課せられた使命:3-1
ミアは死ぬのが怖いわけではなかった。
世界が滅びるという責任を負わされて、逃げるのを阻まれていたのだ。
彼女が使命を投げ出すと決めたとき、自分が力になろうとエリオは決めていた。
二人で逃げ出して、二人で暮らそうと心に誓っていた。
枯れゆく世界の片隅で、二人で暮らそう。
彼女の小さな身体で背負うには重すぎる運命。
怖いのも当然だ。
逃げ出すのを誰も咎めまい。
「我は誰かの言いなりになるのがなによりも嫌いだ。そういう人間もだ。だから聖女よ。小さき聖女よ。大人たちの重圧で運命を背負わされているというのなら、そんなもの背負わなくてよいのだ。お前の道はお前が選んでゆけ。従者もお前を助けるだろう」
「……うん。アルタイル、やっぱりやさしいね」
にこりと笑うミア。
そんな彼女を見ていると、エリオは自然と胸が苦しくなった。
そういう笑いかたをきっと、彼女にさせてはいけないのだ。
「でも、今はやれることをやる。クリスタルにマナを注ぐよ」
それから七日経ち、ついに竜の翼が完成した。
金属の骨組みと動物の皮の皮膜で作られた義翼。
見た目は竜の翼だ。
この翼で本当に空を飛べる保証はまったくない。
ミアたちは完成した義翼を持ってアルタイルのもとへ訪れた。
そして、モーングイレヴの大人たち総出でアルタイルに義翼を装着したのであった。
長い時間をかけてどうにかアルタイルに義翼を着けた。
敵対していてる竜が人間の技術を身に着けている。
ふつうでは考えられない光景だ。
「てへへっ。これで空が飛べるねっ」
「……ふむ」
アルタイルは長いで背中の義翼を眺めている。
「さっそく飛んでみてよ」
「そうするとしよう。風が起こる。そのへんのものにつかまっておけ」
ミアたちは周囲の木や岩にしがみつく。
アルタイルが両翼を上下に動かす。
すさまじい風が巻き起こる。
モーングレイヴの人たちは木や岩にしがみついて、吹き飛ばされまいと耐える。
ミアはエリオの腕の中にいる。
エリオは彼女を抱きしめつつ、木にしがみついていた。
アルタイルが何度か翼を羽ばたかせた――そのときだった。
ばきっ、という音がして、アルタイルに装着していた義翼が折れた。
義翼はアルタイルの身体から離れて宙を舞い、山のふもとに落っこちていった。
「義翼が……」
「壊れちゃった……」
失敗だった。
モーングイレヴの人たちが作った義翼は風圧に耐え切れず、壊れてしまった。
ミアの考えた案は失敗に終わった。
ざわめくモーングレイヴの大人たち。
エリオはうなだれるミアの肩にそっと手を置いた。
「こうなる可能性は最初からあったのです」




