美術室の君② 多分、俺が、お姫様?
美術準備室に設置したソファーセットはすごくよかった。
他の美術部員達も「座り心地がいい」「ティーセットがいる」
「他の椅子に座りたくない」 などと、おおむね好評。
「校長室のソファーとか破棄されませんかね」
「談話室のソファーでもいい」
「事務室のソファーでもいい」
ソファーセットは「絵の具がついて汚れたら嫌だからデッサンの時にしか使えない」と美術部員全員が思ってしまった。
年が明け、雪が降っているある日の昼休み。隣のクラスの周世を呼び出した。
「周世悪いんだけど、練習が休みの時っていつ?」
「今日は雪が降っているから休みだよ」
たまたま今日は休みらしい。
「ちょうどよかった、悪いんだけど、今日の放課後に美術室に来てくれない?」
「いいよ、なにかあった?」
「後輩が」
「うん」
「衣装や小道具は演劇部から借りたから、騎士の真似をして欲しいと」
「うん?」
「俺が盾を持つから、周世は剣を持って欲しいって」
「待って、どういうこと?」
「それかお姫様でもいいそうです」
「どっちが?」
「多分、俺が、お姫様?」
俺の方が髪が長い。
ウィッグは借りるのが無理そうと言っていた。
「ねぇ、小佐治の後輩達は何を目指してるの?」
「ヘアメイクに演劇部とついでに写真部も呼んでいいですかって」
「待って、本当に」
「なんか本当にごめん」
後輩達に頼まれたのだ。
先週から、美男美女を描きたい、いや男同士を描きたい、いいえフリフリドレスのお姫様を描きたい、騎士を描きたい、モデルはいないか、などと言っていた。
そこに俺が「美男美女はおいといて、騎士のモデルはできるよ、育も声をかけようか?」と言ったところ、
「ぜひ!周世先輩も!!あのタッパですから、男装もいけます!!」
「育先輩のムキムキは夏にお願いします!冬は寒そうなんで!多分お衣装が入らないと思うので!!」
「まって、小佐治先輩なら女装もいけるはず?」
「「それだ!!!!!」」
後輩達、どうした?と思ったら「ゲームのエンディングがハッピーエンドではなくて、切なくて、ぜひこの思いの!丈を!新刊に!ぶち込みたくて!!」「バレンタインが近いからどこもかしこも浮かやがって」「たくさんのチョコがでるからバレンタインは好きなんですけど」
という事を伝えると、
「小佐治は後輩思いだね」とあきれながら周世から言われた。
その日の放課後の美術室は歓喜に沸き、大興奮のうちに終わった。
今思えば、本当に純粋に楽しかったのだ。




