図書室と美術室の君たち② できるだけ長く
美術部員を紹介したいからと、昼休みに丘さんと美術室に行くと、二年生の美術部員は二犬さんと、サッカー部の火部君だった。
火部君は文化部の部長。
元々は美術部に入っていたんだけれど、サッカー部の友人に誘われて、昼休みは美術部、放課後はサッカー部に所属しているらしい。
火部君くんは丘さんに
「湯良羅の友達のテニス部の丘さん?」と聞いてきた。
「そうだけど?」
「湯良羅から聞いてる、よろしくね」
火部君は隣のクラスの湯良羅さんの彼氏らしい。
湯良羅さんは、剣道部で丘さんの友達と聞いたことがある。
二犬さんも丘さんもびっくりしていた。
「えっ、火部、彼女いたの??」
「彼氏って火部君だったの?」
湯良羅さんは彼氏がいるけど、火部君はモテるから女子からの目線が怖いからって、丘さんにも内緒にしていたらしい。
あっさりバラされたので、内密の話にしておく。
「愛上君は丘さんとつきあってるでしょ?」
火部君は俺に話しかけてくれた。
結構、気さくな人だ。
「そうだけど?」
丘さんは今日も俺のネクタイをしてくれている。
「湯良羅も美術部に入ってくれたらなー」
湯良羅さんが美術部に入ってくれたら、火部君がいても違和感がないだろうしね。
というか火部君目当てに美術部員は入部しなかったんだろうか?
丘さんは湯良羅さんにメッセージを入れてたり、忙しい。
「私だけ独り身だわ」
二犬さんが言う。
「先輩、私たちもです」
一年生の女子の2人がそう言っていた。
この一年生の2人が美術部員の部長と副部長になる。
俺らは兼部だし、二犬さん達は生徒会で忙しい。
そう考えると、部長も生徒会もしていた小佐治先輩はすごいなと思った。
一年生は根野葉先輩から引き継ぎをしているとのこと。
丘さんが、
「湯良羅が、美術部に入ろうかなってメッセージが来たけど」
と伝えると、
「よっしゃっ!!!!」
そう力強く言ったのは火部君。
「やったー!!部員が増える」
と、根野葉先輩が喜んでいた。
湯良羅さんが、5分しないうちに美術部に来て入部し、火部君は、とてもとても嬉しそうで。
みているこっちが恥ずかしいくらいだった。
「美術室は逢引き部屋じゃないんですけど」
二犬さんは不貞腐れたが、
「どちらかと言うと避難場所だよね」
と俺が言うと、
「いい例えですね」
と根野葉先輩が喜んでいた。
「美術部に入ったんだって?」
その日の夜、なぜか小佐治先輩と連絡を取るようになった俺は、スマホのメッセージを見てげんなりする。
「ひとり部員が退部したので、根野葉先輩から誘われ、丘さんと一緒に入りました」
「じゃあ、俺の後輩だね」
もともと後輩ですがね。
「美術部に生徒会役員が2人もいるってどこからかツッコミはなかったんですか」
「いや、火部君はサッカー部という認識が強くてあまりつっこまれなかったよ」
「そうなんですか」
やめた部員は元々、兼部だったそうで、二年生になってからはメインの部活が忙しくなり、退部するとのことだった。
それで急遽、部員を確保することなり、根野葉先輩は俺に目を向けた。
「俺が入れば丘さんも、入部すると思ってました?」
「そこまでは。でも楽しそうだね」
それは否定しない。
「火部君目当てに美術部に女子は入部しなかったんですか?」
「なかったな。火部君は昼休みに工作するのが好きみたいだよ。俺も付き添ってた」
「工作ですか?」
「椅子とか本棚とか、どちらかというと、インテリアや家具職人みたいな感じかな」
「なるほど」
「男子が2人もいて嬉しいな、俺の時に入ってくれたら楽しかっただろな」
まぁ、この先輩となら多分楽しかったのだと思う。
「そうですね」
そう返信した。
今年の夏はいつもと違う夏。
夏も、秋も、冬も、春も。
この先も、できるだけ長く一緒にいられますように。
本編はこれで終了です。
明日から番外編です。




