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美術室の君⑭ カレカノになったら、カレのネクタイを締めるのだろうか

小佐治の特別。


誰にでも平等に接していた小佐治の特別。


側に居れる。


触れたり、触っても嫌じゃなかった。


足の経過は順調。走り出しは少し痛みが出るし、皮膚が引き攣るが、それでも、走れることが嬉しい。


使っていた足を挙げる小さな椅子も保健室に置いた。

誰かの役に立つといいなと思う。


制服一式は演劇部に寄付した。ただし、小佐治が着ていたスカートは、捨ててもらった。

あのスカートは、クリーニングに出しても、いい思い出はない。

小佐治が気にしてなくても私が気にする。


小佐治は卒業式の日、上着とネクタイを美術部の後輩に渡した。

グレーのカーディガンは似合っていた。


来年度から女子もネクタイ着用が可能になる。

カレカノになったら、カレのネクタイを締めるのだろうか。


小佐治のネクタイとズボンを借りていて私が言うのもなんだけど、小佐治がネクタイを締めてくれた日、ドキドキしてしまった。

家でもネクタイの練習をしていた。

時々「ネクタイ曲がってる」と直してくれる小佐治の指先が、少し震えていたのに気づくのには、随分後になってからだ。


触れたりするのは、気持ちが伴わないと苦痛でしかないからと、小佐治は言っていた。


思えばギリギリ触れないのように配慮してくれたのかもしれない。


そして冬のズボンは快適だった。

傷にも触らず、冷たい風にさらされることなく、暖かい。


小佐治が「スカート、めっちゃ寒い!腹巻きしろ、タイツを履け、膝掛け使え!」とキレまくっていた。


スカートの寒さを身をもって体験した小佐治は、男子にスカートがいかに寒いか力説していた。


彼女がいる男子は、デートの時はなるべく室内でいたり、寒くないか聞いたり、色々と気配りをしたらしい。


元担任と加害者は罪に問われていた。

しばらく会うことはないだろう。


小佐治と学部は違うが、同じ大学に入学できたのは本当に嬉しい。


育も都奈も違う大学。

それも少し寂しいが、たまに会うと思う。


大学生活は緊張する。


だけど小佐治が側にいるだけで少しは違うと思う。


小佐治が笑う顔、ゆっくりと触る指先、周世と呼ぶ声。


どれも大切なものだ。


小佐治の指が時折痺れたりするのが気になるが、「今のところ大丈夫」と言っていた。


しつこく聞いても教えてくれないので、様子を見ることにした。

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