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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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本当の名前


 処刑人形が一瞬で全て倒された事は誤算だが、倒される事自体は想定の範囲内。

 作戦を練りつつ、時間を稼ぐ為に話を振る。


 「貴方、凄いのね。参考までに色々聞きたいけどいいかしら?」

 「あぁ、構わないよ。何が聞きたいのかな?可愛さの秘訣かい?胸の大きさかい?下着の履き心地かい?それとも・・・ナナシ君の特殊な癖かい!?そうか!君も気になるか!そうだろう、そうだろう!いや、私もね「いえ、興味はあるけれど今はいいわ」


 そうなのかい?と、露骨にがっかりする彼女を見て目を細める。 

 この女・・・どこまで本気だ?


 「それで?聞きたい事は?」

 「そうね・・・さっき魔構式を6つも出してたじゃない?あれはどうやったのかしら?」

 「はぁ?どうも何も・・・ただ魔構式を保存しただけじゃないか」


 さも当然のことのように言うが、意味が分からない。

 その様子を見て、フロウは少し唸る。

 

 「う~ん・・・そうだねぇ・・・。簡単に言えば、魔装品みたいなものかな。製造方法はよく分からないが、装飾品に魔構式を保存・・・というか、記憶させているようなものだろう?原理は同じさ」

 「保存ってどこに―――」


 ここで気が付いた。


 「まさか・・・指に?」

 「あぁ、そうさ。別に驚く事は無いだろう?魔力のコントロールをしっかりしていれば問題ないからね」


 再び当たり前の様に言うが・・・冗談じゃない。

 一度展開した魔構式を中断し、一時的に保存だと?

 それも1つじゃなく5つも?

 あの猛攻を躱しながら維持し続けたのか?

 並の魔力操作技術なんてものじゃ・・・いや、そもそもそんな事が出来る魔女が何人いる?

 

 「私はその気になれば足からでも魔力を出せるよ?見せてあげようか?・・・あ~でも、この気温で靴を脱ぐのは流石にちょっとあれだね。やはり止めておこう」


 考えを見透かしたようにフロウはケラケラと笑う。


 「・・・人形はどうやって倒したの?」

 「ん?妙な事を聞くね。魔法で倒したじゃないか。見てなかったのかい?」

 「見ていたわよ?でも・・・あの人形達はかなりの魔法抵抗力を持っていたのよ?」

 「うん。そうだね。実際かなりの丈夫さだったよ。でも、君も言ったじゃないか。『かなりの魔法抵抗力』って。だったら、答えは簡単さ。抵抗力を超える魔法を当てればいいだけ。違うかい?並の人形だったら、君ごと吹き飛ばせていたんだけど・・・私もまだまだだね」

 

 困った様に両手を上げるフロウを前に・・・口元が緩む。

 この女はやはり本物だ・・・間違いない!

 彼女の少ない魔力では何発当てようが処刑人形は殺せない。

 だが・・・怯んだ。

 ただの魔力でだ。

 彼女の魔力は限界まで研ぎ澄まされている。

 いくら魔力抵抗の高い処刑人形でも、研ぎ澄まされた上質の魔法6発分が直撃したら耐えられるはずも無い。

 抵抗力の高い人形5体が壁となり、威力と速度を減衰したが故、自分の防御魔法は間に合い防げた。

 尋常ではない魔力操作技術、極限まで研ぎ澄まされた魔力、精神力、戦闘センス、戦術、黒髪金眼・・・間違いない。


 「ふふっ・・・ふふふふ・・・あっはははははは」


 突然笑いだした『奪取』を前に、フロウは首をかしげる。

 ひとしきり笑い終えると、彼女は涙を拭う仕草を見せる。


 「ごめんなさい。まさか本物に会えるなんて思っていなくて」

 「・・・?本物?私の偽物にでも会ったのかい?」

 「いいえ、違うわ。でも、『不老』・・・いえ、本当の魔名で呼んだ方がいいかしら?」


 瞬間―――ほんの僅かだが、フロウの表情が変わる。

 しかし、すぐに笑みを浮かべる。


 「好きにしたらいいさ。別に隠しているつもりは・・・無い訳では無いが、隠し通せるとは思っていなかったからね」

 「そんなに簡単に認めるなんて以外ね。・・・何故貴方がここにいるの?というか・・・何故生きているの?」

 「言ったはずだよ?私はタレッセ君との約束を果たす為、この国を守る為にここにいる。何故生きているかは・・・考えてごらんよ」

 

 その言葉が終わると同時に魔構式を展開。

 即座に構築し、魔力を流し込む・・・が、目の前にあったはずの魔構式はいつの間にか消えていた。

 

 「ご苦労様。お返しするわ」


 視線を上げた眼前には・・・自らが放とうとした魔法。

 即座に回避し、何とか被弾を免れる。

 あぁ、そうか。と、『奪取』の魔女に視線を移す。

 

 「そういえば・・・君は『乳袋』じゃなく『奪取』の魔女だったね。またまた忘れていたよ」

 「ふふっ、思い出して貰えて光栄よ」


 『奪取』は魔構式を展開し・・・2人は交戦を開始する。






 右翼側の戦況は劣勢に立たされていた。

 後方からの援護もあり、負傷者の数自体は同等といったところ。

 しかし・・・魔獣の存在や兵士の練度の差、何よりも『剣』が処刑人形の相手で動けずにいる事が問題だ。

 前列の盾兵が持ちこたえている間に何とか手を打たねば。

 襲い掛かる敵の攻撃を回避したナナシだったが・・・思わず叫んだ。


 「ドロワ!!危ない!!」

 「・・・え?」


 乱戦の中、微かに聞こえた声の方へ振り向いた彼女の眼前には・・・魔獣。

 声を出す間もなく、その鋭い爪を振り抜く。

 ・・・何だ?

 痛みを感じないぞ?

 不思議に思いゆっくりと目を開けた彼女が見た光景は・・・自分を庇い出血するナナシの姿だった。

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