図書室の君⑳ 大事にしたい、大切にしたい
初めて手を繋いだ日。
お互いに好きになった日。
家に帰ってぼーっとしてたら、お姉ちゃんが部屋に来た。
「夕ごはん、食べてないって言ってたけど、大丈夫?夏バテ?」
「おねぇちゃん」
タオルケットを頭からかぶりベッドにいる私は、多分顔が赤いのだと思う。
「うん?」
「好きなひとに好きって言われた」
「あらー!よかったじゃない」
「そしたら、顔があんまり見られなくて、恥ずかしいけど、嬉しいけど、ニヤニヤしちゃうの」
「あぁ。とりあえずご飯食べようか」
もそもそと起きだす。
「明日、小佐治先輩の作品をみることになった。連絡をとってくれてありがとう」
「いえいえ」
違うクラスの幼馴染には、ネクタイの件を伝えたところ、「頑張れ」と言ってくれた。
好きな人に好きって言われたと伝えたら、「おめでとう、今度聞かせて」って言ってくれた。
とりあえずご飯を食べて宿題しよう。
明日は小佐治先輩の作品を見るんだ。
翌朝、愛上君の顔をまともに見れなかった。
普段から教室では接してなかったから、よかったかもしれない。
斜め前の男の子。
背中を見てるだけだったのに、隣に、手を繋げれるようになった。
今年の夏はいつもと違う夏。
大事にしたい、大切にしたい。




