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図書室の君と美術室の君④ そうだろうな

愛上君が帰った後、俺は育に連絡した。

育から着信が入る。


「愛上君、全部知ってたよ。都奈のことも、丘のことも」


「まぁ、そうだろうな」


「育先輩の指示ですか?何もしないのは、俺ならそうしますって」


「言いそうだな」


「育はどこまで予想してた?」


「愛上君なら、全部知ってて、黙ってそうだなと思った。それでいいんじゃないか?」


「そうか。在学中に事件のことを知っていたならどうしていた?って聞いたら」


「「何もしません」」だろ?」


「あってる」


「「怪我した周世先輩には同情しますけど俺には関係ありませんから」とでも言いそう」



「同じこと言ってた、もう、お前らなんなんだよ」


はははと、育の笑い声。


「お前らは親戚か何かなの?勘弁してくれ」


「いや、違う。全くの赤の他人だ」


「そうか、じゃあな」


スマホの通話ボタンを切る。


俺が持ち物をとられ、怪我をした鎌倉にいた時、救急車を呼んでくれたのは育だ。


育が目を離したすきにやられたので、育はすごく後悔していた。


俺が小さい時に怪我をした時、傷跡を見るたびに、兄が「きずあとを見せつけてるのか」と怒っていた。


そんな罵倒がたまに頭の奥に残っていたことを思い出していた。


育は、兄と違う。当たり前だ。


三歳上の兄は家を出て一人暮らしだ。

あまり会うことはないが、去年、たまたま帰省していた時に、女装した俺の制服姿にびっくりしていた。


それから、今までよそよそしい態度から、なぜか優しくなったが。


兄に短髪にしたことをメッセージで報告する。


だから何?とそっけない返信だろうが。


予想に反して、来週帰宅すると返事があった。


「似合ってる」


兄はそう言った。


それだけで、なんだか、吹っ切れた。


お互いに笑い合った。

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