図書室の君⑱ ええと、お任せします
梅雨が明けた。
今年も暑くなりそうだ。
「結果なんだけど、聞く?」
母がそう言った。
「聞く」
夕食後のリビングでコーヒーを二人分淹れて結果を聞く。
「まずね、小佐治君は軽い脳梗塞の既往歴があったみたい」
「きおうれき?」
「過去にかかった病気や怪我のことよ。
高校生の時に頭痛や手が痺れたりして、病院で調べてみると軽い脳梗塞だったみたい。
こちらはお薬と定期受診で改善してる。
手の痺れは今も時々あるみたい。
ただ、絵を描いていたでしょう?
腱鞘炎も発症していて、なるべく手を使わないようにって言われてたみたい」
「そうなんだ、高校生でも発症するの?」
中高年がかかるイメージなんだけど。
「ごくたまにあるみたいよ。大事に至らなくてよかった」
そう思う。
他の先輩方は知っているかは知らないが、もう卒業した先輩だ。
元気でいてほしい。
「それで鎌倉に行こうとしたけど、周世さんのこともあって、一人で早朝から行ったらしいのよ。
スケッチやらなんやらしていだんだけど、日が照ってきだところで、水分不足を感じた頃には、熱中症になってた。
前日の睡眠不足と熱中症による手の痺れが増強して、助けを呼べなかった。
これが、表向きね」
「うん」
「本当は、そこで加害者の弟と鉢合わせ。
弟は遊びの帰りだっだみたい。
たまたま、小佐治くんを見つけて、声をかけようとしたら、断られた。
そこで終わってればよかったのに。
弟は遊んでいた男どもに難癖つけさせて、小佐治君は暴行を受けた。
ただ、弟と小佐治君は初対面。
お互い何も知らなかったよね。
被害者のクラスメイトと、加害者の弟って。
病院に搬送された時には、意識不明で、持ち物全部取られていたから、身元も不明。
それで意識が戻ってやっと連絡が取れたのよ」
偶然とはいえ、弟が関わっていた。
「声をかけたって」
「女性と間違ったんじゃないの?」
「俺も最後まで気づかなかったから、わかる」
でも、スカートは履いてないと思うんだ。
「小佐治君、髪が長かったでしょう?
小さい頃に事故に遭って怪我してて、その傷を隠すために、髪をのばしてたみたい。
本人は気にしてないんだけど、周囲、特に小佐治君のお兄さんが気にしちゃって。
だから、髪を伸ばしてたらしいのよ。
でも、本人が、そろそろ髪を切ろうかなって」
「小佐治先輩と会ったの?」
「弁護士と両親の立ち会いで、短時間だけね」
「元気にしてた?」
「してた、してた。愛上ですって言ったら、「図書部の?」って言われたわよ。息子ですが別件ですと伝えたんだけど、押し花ありがとうと伝えてくださいって」
「渡せたんだ、よかった」
「周世さんのこともあって、事件のことは内密に。
弟ともどもは、周囲の防犯カメラで特定されているんだけど」
「うん?」
「あの会社ねぇ、吸収したとはいえ、もう胸糞悪いから、親をどっかに飛ばそうかしら」
「どっかって?」
「だいぶまともに働くようになったんだけどね。ちょっと遠くに飛ばして、姉が出所する頃には戻そうか検討する」
「ええと、お任せします」




