調理
店は臨時で閉店にした。
昔から来てくれる常連もほぼ亡くなっているので問題はない、流石に生きてる常連が毎週来る日は店を開くが基本的に開いてるほうが稀である。
爺ちゃん婆ちゃん世代からある軽トラを乗り回し、業務スーパーをハシゴする。
大体の食材を買い終えた俺は機械の壁に話しかける。
「お前が飯を食わせたい人数を教えろ、それによって買い足す必要がある。」
『宇宙船の搭乗員が1500人いるけど、作れるのかい?』
「………」
頭の中で計算する。とりあえずは、可能と結論がでる。
「3時間はかかる、昼飯になるから申し訳ないが我慢しろ」
《謝らないで!こちらから頼んだ事だからね、ワクワクしながら邪魔にならないように黙って見てるよ。》
「さて久しぶりの重労働だ。」
先ずは米を炊きまくる。巨大な炊飯器を5つ同列稼働させる、電気関係はメカメカしくなった壁にコンセント挿せば解決した。
一義は食材に挑みかかる。豚肉ロースだけで75キロ、大根は百本以上。他にも人参に里芋、ゴボウにこんにゃくにジャガイモ。自分でもイカれた量だと思うが適量だ。
爺ちゃんと婆ちゃんが経営していた時に一番繁盛していた時の名残、120リットルサイズの寸胴が2つに新しく勝った同じサイズの寸胴。
一口サイズに切った豚ロースをフライパンで炒めながら下味をつけ、切った野菜を加えて炒めるを繰り返す。
100リットルの水の中に炒めた食材をぶちこみ、火にかけて煮込む、調味料は醤油は550CCで出汁の素は130グラム程だ。
後はとりあえず煮込む。
次は主役の生姜焼きである。
調理前に漬け込んであるが2000枚とは圧巻である、おかわりをする奴等を想定して用意したが焼くだけで重労働だな。
諦めて焼きまくりパックに詰めまくり、冷めないように熱湯に浮かべておく。
今回の定食は生姜焼き定食、豚汁付きのキャベツ無し。
かなり頑張ったので値段は1800円なんて暴利を
『一つ20万円! 販売開始!完売!』
未来人達ってメニュー見てないだろ、1秒かからず完売とか金銭感覚が狂ってる。
ガシュ
カステラ並の厚い封筒がトレーに乗って出てきた。
恐らく封筒には一つ一千万が入っていて、それが30個という事だろう。
「三億円とか宝くじかよ……複数のサイトで食材購入するか、今でさえ近所の店が買い占めで迷惑してるからな」
まあ次の食事はこだわってやる。全国各地から新鮮な食材を、ほぼ無制限で取り寄せられるとか最高だな。
「真昆布とか最高級の鰹節とか、俺も食うから楽しみだ。」
『こちらは艦内の皆がもれなく号泣していてまいまして、収拾がつきません。』
俺はグッグと手のひらを握り呟く。