなったね、色気が凄まじいよ。何を食べたらそうなれるんだい?」
「え~嬉しいなぁ。別に特別な物は食べてへんよ?強いて言うなら・・・この辺りの土は魔力が豊富でデザートにええね」
「なるほど・・・それは盲点だった。草を食べるよりも効果がありそうだね。流石は黒ちゃん、目の付け所が違う」
「えへへ・・・それほどでもないよ。・・・あ!そうそう!星ちゃん聞いて聞いて!この間な―――」
和気藹々と世間話をする2人を見つめる事数分・・・一向に話が終わる気配は無い。
流石に業を煮やし彼女に近づくと、同じ考えなのかティルティーラの姿も見える。
視線を交わした2人は小さく頷き合い、互いの魔女に尋ねる。
「あの・・・フロウ?彼女とは知り合いなのか?」
「ア、アズ?何をやってますですの?」
ここでようやく2人は会話を止め、振り返る。
「あぁ、ナナシ君。そうだよ、紹介しよう。彼女は黒ちゃん、私の昔馴染みだよ」
「ティルちゃん?何って・・・星ちゃんとお話しとるんやけど?駄目なん?」
「そ、そうか・・・」
「い、いや・・・駄目と言うか・・・えぇ・・・?」
困惑する2人を余所に、『黒砂』は徐に手を叩き提案する。
「そうや!なぁなぁ、星ちゃん?ウチまだ話したい事山ほどあんねん。せやけど、このまま立ちっぱなしだと足が棒になってまいそうやわ。せやから、ウチ等の拠点に来ぇへん?座ってゆっくりお喋りしよ?」
「え?いいのかい?それは魅力的な提案だが・・・お邪魔じゃないかい?」
「かまへんよ~。ただ、せまっ苦しいところやけど堪忍してな?」
「なんのなんの、黒ちゃんとならむしろ狭い方がいいほどさ。あ・・・そうだ。黒ちゃん、迷惑ついでに友人を1人避難させているんだが、彼女もお呼ばれされてもいいかな?」
「もちろんええよ~。星ちゃんの友達なら私の友達同然やもん。100人でも200人でもかまへんよ」
「流石黒ちゃん。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。ナナシ君・・・と、そこのオーク君。こっちに来てくれたまえ」
唐突に手招きをされたボンボルドンドは困惑しつつも、歩み寄る。
「何でしょう?」
「ここから南に3キロ程の距離に小さな洞窟があって、その中にパルシィ君・・・私とナナシ君の友人がいる。ナナシ君と2人で彼女を連れてきてはくれないか?拠点の位置は・・・黒ちゃん、どうすればいい?」
「あ、ほなら説明するよ。えっとな―――」
躊躇う事無く話し出す彼女に困惑しつつ、再びフロウに視線を向ける。
「え・・・いや・・・何故私が?」
「ん?君程の適任者はいないと思うが?君はこの森に詳しく、実力もある。一方ナナシ君は方向音痴で君よりも実力は劣る。それに、彼女の周囲には少々特殊な魔法を張っている。魔力のコントロールが苦手なナナシ君が解除するには少々荷が重くてね。その点、君なら大丈夫だろう」
「・・・オークの私を信用するのですか?」
「はぁ?随分とおかしな事を聞くじゃないか。種族なんて何も関係ないだろう?私は君を信用しているんだ。ナナシ君も君を信用しているみたいだし・・・ナナシ君を助けてくれた君を信用しない理由がどこにあるんだい?」
「そうそう、そんで星ちゃんが信用してる人ならウチも当然信用するよ。ウチが助けそびれたお兄さん助けてくれてありがとね~」
2人の魔女からの思いもよらぬ信用に動揺し、眼鏡を何度も上げる彼の肩を軽く叩く。
フロウの言い分には多少の反論はあるものの・・・今は止めておこう。
「それじゃあ、行こうか。ボンボルドンド」
「・・・えぇ、ナナシさん。ご案内します」
歩き出そうとした瞬間―――ティルティーラの声が響き渡る。
「ちょ、ちょっと待つですの!」
何だ?
視線を向け、理解した。
彼女・・・もとい、ドワーフ達はこの状況に納得していない。
確かに当然と言えば当然だ。
しかし、そんな事などどこ吹く風。
ティルティーラの声に『黒砂』は首をかしげ、何かを察して軽く笑う。
「ん?何?どしたん?ティルちゃん?・・・あぁ、なるほど。あははっ、嫌やわ~。冗談やん、冗談。流石にあの拠点に200人は無理やって。それくらい知っとるよ~。言葉のあややん」
「そこじゃないですの!何で私達の拠点にこの方達を招き入れるんですの!?そこの魔女とナナシ様は100歩・・・いや、1万歩譲って許可したとしても、そこのオークだけは駄目ですの!絶対駄目ですの!!どうせ何か企んでいるに決まっていますですの!」
その言葉に周囲のドワーフ達も同調し、周囲は異様は雰囲気に包まれる。
どうしたものか。と、立ち止まっていると、フロウの声。
「ナナシ君、オーク君。ここは黒ちゃんに任せて君達は行きたまえ。でも、少し急いだほうがいい。本当は2人に愛を育む時間を与えたかったが・・・それは夜になってからのお楽しみだ」
ケラケラと笑い意味の分からない事を言うフロウに呆れつつも、2人はパルシィの元へと歩き出す。
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