ブレスネットの君② お前は全然悪くない
近くのカフェに行き、コーヒーを飲む。
「そういうことだったんだ。転職しろよ」
カフェに入るなり友人が、とにかく目を冷やせと、おしぼりを渡してくれた。
「そうする、後、告発とかしたいんだけど、金銭的に何が問題があるわけでもないし、どうしたらいいのかなって」
「先輩は昨日入籍したんだろ?今日から接触減らしていかないと、まわりから不倫と思われる」
「そうか、そうだよね。法的手段みたいなやつも相談した方がいいよね」
一緒に法律事務所をピックアップする。
友人のおすすめもあり、運よく、今日の夕方に予約できた。
付き合っていたと思っていたら実は私が浮気相手でしたなんて、本当に洒落にならない。
「わたしは普通にカレカノだと思っていたけど、半年ぐらい前からあまり先輩と会う日も少なくなってきたなって」
「うん」
はーっと、ため息をついてコーヒを一口のむ。
友人は私から連絡がないのを不審に思ってわざわざ出勤前に、朝から最寄り駅まで来てくれた。
「朝早くから、ごめんね。でも、すごく嬉しかった」
心強い。
うっかり涙が出そうだ。
友人は念のためにとペン型のICレコーダーを胸ポケットに刺してくれた。
「ないとは思うけど、なにか言われたら。使い方、練習しよう」
さりげなくスイッチを押したり、首からさげる身分証のICタグにペンを差した方が良いかと、色々試してみた。
始業時間30分前。
そろそろ、カフェを出なくては。
「ありがとう、朝から会社に行きたくないと思ってた」
「いいか、絶対に二人っきりなるな。
今日、法律事務所に行くんだろ?
終わったら連絡しろ、何かあったら愚痴でもなんでもいいから連絡しろ、わかったな?」
真剣な顔でそういう友人は本当に頼りになる。
「わかった」
「それと、そのブレスネット」
左手につけているプラチナのブレスネット。
「これ?」
「先輩からのプレゼントだろ?はずした方がいいんじゃないか?」
「これは初めてのボーナスで私が買ったやつなので」
お気に入りなのだ。
「そうなのか?よくつけていたからプレゼントかと思っていた」
「ちがう、ちがう。
そういえば先輩からプレゼントって食べ物とかお花とか、旅行とか形に残らないものが多かったな」
「はあ???なんだそれ」
「私は色々あげていたんだけど、そうかー」
指輪ひとつ、アクセサリーひとつ貰ったことないなぁ。
私もねだったことがない。
欲しいものは自分で買っていた。
そういうものだと思っていた。
「いいか、お前は全然悪くないんだ。わかったな?」
「わかった」
「ゼミの同期にこのことを広めておく。
お前に問い合わせもあるかもしれない。
とりあえず、返信は仕事が終わってから、法律事務所の後でにしろ」
「うん」
「じゃあ、またな」
友人が伝票を掴んだので、席を立とうとしたので、
「いやいや、ここは私が!来てもらったので!」
思わず私も席を立って友人の腕を掴んでしまう。
「はぁ?お前はこれから大変なんだ。コーヒーぐらい奢らせろ」
「う、せめて自分の分は出させて」
「はいはい」
二人して会計に向かう。
カフェを出て、友人は駅の方へ向かう。
「朝から本当にありがとう」
「お前はこれからが大変だろ、がんばれ。
終わったら絶対に連絡しろ」
「うん」
励ましてくれる人がいる。
それだけで、少し頑張れそう。




