図書室の君と美術室の君① 聞いてくれますか
日曜日の午後、俺は小佐治先輩の家のリビングにいた。
小佐治先輩は短髪になっていて、当たり前だけどズボン姿で、どこからどうみても普通の、いや、かっこいい部類に入る男性だ。
「体の具合はいかがですか?」
グレーの対面式のソファーに座ってそう問いかける。
「大丈夫だよ、ありがとう。
在学中ではほとんど話してなかったから、なんだか新鮮だね」
「そうですね」
紅茶をすすめられたのでテーブルの上のカップを手に取る。
「今日、来てもらったのには色々あって、どこから何を話したほうがわかりやすいかな?」
俺は紅茶を一口飲んでみる。
美味しい、いい香りだ。
「都奈先輩」
俺は一言そう言った。
小佐治先輩は、気まずそうな顔をしている。
「やっぱり、わかっちゃった?」
「憶測です。憶測で物を言うのはあまり良くないと思っているんですが、聞いてくれますか?」
「そうだね、答え合わせに、なるのかな?」
「いえ、もう済んだことですから、まずは、元担任の話からしましょうか?」
「うん」
俺はカップをテーブルに戻した。
「元担任は、都奈先輩に目をかけていた。
それに気づいたのは育先輩と小佐治先輩だけ。それとなく都奈先輩を元担任に近づかせないようにした。
幸いにも都奈先輩と小佐治先輩は違うクラス。元担任が関わることはない。
あっても生徒会関係だけ。
それは卒業まで守られた、あっていますか?」
「あってる、なんでわかった?」
小佐治先輩は落ち着いている。
「それは後で説明します、そしてもう一人気づいていた、演劇部の丘先輩ですね?」
次に小佐治先輩はびっくりした顔になった。
「あれ、違いましたか?」
「いや、そうなんだけど、そこまでわかるの?後で聞こう、それで?」
「周世先輩の足は事故前から調子が良くなかったのではないか、というところから疑問を持ちました。
それで事故現場には陸上部の他に大会の見学に来ていた都奈先輩と育先輩もいた。
都奈先輩が事故現場にいたことで、元担任は加害者を激しく非難したでしょうね。
都奈先輩が事故に巻き込まれる恐れもありましたから。
そして小佐治先輩と周世先輩のお二人に元担任の目が行くようにわかりやすく行動した。
なるべく都奈先輩の目に行かないように、元担任の言動が都奈先輩に批判されるように。
でもそこに気づいたのが丘先輩です。
丘先輩は、演劇部で合唱部と合同で運動場で発声練習などをしていた。
運動場で陸上部の元担任の言動をみていて早くから気づいたのかもしれません。
だから先輩方に協力した。
丘先輩はもしかして元担任となんらかの関わりがあるのではないかと思いました。
それまで学校の近くに住んでいたのに、今年の4月から引っ越しをされていた。
家の都合か何かもしれません。
もしかしたら、丘先輩のお母様が元担任のお母様だったのかもしれません」
そこで一息ついて紅茶を飲む。
小佐治先輩は顔が青くなっていた。
「小佐治先輩、大丈夫ですか?」
「いや、うん、あってる。なんで気づいたの?俺は、俺たちはなるべく気づかれないようにしていた」




