図書室の君④ クラス違うから知らないです
放課後、昨日の席に丘さんは座っていた。
課題をしながら待ってくれるらしい。
今朝よりもドキドキしない。
見られてるという意識がないからかな。
本日のカウンター業務は部長と一緒だ。
誰もいない時に小声で聞いてみた。
「文化部って生徒会の見回りないんですか?」
「あるよ!知らなかったの?ほら入口みて!」
びっくりされた。
入口を見ると男性教師1名と女子生徒2名がいた。
「今日は会長で茶道部の伝手さんと会計で美術部の二犬さん、先生は」
「うちのクラスの担任です。後ろを向いてたからわからなかったです」
「生徒会は五月に交代だから今の会長達は二年生だよ。
同じ学年でしょう、知ってる?」
「クラス違うから知らないです」
マジかと、部長が呟いていた。
「生徒会の二年生は一年の時からの持ち上がりだから、部長会議でも進行がうまかったよ」
すごいな。部活の部長達は一癖も二癖もあると聞く。
運動部も文化部も先輩達はまだ引退していないから、大変だったろうな。
あれ?カウンターの方に来る。
「すみません、少しいいですか?」
二犬さんが声をかけてきた。
先生は本を見ていて、伝手さんは窓の外を見ている。
部長がなんでしょうか?と対応する。
「美術便覧のコピーは可能でしょうか?」
「個人で楽しむなら問題ありません。ただ、コピーは図書部員が行いどのページをコピーしたかなどを記入してもらいます」
「そうですか、では次回お願いします」
美術便覧のコピーか。
小佐治先輩は、コピーじゃなくてスケッチしていたと思う。
模写っていうのかな?
「小佐治先輩は模写をしてたね」
二犬さんが去ってから小声で部長が言っていた。
「そうですね、まぁ人それぞれですから」
「コピーしてもいいけど面倒だしいいよ。制限時間内でどれだけできるのも楽しみだ」と小佐治先輩は言っていたそうだ。
閉館作業が終わり丘さんと鍵の返却のため職員室は向かう。
「生徒会の見回り文化部もあるみたい」
「伝手さんとニ犬さんいたね」
「生徒会長と会計って今日知った」
「交代して1ヶ月も経ってないし、行事もこれからだから生徒会のメンバーはそのうちわかるよ」
そうなんだ。
鍵を返却して昇降口へ向かう。
「朝、丘さんと挨拶した後で、動悸、息切れをしたんだけど」と言ったら何故か爆笑された。
「ごめん、ごめん、今は大丈夫?」
「朝よりはマシ」
「そっかー、教室でもあまり話しかけない方がいい?」
「慣れるまでは、今まで通りで放課後に話してくれる方が助かる。ほんとごめん」
それから少しずつ話していく。
好きな食べ物、苦手な食べ物から始まりだんだんと打ち解けていった。