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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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剣の魔女にご挨拶


 目的の港町『ポートタル』に辿り着い頃にはすでに昼を過ぎていた。

 本来であればもっと早くついている予定だったが、フロウの2度寝3度寝や道草で大分時間を無駄にした。

 その事について小言を言うが、どこ吹く風。

 2人のやり取りを見て苦笑いを浮かべながら、パルシィが尋ねる。


 「えっと・・・これからどうするんですか?」

 「まずは剣の魔女を探してご挨拶だろうね」

 

 言うや否や、彼女は鼻歌混じりに歩き出す。

 暫し呆気に取られていた2人だが、すぐに彼女の後を追う。

 普段は賑わっているであろう広場は閑散としており、至る所に兵士の姿が確認できる。

 異様な雰囲気の町を歩いていると、数名の兵士が現れる。

 

 「そこの3人!止まれ!」


 声に従い足を止めると、3人を取り囲むように兵士が現れる。


 「お前達、この町の者では無いな?この地は直に戦場になる。すぐに町から離れろ」

 「忠告ありがとう。しかし、それだけを伝える為にこんなにも大人数で来るとは・・・随分と仕事熱心だね。余程いい給金が出るとみる。どうだい?ナナシ君。君もいっその事、この国の兵士に志願してみては?」


 ケラケラと笑いながら彼女は振り向くが、それどころではない。

 こいつ・・・何言ってんだ?

 状況が分かっているのか?

 彼女の小馬鹿にした態度に兵士達は明らかに殺気立っている。


 「おや?どうしたんだい?皆そんなに怖い顔をして・・・駄目だねぇ。人生を楽しむには笑う事が大切だ。そうだろう?・・・あぁ、そうだ。パルシィ君、どうだろう?彼らを笑顔にする為に一先ず踊ってみては?」

 「えっ!?わ、わた、私・・・い、今・・・えっ・・・!?」


 急に振られ、流石のパルシィも冷や汗を流して目を泳がせる。

 狼狽える彼女を見て、フロウはむむむ。と、唸り前を向く。

 

 「すまない。彼女の踊りは素晴らしい物だが、どうやら緊張しているみたいだ。代わりに私がこの場を盛り上げて見せよう。魔女ジョークと魔女冗談と魔女ユニークがあるが・・・どれがいいかな?」


 ブツブツと何かを呟く彼女を見て、冷や汗が流れる。

 こいつ本当に・・・正気か!?

 どういう神経してたらこんなにも火に油を注げるんだよ!?

 このままじゃ俺達・・・

 チラリと視線を兵士達に向ける・・・が、そこに映った物は想像もしていない光景だった。


 魔女・・・?

 あの女・・・魔女って・・・

 冗談だろ?

 本当に魔女なのか?

 何で魔女が・・・?


 殺気は消え、兵士達は様々な反応を見せている。

 希望・恐怖・不信・困惑。

 様々な反応を見せる兵士達の中・・・その内の1人が前に出る。


 「おま・・・あ、貴方は・・・本当に・・・魔女・・・なのですか・・・?」

 「ん?あぁ、本当だよ?」

 「ど、どうして・・・ここに・・・?て、帝国の・・・差し金・・・ですか?」

 「帝国?いや、違うよ。誰の差し金とかは無いけど・・・強いて言うなら、硬壁・・・いや、タレッセ君のお願いで来たというのが一番正しいね」

 

 タレッセの名前を聞いた瞬間、兵士達の間でざわめきが起きる。

 何とか・・・なった・・・のか?

 向けられた殺気から解放され、安堵の息を漏らす。

 未だに騒めく兵士達に向かってフロウは口を開く。

 その表情は・・・先程までのモノとはまるで違うものだった。


 「私は『不老』の魔女。『剣』の魔女に会いたいのだが・・・案内をしてくれるかな?」

 




 町全体を見渡せる高台の屋敷の一室。

 肉体的疲労と精神的疲労が重なり、ナナシとパルシィは机に伏せていた。

 そんな2人を余所に、フロウは運ばれた菓子を幸せそうに口に運び続ける。


 「ん~・・・なんて美味しいんだ。兵士達は毎日こんなにも美味しい物を食べているのだろうか?私も王国付きの魔女になろうかな・・・」


 暢気な奴だな。と、溜息を吐く。

 しかし、フロウのおかげで事なきを得たことは事実。

 剣の魔女とも会うことが出来る・・・と、ここでふと疑問が浮かび尋ねる。


 「なぁ、フロウ。魔女の魔名ってどうやって決めてるんだ?」

 「ん?魔名かい?基本的には師が弟子に与えるものさ。襲名制ではないけどね。得意な魔法だったり、特徴だったりを付けるのが多いかな」

 「・・・アレグリアには無かったんだよな?無くてもいいのか?」

 「別に無くても死にはしないよ。魔女からは馬鹿にされるけどね。魔名のない魔女は半人前以下だからさ。まぁ、適当に魔名は名乗る事も出来るし、面倒だったらあの娘みたいに人間の名前を使ってもいいし・・・そんなに気にするようなものでもないさ」

 「適当って・・・そんなもんなのか?」

 

 そうだよ。と、彼女は紅茶を口に運ぶ。


 「ナナシ君、何故魔名の話を?」

 「え?あぁ、いや。『剣』の魔女ってなんか不思議だと思って。魔女なのに剣を使うとかあるのか?」


 なるほどね。と、彼女は菓子を放り込む。


 「まぁ、別におかしくは無いんじゃないかな?魔女だって様々さ。きっと屈強な肉体で鎧を着こんだ金髪の戦乙女みたいな美女が現れるだろうさ」

 「何だそれ?」


 首をかしげると同時に扉が開き・・・『剣』の魔女が現れる。

最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。

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