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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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王か剣か


 パルシィと出会ってから3日が経過し、3人はようやく王都リスリオンㇸと辿り着いた。

 やっと着いた・・・

 安堵感に息を零すと、背後でフロウがパルシィに尋ねる声が聞こえる。


 「さて、ようやく目的地に着いた訳だが・・・パルシィ君。君はこれからどうするのかな?」

 「そうですねぇ・・・。とりあえず、街を見て回ろうかと思います。その後で丁度いい場所があったら踊りでもしようかなと思います」

 「なるほどね。街を見て回るのなら私も同行してもいいかい?やはり、こういうのは1人よりも2人の方が楽しいだろうからね」

 「もちろんですよ!」


 楽し気に笑うフロウに呆れた表情を向ける。


 「おい・・・俺達の目的を忘れてるのか?」

 「まさか?覚えているに決まっているじゃないか?」


 本当かよ・・・

 訝し気な顔をするナナシに対し、彼女は真剣な表情を向ける。


 「いいかい?ナナシ君。戦いというものには準備が必要だ。それは装備品であったり、心構えであったり、情報であったり・・・まぁ、色々さ。私がただ黙って街を観光するだけだと君は本当に思っているのかい?」

 「いや・・・そういう訳じゃ・・・」


 真剣な表情に思わず言葉を濁すと、彼女は軽く笑う。


 「なぁに、心配はいらないさ。パルシィ君との観光はちゃんと用事を済ませた後にしておくからね。まず最初にやるべきは、剣の魔女に会うか国王に会うかだが・・・どっちがいい?」

 

 ちゃんと考えてたんだな。と、少し感心しつつ考える。

 普通に考えたら・・・先に国王に挨拶をするのが先だよな?

 でも・・・何を話せばいいんだ?

 タレッセから頼まれて・・・一緒に戦わせてくれ・・・とかか?

 ・・・どう考えても怪しいだろうな。

 見ず知らずの自分達がこんな事を言って、快く頷く人間がいるだろうか?

 戦争中の国だぞ?

 スパイか何かと思われるのがオチじゃないのか?

 だったら・・・剣の魔女が先か?

 彼女はタレッセから話を聞いているはずだ。

 彼女を通じて国王に掛け合ってもらうのが一番いいのでは?

 ・・・うん、そうだ。

 それが一番いい。

 

 「剣の魔女に会うのがいいんじゃないか?」

 「わかったよ。それじゃあ、剣の魔女を探しに行こうか。パルシィ君、すまないがもう少しだけ我々に付き合っては貰えないだろうか?」


 いいですよ。と、彼女の返事を聞き・・一行はリスリオンへと足を進める。




 街の中は人で溢れかえっていた。

 これまでに見てきた村とは明らかに造りからして違う為無理もないが・・・流石は王都といったところだろう。

 見た事も無い武具や食べ物、煌びやかな装飾が施された服。

 同じ大陸でもこんなにも格差があるんだな。と、思いながら周囲を見回す。

 フロウやパルシィも目を輝かせ、口元を緩めながら周囲を見回している。


 「ところでさ、剣の魔女はどこにいるんだ?何か聞いてないのか?」


 会うと決めたのはいいが、場所なんて知る由もない。

 フロウがタレッセから何かを聞いていないか尋ねると、彼女は視線も向けずに答える。


 「え?知らないよ。まぁ、城に行けばいるんじゃないのかな?」

 

 まるで興味が無いかような彼女に若干呆れる。

 何だそれ・・・

 結局は国王の所まで行かなきゃ行けないのかよ・・・

 さっきの質問・・・なんか意味あったのか?

 だが、どの道行く当てなどない。

 城に向かってみるか。

 そう考え、城に向かって歩き始める。




 城への道を進んでいる内に違和感を感じる。

 

 (随分と人が少なくなったな・・・それに・・・)


 街を行きかう人の姿は減り、代わりに見た事の無い服装の人物達が周囲を警戒するかの如く立ち尽くしている。

 何なんだ一体・・・?

 不穏な空気を感じつつも城へと辿り着き、城門前の兵士に話しかける。


 「すみません。えっと・・・」

 

 どう話せばいいものか。と、考えていると、背後からフロウが口を開く。


 「国王か剣の魔女に会いたいんだが、中にいるのかい?」

 「おまっ・・・!」


 流石に聞き方ってものがあるだろう?

 兵士達は顔を見合わせ、少しムッとした表情で答える。


 「・・・今は大切な話をしている。悪いが日を改めるんだな」

 「そうか。それは悪かったね。それじゃあ」


 それだけを言うと、フロウは踵を返して歩き出し、パルシィも頭を下げてすぐに後を追う。

 取り残されたナナシは兵士達に対し、気まずそうに頭を下げて彼女達の後を追って行く。


 「おい!フロウ!どういう事だよ!?」


 彼女達に追いつき、大声を出す。

 何であんなに簡単に引き下がるんだ!?と、尋ねるが・・・彼女は周囲の店を見ながら答える。


 「何でって・・・大切な話をしていると言っていたじゃないか?聞いてなかったのかい?駄目だよ?人の話はキチンと聞かなきゃね」

 「いや・・・聞いてたけど・・・」


 自分の言葉など聞こえていないのか、フロウは徐に自分の懐を漁り始める。

 何をやっているんだ?

 意味が分からず見つめていると、彼女は視線を向けてくる。

 

 「ナナシ君・・・君、路銀はどれくらい持っているかな?」

 「・・・は?」

 「路銀だよ、路銀。生憎と私の手持ちは銅貨が3枚しかないんだ。君、幾ら持ってる?」

  

 え?こいつ・・・何言ってるんだ?

 まさか・・・いや・・・え?


 「もしかして・・・金を貸せって言ってるのか?」

 「おぉ!流石はナナシ君!話が早いね!で?幾ら持ってる?」


 喜々として尋ねる彼女に・・・返す言葉が見つからなかった。

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