失語症?
「12月に神大オケ行こうか思うてんねんけどな。一緒に行こうか?」
「やや」
「あ、そうか」
「どんな曲やんの?」
「あのな、『魔弾の射手序曲』『レ・プレリュード』それからチャイコの5番」
「ええやん。一人でいっといでえや」
「やや。チャイコの5番要らんな。他の2曲だけ聞いて帰るわ」
「リストええやん。『生は死のための前奏曲に他ならない』という『レ・プレリュード』よ。」
「最近よう言葉が出てけえへんねん。なんでやろ?」
「失語症か?」
「そうかなあ?」
「血液検査したら、肝臓値下がってたから、早速ジョッキ一杯飲んだわ」
「美味しかった?」
「いいや、あんまり美味しくなかったで。あんなに爽やかな味やったのにな」
「当分飲まん事やな」
「カルメン』てマリア・カラスの代表盤みたいに言われるけど
もうあの頃には声があまり出てないで。ライブのんはいいけどな」
「中北千枝子知っとる?」
「ニッセイのおばちゃん、自転車で♪やろ?」
「そうや。あの人の出た黒澤の映画みてるねん。
会社におった頃は斬ったはったみたいなんばっかり見てたが、
最近はもっと大人しいのを見てるよ」
「ええやん、そうしー。人殺し養成所みたいな映画やめとき」
「え?俺人殺しか?怒りっぽいだけやん」
「中北千枝子さん、あんたのお父さんと同じ年やったん?」
「そやねん。この映画の時、21歳や」
「ニッセイのおばちゃん、自転車で♪」
「この映画の最後のとこで中北千枝子がこっちに向かって
『お願いです皆さん、私達のために拍手を送って下さい!』
って言うねん。すると、フランスでは観客席から拍手が起きるらしいけど
日本では拍手が起きないそうだ。
俺は知ってるから拍手するだろうけどね。照れやろな」
「ピクシブとか見てたら、何かみんな胸が大きい方が好きなんやなと思うててん。
ウビーズと歩いてたら『今の良かったですねえ』って言うから、
『え?何が?』
『胸大きい』っていうとったな。」
「あんたはどうなん?」
「いやあ、俺もそうやわ」
「やっぱりーー・・・」
「なんか昔描いた絵とか、胸大きいわ」
「見せてん」
「どないや?」
「しかも、金髪青目がよかってんな。ペトレンコさんもそうなん?」
「いやあの人はチョコレート色やで」
「よ、俺がこれまで作った曲を数えてみたら何曲やと思う?ボツになったんを引いてやで」
「1000曲」
「そんなに作ってないで。400曲や」
「それって多いん?」
「いやあ、どうやろうなあ。わからないが、
『自然に帰れ』が出来た時、うちのオヤジが夢に出て来て
『いい曲1曲だけ作ったらええねん。そんなに急いて曲を作る必要ない』
って言ったわ。でもおいらは、それからも沢山曲を作ったよ」
「頑張ってるやん」
「そやろ?そんなに慌てんでもええと思うわ。秋になったら、また新しい曲作るだろうよ」
「ゲームの規則の中間部見た?」
「あれがどないしたん?」
「あれって、おばはんが飛行場にいかへんから悪いやんな」
「いや飛行士の思い込みが強すぎてんで」
「社交界って言うのがあるねんから、顔だけでも飛行場に出したらよかったのに」
「でも人妻やからね」
「その旦那も結婚する前から他所の奥さんと不倫してるやん」
「あんたの従兄弟の奥さん、結婚する前から不倫してたやん」
「そうよーー。なんでばれへんまま離婚に至ったんかな?金か?」
「金って何よ?」
「従兄弟と結婚したら金になる。それだけや。でも前の男とは別れられない。
まあそうした類の事よ」
「森番のシュマシェールも奥さんに愛されて無い。可哀想だ」
「でも彼は怒りすぎだわ。ピストルまで出して」
「張込みはどうだった?」
「高峰秀子が旦那に愛されて無い。奥さんなのに女中みたいや」
「最初の列車で横浜から佐賀まで行くのんがええやろ?」
「そんなことより、↓これいいわ」
「綺麗な♡」