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美術室の君⑨ タイツでわかる部長がすごい

納得できるピンク色がでるようになったのは、8月も終わりの頃。


夏休みは美術室と図書室、そして入試の面接の練習など行っていた。


腕の痺れは続くので、反対側の腕で描いたり、手に筆を巻きつけて色を塗ったり、とにかく色々試してみた。


周世は時々、図書室に来て一緒に勉強する。

足の経過は良好で再手術はなしになった。


来月には装具が取れるという。


まだ走ることは無理だが、早歩きや階段の昇降がスムーズにできるようになっていた。


周世と一緒に美術部と演劇部に顔を出すと、部員が興奮して着せ替えしたり、無理のない範囲でポーズを取ったりしていた。



9月、第一志望の大学のAO入試。


無事に合格できた。

流石に入試は男子の制服で行った。


進学先が一足先に決まったことで、気持ちも落ち着き、今よりも絵に集中できた。


一つ一つ、丁寧に、焦らず。

自分が持っているベストを尽くす。

放課後は周世と過ごすため、昼休みに絵を描いていた。


「小佐治先輩、女装っていつまで続けるんですか?」


ある日の昼休み、美術部長が言った。


「冬?せめて女子がタイツ履いてくる時期までかなぁ」


これは周世と決めたことだ。 


周世の足の動きは順調だが傷跡が目立つ。

少し見せてくれたが、皮膚が盛り上がり、ひきつれ、ピンク色になっていた。


俺は特に何も思わないが、本人が少し気にしていた。


「小佐治、傷が目立つからタイツ履くまでズボンでいい?」


「いいよ」


寒くなると傷に響くらしい。実際は冬にならないとわからないが、女装を続けるのは問題ない。


「傷跡が目立つんですか?」


タイツでわかる部長がすごい。


「うん。あと寒いと傷に響くらしいから」


「そうですよね。傷跡が目立たないテープなんかもありますけど、寒いときついですよね。小佐治先輩も冬は寒いですのであったかくしておきましょうね」


「ありがとう」


ふと気づいた。


「ごめん、寒いと朝早いのきついよね。ヘアメイクも上手くなったから大丈夫だよ」


と言うと、


「先輩、私の、楽しみを、奪わないでください!」とはっきりと怒られた。


同じクラスの演劇部の部長にも同じことを言われた。こちらも、受験が終わったので気にしないでとのことだった。


「周世先輩、小佐治先輩のシュシュ、ピンクと青、どちらがいいと思います?」


「周世、小佐治のアイシャドウ、キラキラとそうじゃないとどっちがいい?」


と、なんでも周世に聞いてくる。 


周世は困ったように「ピンクかな」「キラキラかな?」と決めてくれる。


俺がどっちでもいいと言うから決めてもらっているのだ。


「周世、大学進学したら周りはメイクしてるから、今のうちに手順を見ときなよ」


俺はそう言う。


服装はなんだっていいんだ。


「小佐治先輩が周世先輩のヘアメイクをするっていう手もありますよ」


「いや、俺と周世は希望する大学違うから」


「「「えっ」」」


そんなに驚くところか?


「小佐治先輩、進学先ってA大学でしたよね?学部って理学部で間違いないですよね?」


「そうだけど」


「周世先輩の希望大学ってどこですか?」


「A大の法学部」


「「ほらー!!!」」


一緒の大学だった。知らなかった。


「学部が違うとキャンパスも違うだろうし、滅多に会えないんじゃないかな?」


「そうですけど、そうですけど!」

「小佐治、学科が違うと言え、知り合いがいるいないでは全然違うよ」


そうなのか。


「先輩の進学先はどちらですか?」

「美容師の専門学校よ。ちなみに同じ学校の子はいない」

演劇部の部長はそう言った。


「美容師!似合ってます!」

わかる。俺も進学先を聞いた時にはびっくりした。


「服飾と迷ったんだけど、美容師の方が食いっぱぐれがないかなって」

ちゃっかりしている。


「周世、頑張りなよ」


「頑張ってくださいね、周世先輩」


「ありがとう」


「俺はー?」

俺も頑張ってるんだけど。


「「「頑張ってる(ます)」」」



11月、納得がいく絵が完成した。


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