図書室の君⑭ 先輩達は本当に大変だったと思う
「そんなことがあったんだね」
「お姉ちゃん、何も言ってなかったから、本当にびっくりしたよ」
「影の功労者なんだね」
「それと趣味って言った」
先輩達は本当に大変だったと思う。
でも楽しく過ごせていたようでよかった。
そして卒業後にお付き合いされていのを知って嬉しくなった。
「教えてくれてありがとう」
「言えてスッキリしたよ」
丘さんは笑って言った。
閉館作業をして鍵を職員室へ返却する。
入れ違いに根野葉先輩が職員室から出てきた。
「あ、根野葉先輩!」
丘さんが根野葉先輩に気付き声をかける。
俺はぺこっと頭を下げる。
「こんにちは」
根野葉先輩がふふっと笑って
「丘さんのネクタイは彼?」
と聞いてきた。
「「えっ」」
俺と丘さんは顔を合わせてしまう。
昨日会った時は丘さんはリボンだった。
今日はネクタイ。
丘さんの顔が赤い。
俺も赤いと思う。
「ええと」
丘さんが言ようとして
「はい、俺です」
「あ、愛上君」
「そうなのね、仲がいいね」
「いえ、あの、でも」
と丘さんが口篭っている。
「丘さん、俺、先に鍵を返してくる」
「あ、うん」
職員室の出入り口に固まっているのはよくない。
「あの、まだ、付き合ってないんですけど、よかったらって。それで、あの」
モゴモゴと丘さんが根野葉先輩に言っているのを背後から聞いて鍵を返却する。
職員室から出ても、丘さんと根野葉先輩が話しをしていた。
「あらあら」
「お姉ちゃんにはまだ言ってないんですぅ」
根野葉先輩より少しだけ背が高い丘さんが、拝むようにして話していた。
「内緒にしておきます」
根野葉先輩はキッパリと言った。
「お待たせ」
「あ、はい」
「駅まで私も一緒にいい?」
「「もちろんです」」
3人で昇降口へ向かう。
「丘先輩が、テニス部に妹がいるけど、何も関わりないがないと思うけど、よかったらよろしくって卒業式の日の朝に言ってたのよ。それまでは丘先輩に妹さんがいるとは知らなくて、びっくりしちゃった」
「そうなんです、あんまり顔も似てなくて。
校内でも、あんまり会いませんでしたね」
「テニス部と美術部だから接点が無いんだろうなと思ってだろうけど、会えるとは思わなかった」
「行事か何か絡まないと、別の部の先輩達とお話しすることないですもんね」
二人は楽しそうに話していく。
楽しそうでよかった。
今日は雨が降っていない。
そのまま3人で駅へ向かう。
「あの、小佐治先輩達はお元気にされているのでしょうか」
俺は遠慮がちに聞いてみる。
丘さんは小佐治先輩が行方不明だったことは知らないかもしれない。
「愛上君、周世先輩と小佐治先輩のこと見た目そのままに判断していました」
「えっ?知らなかったの?」
根野葉先輩はびっくりしていた。
「はい、本当につい最近まで知らなくて」
遠目でしか見ていないので、そんな事情があったとは知らなかったのだ。
「お元気みたいですよ」
根野葉先輩は言った。
だけど、なんとなく元気がなさそうだ。
「小佐治先輩は手先が器用で色々作っていたと聞きました。作品を見る機会ってありますか?」
これは本当に純粋な気持ち。
「在学中の作品は写真に残したりとスクラップにしてるよ。今度見てみます?」
「ぜひ。丘さんも一緒に見てみない?」
「見てみたい!先輩、お願いしてもいいですか?」
「もちろん、昼休みだと時間が足りないから、放課後がいいわね。
丘さんが部活がお休みの時に、二人で美術室にきてね」
すごく楽しみだ。
「小佐治先輩って日曜日の農業アイドル番組、好きなんですか?」
ぶはっと根野葉先輩が笑っていた。
「私も、同じことを小佐治先輩に直接聞いたよ。たまに見るくらいだと言ってた、やっぱりそう思うよね?」
「はい、部長から聞いてそうなのかな?って」
「わかるわー」
「そんなにたくさん作ってたの?」
丘さんが不思議そうに聞いてくる。
「俺も部長から少し聞いたぐらいだけど、お茶碗と花瓶と、布?って聞いた」
「布?」
「糸だったかな?」
「糸ですね。染めて、織って、布にしてました」
根野葉先輩が面白そうに言っていた。
「本格的」
「俺もそう思う」
どんな作品を創っていたのか楽しみだ。




