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図書室の君⑲ 俺のネクタイ

「明日、部活が休みになったから美術部に行こうと思ってるんだけど、どうかな?」


昼休みに丘さんからスマホにメッセージが届いた。


日中に連絡なんて珍しい。


「そうだね、じゃあ行ってみようか?」


「お姉ちゃんに根野葉先輩に連絡してもらおう」


「よろしく」


放課後、図書室にて。


「明日、大丈夫って連絡きたよ」


丘さんがそう言った。


「楽しみだね」


「楽しみ!明日は男子テニス部が練習試合するからコートが使えないんだよね、休みで嬉しい」


「そうなんだ、平日に他校と試合をするの?」


「ううん、トーナメント方式でするみたい」


「へぇ、女子もあるの?」


「女子はあんまりないかな」


図書室の鍵をかけて職員室へ向かう。


「夏は暑いと外での部活は大変だよね、大丈夫?」


丘さんが隣にいて、あまり緊張もしなくなった。

教室内では相変わらず話はしないけど。


「うーん、日焼けは仕方ないけど。

夏休みは午前中は補講でしょ?図書室って空いてるの?」


「多分、空いているんじゃないかな?

閉館まで三年生が何人かいたような気がする。

去年は俺も午前中は補講、夕方まで図書室にいたよ。丘さんは去年どうしてたの?」


「補講だけ受けて帰ってた。

暑いから土日の午前中だけ部活になったよ。体力うんぬんより、もう暑くて、暑くて。

部長が大会もないし、平日は自主練、土日練習にしようと言ってくれて助かった」


「暑いと何もしたくないよな」 


今年の夏はいつもと違う夏。

丘さんがいて嬉しく思う。


鍵を返却し、昇降口へ向かう。


「それはそうと、毎日図書室は大変じゃないか?昇降口か駅で待ち合わせにする?」


「うーん、テニス部員はなんとなく勘づいているんだけど、あえて何も言わないのよ。

だから、このままでいい」


「そうか、大変じゃなければいいんだけど」


「愛上君の方が部活終わるの遅いからいいよ」


「図書室はエアコン効いてるしその方がいいかもな」


靴に履き替える。

夕方とはいえ、日差しがまだ強くて暑い。


「丘さん、いつも来てくれてありがとう」


「どうしたの?」


「暑い中、部活頑張って、終わって後片付けして、着替えて、また校内に入ってと大変だと思う。

でも、会えたらすごく嬉しいんだ」


放課後、まだかなって待っている自分に気づく。

会えたら、嬉しい。

話ができて、嬉しい。

視線を独り占めできるのが、嬉しい。


丘さんの顔が一瞬で赤くなった。


「えっと、あの、私も会えて嬉しい、か、ら」


可愛いなと思う。


丘さんのネクタイは、俺のネクタイ。

俺の。


一つに結んでいる肩まである髪、

ぱっちりとした目。


夏服になって、薄着になって。


丘さんに誰も触れてほしくない。


独占欲。




あぁ、そうか。


もう俺は丘さんのこと好きなんだな。



「帰ろうか」

左手を差し出してみる。


「手?」

丘さんは不思議そうに見てる。


「手を繋ぎたいけど、ダメかな?」


「だめ、じゃない、です」


手を繋いで駅までの帰り、


「あの」

「うん」

「手を繋ぐの嬉しいです」

「俺も」


指先が、手のひらが、触れそうな肩が、熱くて。


「丘さん、好きです」


やっと言えた。


丘さんはよく、告白してくれたと思う。


心臓が痛い。


今更無理とか言われたら泣けそう。


「私も、好きです」


好きな人に、好きと言われてうれしい。

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