図書室の君③ カレカノは強靭な肉体と精神を持っているに違いない
あれから駅まで一緒に行き、帰る方向が一緒で一緒に帰り、先に丘さんが電車を降りた。
丘さんの家はもともと学校の近くだったのだが、二年生になってから引っ越して電車通学になったという。
何を話したらいいのか覚えておらず、とりあえず連絡先を交換した。
自宅に到着し、夕食を食べ、入浴を済ませて、自室の椅子に座っていた。
付き合うってどうすればいいのかわからない。
宿題をするかと思ったけれどなかなか進まない。
丘さんは図書室でこの課題をしていたな。
なんだかそれは少しだけずるいと思った。
スマホが震える。丘さんからメッセージが届いた。
「明日、一緒に帰れますか?テニス部はこの雨でコートがぐちゃぐちゃなので晴れても休みです」
明日の天気は晴れなのか?
「部活は18時30分には終わります。それでよければ一緒に帰れます」
明日の天気は曇り時々雨、降水確率は60%、梅雨だな。
「放課後、図書室にいてもいい?邪魔しないから課題しながら待っていい?」
「もちろん」
翌日は曇りだった。
教室に入るとまだ丘さんは来ていないようだった。
リュックからノートを取り出す。
「おはよう」
目の前に、丘さんがいた。
「おはよう」
丘さんが俺の席を通り過ぎて、席に着く。
少し、緊張した。
授業中も休み時間も昼休みも、背中のというより、丘さんの視線が気になるし、丘さんの声も気になってしまう。
今日はいつもより心拍数が早い気がするし、呼吸も少し速い。
緊張感がそれだけあるのか。
明日から救心を持ってきた方がいいのか。
動悸息切れ気つけに言ってるし、ばーちゃんが持ってた。
でも持ってきたらばーちゃんが困るだろう。
買うか。未成年でも買えるのか?
心拍数も気になるし、ばーちゃんの腕に巻く血圧計でもつけていた方がいいんじゃないか。
でも持ってきたらばーちゃんが困るだろう。
買うか。
スマートウォッチは基本的に持ち込み禁止だが許可があればいいと聞く。
今なら動悸、息切れを理由に持ち込み許可が出るんじゃないのか。
買うか。
というか付き合っていない、まだ友達なのに、これで付き合ってる人達はすごいと思う。
カレカノは強靭な肉体と精神を持っているに違いない。
尊敬する。
動悸がしても、息切れしても、イチャイチャできるという本当にすごい人達だ。
尊敬する。
などなど考えているうちにやっと放課後になった。