図書室の君⑰ 何事もなければいい
加害者は父の遠い親戚だった。
名前だけではわからなかったが、住所が父の実家がある市町村だったので見覚えがあった。
マップをみると父の実家の近くで、住まいは父の遠い親戚の住まいだ。
この家の人は、金を貸せと、いつもうるさいと両親が言っていたので付き合いはほぼない。
俺は会ったことはないと思う。
ただ、加害者には弟がいた。
弟は俺の3つぐらい上だったと思う。
あまりいい噂は聞かなかった。
そのいとこが、俺の高校の元教師だったのがびっくりした。
母も知らなかったという。
教師の方は、うちとの血のつながりが全くないからと、知っていたならなんらかの接触があったはずと、母は言ってた。
母が会社を経営しているが、知っているのがほんの一部だ。
会社を経営しているとなれば、親戚がうるさいと言っていたのは、多分このためだったのだろう。
そして、父の実家から鎌倉は近い。
「小佐治先輩のことだから万が一を考えて周世先輩に伝えずに、一人でこっそりと鎌倉に行ったのかもしれない。
そこで痺れが悪化したとしたら?」
と母に言ってみた。
「一つの可能性としてはあり得るわね。
保釈金の話が出たとに、周世さんの弁護士さんとも話したことあるから連絡をとってみましょう」
「母さんは、周世先輩の事件のこと俺に伝えなかったのはなんで?」
「言わなかったから、関わってないのかなと」
「ですよね」
「あと、単純に私が忙しかったと思う。ごめん」
「いや、多分俺もその時に聞いても、そっかーで終わってたから」
「そうよねぇ、とりあえずお風呂入っちゃいなさい」
「わかった。よろしく」
「任せなさい」
母は力強く言った。
何事もなければいいなと思ってる。




