ブレスネットの君① なんで教えてくれなかった!
番外編です
その日はなんだか慌しかった。
土曜日だというのに休日出勤。
これはもともと決まっていたことだ。
朝から駅で高校生のICカードを近くの交番に届け行った。
駅員さんに渡そうかと思ったが、駅員さんは、おばあさんの対応に追われていた。時間がかかりそうで、交番に渡したのだ。
会社での昼休み、先輩に呼び出される。
先輩は1つ年上で、大学の同じゼミからの付き合いになる。
付き合って、かれこれ二年目になる。
就職先に在籍されていて、お互いにびっくりした。
先輩は関連会社からの出向だった。
その先輩から「別れよう」といわれた。
半年後の海外のプロジェクトチームに参加することになり、三年は帰国できないという。
三年ぐらい待ちますよ!と言うと、それは建前で他に好きな人ができたと言う。
社内の方ではなく、もともと在籍していた関連の会社の方だった。
ダメもとで告白したら了解を得たので昨日、籍をいれて一緒に海外へ行くと言う。
二股、かけられていたのか。
社内では大学の同じゼミの後輩としか言ってなかったからよかったのかもしれない。
呆然としてその後は定時で退社した。
夜に、沸々と怒りが湧いて友人達に連絡しようとしたが、あの先輩のことだ。
私が勝手に付き纏ってと言うかもしれない。
泣くだけ泣いて、転職する、先輩のことをふっきる、と思いながら週末をすごしていた。
月曜日、駅で高校生にぶつかってしまった。
寝不足で不注意だったのだと思う。
ぶつかった男の子は私の顔をみるなりギョッとしてポケットティッシュを渡してくれた。
すごい顔をしていたのだろう。恥ずかしい。
駅のトイレで鏡を見ると泣き腫らした目がさらに赤くなっていた。
あー、どうしようか、今日は会社、休もうか。でも休んだら先輩の思うツボだったら嫌だ。
友人からメッセージが届いた。
「先輩、結婚して海外行くって聞いたんだけど、いつ結婚するの?」
「結婚相手、私じゃない。彼氏と思っていたの私だけみたい」
すくさま着信が入る。
トイレを出て、応答ボタンを押す。
「もしもし」
「いまどこ、詳しく聞かせて」
始業時間まであと1時間。
「えと、これから会社で、今、会社の最寄り駅
で」
「おれ、今、駅にいる」
ん?
少し先にスーツ姿の友人がいた。
お互いに通話終了ボタンを押して、友人のところへ走っていく。
「なんで!教えてくれなかった!!!」
友人の怒鳴り声が嬉しく思った。




