怪談「白いボール」
私が中学生の時に体験したお話です。
私は部屋で寝ていました。
日頃から眠りは深い方で、その日もすっかり熟睡していたと思います。
そんな私が夜中にふと起きてしまいました。
「・・・ ん~・・・ 外まだ暗いな・・・今何時だよ・・・」
そう思い枕もとの目覚まし時計を見ようと体をねじろうとしたが・・・動かない。
金縛りでした。
「・・・ あ~・・・ 金縛りか・・・ 久々だなぁ・・」
慣れっこでしたw
幼少期から金縛りは良くあったので、特に怖くもなく、もうそのまま寝ようかと目をつぶりました が、寝れない。
「・・・寝れないな・・・ 体も動かないな・・・ どうすっかな・・・」
寝れない。 頭がスッキリと冴えてしまって全然寝れない・・・
せめて体動かして体勢でも変えられないかなぁっと体を動かそうと何度か動かしてみると・・あれ?少し動くなぁ・・
金縛りが何となく解けてきたのか、体が少し動く。 そして、ぎこちなく体を横にねじり、仰向けから横に寝転がろうと体を動かすと・・・
横になった私の顔の目の前。 真っ白いボールがある。
大きさは丁度バレーボールくらい。 もちろん、私の部屋にバレーボールはありません。
「・・・え? ボール?? なんで??」
なんだかわからず、そのボールをじーっと見ていると、だんだん目が闇に慣れてきて、それがだんだん見えてくる。 と・・・ あれ? これ・・・ボールじゃないな・・・
その、ボールだと思ったモノ、それは妙につるっとしていて、まるで陶器の様。
そして、見ていると・・・だんだんとその真っ白なソレが 変化してる??
それは うっすらとですが、なにかうごめく様な感じがあり、だんだんと 上のほうが黒くなっていき、下の一箇所がだんだんと 薄く淡く・・赤くなっていく・・ そう、それはまるで口の様・・・
そこで私はわかりました。 ああ、これ・・・顔だ。 っと
その顔らしき白いソレは、だんだんと色が濃くなっていき、上のほうは黒く・・・まるで髪の毛の様になっていき、目にあたる場所は、だんだんと窪んでいき、口らしき場所は、だんだんと赤く、唇の様になっていく・・・
「なんだ・・これ・・ ダメだ・・ 見ないほうがいい・・」
そう思い、顔を背けようとしても 動かない。 目をつぶろうとしても 何故か、目がつぶれず、むしろ目が離せない。
そうしてる間にもそれは だんだん だんだんと 人の顔・・・それは、幼い女の子の様な顔に・・・
「な!?・・・」
唖然として息を飲む。そうしている間にもそれは、どんどん人の顔を模していき、それはまるで・・・おかっぱの女の子・・・それは こけしの様・・・
「ああ・・・ダメだ・・これ 見ていちゃだめなヤツだ!」
どうにかしてそれから顔を背けようとしますが 動かない! 目もつぶれない!離せない!
私は必死にソレから逃れようとしますが、どうにもならず、顔からは嫌な汗が出てくる。
そうしている内にも、ソレはどんどん どんどんと 人の顔・・・真っ白な血の気の無い、おかっぱの少女の様な顔・・・
「やばい・・・やばいやばいやばいやばい!!」
心だけが焦っていくが、体も顔も、まぶたすら動かず、 そして、ソレはとうとう眠っているようにまぶたを閉じたおかっぱの少女の顔に
「くそ!! 動かない!! 目が離せない!!」
顔に嫌なあぶら汗をかき、どうにか動こうと、逃げようともがこうと した瞬間!
今まで眠ったように目を閉じていたソレが、 パチッっと目を開け、バチッ!っと 目が合った! 背中が一気にサーッと冷たくなる。 そして、ソレが ぐぐぅっと 距離をつめて来る! 息がかかるほどの 指一本分くらいの目の前でソレが私の目を、覗き込んでくる!
「・・・・・・・・・ あっ・・・・ 」
あまりの出来事に、私は何も考えられず、ただただソレと目が合ったまま硬直してしまう。
時間にしたら数秒だったかもしれません。
ソレと目があったまま、唖然と硬直する私、 そしてソレは スーッと 何事も無かったように消えてなくなり、そして、私の意識もスーッと消えていきました。
ピピピピピピピピピピピピッ!
私はいつもの様に、かけておいた目覚まし時計で目を覚ましました。
目が覚め、すぐに昨夜の出来事を思い出し、がばっと!一気に飛び起きました。
すると、私は寝汗でびっしょりと濡れていました。
「・・・・昨夜のあれは・・・夢だったのかな?? だとしたら、 相当な悪夢だったなあ・・・ 寝汗もすごいし・・・」
びっしょりと濡れたパジャマが気持ち悪く、シャワーでも浴びて着替えようと ベットから出るために手を横につくと なにか違和感 それは・・・
手の突いた場所が 丸く 凹んでいる・・・ それはまるで・・・ 丸いボールの様なものが、長い時間そこにあったかのように・・・
アレがなんだったのか・・・今でもわかりません。
ただ、その出来事があってから、私は金縛りになっても、決して横を向かないようにしています。
この話を聞いた皆さんも、横は向かないほうが良いと思いますよ?