図書室の君⑬ 初めての男友達だから
「ネクタイ、難しい」
愛上くんのネクタイ。
後で、新品のが家にあるけど、そっちがよかったかな?って聞いてくれたけど、
「これがいいです!」と力説してしまった。
ネクタイを外す姿が少しかっこよかった。
愛上君はドキドキさせる天才だ。
洗面所でネクタイの練習をしていると、お姉ちゃんが帰ってきた。
「ただいまー、うがいさせて」
「いいよ、おかえり」
場所を少し譲る。
「あんたまだ制服なの?あら、ネクタイ??結んであげようか?」
うがいと手洗いを済ませてたお姉ちゃんが言う。
「うん、難しいね」
「練習あるのみよ」
お姉ちゃんの手でネクタイがすばやく結ばれる。
「根野葉先輩が、お姉ちゃんによろしくって言ってたよ」
「メッセージが来てたよ、元気にしてた?」
「元気だったよ!根野葉先輩もネクタイしてた。彼氏いるのかなー」
キュと最後の締めるところで、お姉ちゃんがぶぶっと笑った。
「いやいや、あれ小佐治のネクタイよ」
「あれ、小佐治先輩、周世先輩の彼氏じゃなかったの?」
ぎゃははははと、お姉ちゃんが笑ってしまった。
違うの??
「あー、おかしい。めっちゃ笑った。ご飯食べたあと、話してあげる」
すごく気になる。いつもより夕食を早めに食べ終わる。
長い話なるからと、お茶をいれて、お姉ちゃんが話してくれた。
お姉ちゃんが演劇部の部長の時に、演劇部の副部長と美術部の副部長の根野葉さんが仲がよかったそうだ。
小佐治先輩を女装させたいので、衣装貸してくださいから始まり、色々な衣装を着せたり、ポーズを取らせたり。
時には周世先輩や育先輩を巻き込んで。
時には写真部を巻き込んで。
自由きまままにしていたそうだ。
小佐治先輩が二年生の3月、手が痺れるからと早めの美術部の引退を決め、副部長の根野葉さんが部長になったそうだ。
お姉ちゃん達三年生になった4月の中旬、周世先輩が事故にあい、周世先輩は陸上部を退部。
片足のギブス生活を余儀なくされた。
周世先輩は電車通学だったけど、駅のホームでスカートにコーヒーをぶちまけられたり、その他色々あって、陸上部のジャージで登校していた。
それからは被害は格段に減ったという。
でも担任の心無い一言で周世先輩をはじめ、クラスメイトがドン引き。特に女子が担任を見る視線が非常に冷たかったという。
お姉ちゃんは演劇部の衣装の中から、周世先輩のサイズの制服のズボンを後輩に探させた。
お姉ちゃんは、その間、生徒会と美術部の部長と話し合い、部活動の部長会議を早めることにした。
女子のズボンの着用可の原案を出すので最初に部活動の部長全員の意思がほしかったのと、
「しかも、担任のいとこが周世の事故の加害者だったのよ」
「何それ!信じられない!」
「学校側も最初は知らなかったのよ」
「うわー、最悪だね、その担任」
「もう学校を辞めたから会うことないよ」
担任と加害者が周世に対して何をしたかというのを知ってもらいたかったという。
その後、周世先輩がズボンとネクタイで登校するから、小佐治先輩がスカートとリボンで登校するようになった。
「一人ぐらい男装がいたら一人ぐらい女装がいてもいいんじゃないかと」
面白そうという意味と、担任が周世だけに責めさせないという状況も作りたかった。
同じクラスで生徒会の小佐治ならぴったりだ。
そして、女装しても違和感がない。
「周世先輩も小佐治先輩も似合ってたよね。
クラスの男子は知らなかったよ」
「でしょ?私と根野葉が毎朝ヘアメイクしてたもん」
ニヤリとお姉ちゃんが笑った。
「だからお姉ちゃん早くに家を出てたんだ。部活の朝練だと思ってた」
「根野葉が髪担当、私がメイク担当。
1時間くらい早く学校に来て、ヘアメイクした後に、小佐治がお菓子を持ってきて、周世が飲み物出して。小佐治の手作りのお菓子が美味しかったなー」
「毎朝やってたのがすごい」
「流石にテスト前はやめたけど。朝早く行くと、誰も校内にいないからゆっくりできた」
「小佐治先輩、お菓子作るんだね」
「パンもつくってきたね。なんでもつくる器用なやつよね」
卒業式の後、小佐治先輩のネクタイと上着は美術部員にあげたのだと言う。
「根野葉がネクタイもらって、他の部員はブレザーのボタンだったかな?
手編みのカーディガンを美術部員からもらってた」
「じゃあ、根野葉先輩は小佐治先輩が好きだったの?片思い?」
「あんな、女子力高い人が彼氏なんて無理です、見てるだけが一番いいです。
恋愛じゃなくて、先輩として、人として尊敬するって言ってた」
「人として尊敬」
「好きな人のために一生懸命に接する小佐治先輩が好きって言ってた。
周世のことが好きな小佐治が好きらしい。
ほぼ、一年間、女装する根性もすごいけど」
「じゃあ周世先輩と小佐治先輩は付き合ってたの?」
「まだ付き合ってなかった、が正解かな。
卒業式の後に付き合ったと聞いた時、あんなにイチャイチャしてたのに?付き合ってなかったの?ってびっくりしたわよ」
「イチャイチャしてたの?」
「イチャイチャというか、いつも一緒にいたわね。お昼も一緒だったし。でも一緒にいるのが自然で嫌じゃなかった」
愛上君が言いたいような、二人の雰囲気がなんとなくわかった。
「で、ネクタイは誰からもらったの?彼氏?」
「ええと、彼氏ではないけど、好きな人からもらった」
「何部?」
「テニス部でも演劇部でもないよ」
「年上?年下?」
「ノーコメントです」
「気になるー!なんでネクタイもらったの?」
「なんでって、言われても。いる?と聞かれたから、嬉しいと言った」
「片思いなわけ?」
「いや、お互いに知ることからはじめようという段階です」
「あんたは好きだけど、向こうは好きかどうかわからない、でもネクタイくれたんだよね?脈があるってこと?」
「多分。一緒にいると動悸息切れがするから救心買おうかなって言ってたけど、全力で止めた」
「うけるー!もう、付き合ってるんじゃないの?」
「うーん、わからない。初めての男友達だから」
お姉ちゃんの話を愛上君にも話したくなった。
用事のため土日は休みます




