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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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男の友情


 「ボンボルドンド、聞いてもいいか?」

 「何でしょう?」


 目的地を目指し半日ほどが経過した。

 昨日知り合ったばかりの人物と2人きりだと少し気まずいかと思っていたが、実際はそうでもない。

 彼は堅物に思えるが、こちらの質問には親切に答えてくれる。

 それがどんなに他愛のない話でもだ。

 フロウやパルシィと行動する事は嫌いではないが、彼と2人きりというのも・・・悪くない。

 唯一彼が難色を示すのが下世話な話っぽいけど・・・まぁ、自分もさほど興味が無いから問題は無い。

 フロウと合流した時の事を考えると・・・少々頭が痛くなる。


 「『黒砂』の魔女ってドワーフとどういう関係なんだ?昨日は懇意にしてるって言ってたけど・・・」

 「えぇ、そうですね。言葉通りの意味ですよ。ドワーフと『黒砂』は協力関係にあります」

 

 協力関係?

 つまり・・・タレッセやシャルロットみたいな感じか?

 あそこは小さな島国だからだと思っていたけど・・・本大陸にもそんな魔女がいるんだな。


 「『黒砂』は鉄や砂、鉱物を操る事に長けていると聞きます。鉱物好きのドワーフ達と打ち解ける事は何も不思議ではありません」

 「そうなのか。オークにも友好的な魔女はいるのか?」


 何てことの無いただの質問。

 特に興味などは無いが、話の流れで尋ねる・・・が、途端に彼の表情が僅かに険しくなる。

 ・・・あれ?

 何かマズい事聞いたか?

 流石に無神経すぎたか?

 微妙な空気が流れるが、彼はすぐに普段の柔らかな表情になる。


 「あぁ・・・すみません。オークと友好的な魔女でしたね。もちろん、いますよ。『狂乱』の魔女と呼ばれています」

 「『狂乱』?」


 随分と穏やかな魔名じゃないけど・・・本当に友好的なのか?

 『不老』『硬壁』『剣』『黒砂』『狂乱』

 ・・・うん、他の4つの魔名と比べてもあまり友好的な感じはしないな。

 心の内を呼んだのか、彼は眼鏡を上げて続ける。

 

 「オークは他種族と違い、戦いに生きる種族です。普段は辛うじて平静を保ってはいますが、一度戦闘に入ると心の昂ぶりを抑えきる事は難しい。精神系の魔法を得意とする彼女には、いい友か・・・あるいは、いい実験体に見えるのでしょうね」

 「・・・実験体?」

 

 意味が分からない。

 実験体って・・・何で?

 『狂乱』の魔女とは友好的なんじゃないのか?

 その言葉は明らかに友好対象に使う物じゃないだろう?

 気になって尋ねようとするが、再び心の内を読んだかのように彼は苦笑いを浮かべる。


 「あぁ、失礼しました。少し言葉がよくありませんでしたね。しかし、ご安心ください。彼女とは本当に友好的な関係ですよ。それよりも、私もナナシさんに1つ尋ねたい事があるのですが、よろしいですか?」

 「え?あ、あぁ・・・いいけど」


 上手くはぐらかされたか?

 でもまぁ、話したくないのならば無理に聞く事も無い。

 それよりも・・・彼が聞きたい事とは何だ?

 こう言っては何だが・・・自分が知っている事なんてたかが知れてるぞ?

 それに比べて彼は豊富な知識を持っているけど・・・何を聞きたいんだ?

 

 「貴方の持っているその剣は・・・一体どこで?」

 

 彼もこの剣が気になるのか・・・

 この剣・・・『渇望の剣』と言ったか?

 これはドワーフが打った物らしいから、ティルティーラが興味を持つのは理解できる。

 それに、彼女の話ではこの剣は魔力や魔法を斬る事が出来る。

 というか・・・実際、昨日はそれで何とか生き延びる事が出来た。

 フロウやシャルロット、『奪取』はこの剣の性能に気が付いていたのか?

 魔力に対して絶対的な力を持つこの剣に魔女達が警戒するのも理解は出来る。

 ・・・じゃあ、ボンボルドンドは?

 オークは基本的には肉体に魔力を流して戦うんだよな?

 それに対してもこの剣は有効なのか?

 というか、彼はこの剣が何なのかを知っているのか?

 暫し悩み、とりあえず分かる事だけを話す事にした。


 「・・・ごめん。俺もこの剣に関してはよく分からないんだ。気がついたら持っていて「あぁ、いえ。すみません。そちらの剣ではなく、もう一方の剣です。紛らわしくて申し訳ありません」

 「・・・え?これ?」


 彼が指さしたのは『渇望の剣』ではなく、ティルティーラに貰った剣。

 こっちの剣なのか?

 肩透かしを食らったが、こちらなら説明は簡単だ。


 「えっと・・・これはドワーフの女の子に貰ったんだ」

 「貰ったって・・・この剣をですか?失礼、もしよろしければ少しお借りしても?」

 「あぁ、いいよ」


 礼を言いつつ受け取った彼は剣を抜き、まじまじと見つめる。

 彼は目を輝かせ、感嘆の声を漏らす。


 「やはり・・・素晴らしいですね。重量、断面、刀身、装飾・・・全て一級品ですよ」

 「そうなの?武器にも詳しいのか?」

 「えぇ、まぁ。一応、私もオークの端くれです。魔法は使いますが、近距離戦の方が得意ですから。いや、実に素晴らしい・・・本当にこれを貰ったのですか?」

 「あぁ、そうだけど・・・」

 「そのドワーフの女性は随分と気前がいいですね。この剣・・・購入するとすれば、金貨60~80枚はしますよ」

 「へぇ・・・そうなの―――ろく・・・っ!?」

 

 思わず流してしまう所だったが・・・はぁ!?

 嘘だろ・・・おい!?

 金貨60~80!?

 そんなに高価な物なのか!?

 おいおいおいおい・・・冗談じゃないぞ!?

 ただ剣を研がせただけでそんな高価な物貰えるかよ!

 これは彼女に会ったら返さなきゃ―――ん?

 葛藤していると、ボンボルドンドが身構える。


 「ナナシさん、魔獣です!」


 その声に弾かれる様に―――叫び声と共に巨大な体躯が現れる。

最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。

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皆様が読んでくれることが何よりの励みになりますので、至らぬ点もございますがこれからもよろしくお願いいたします。

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