デートです
さて……今日の天気は快晴!!
いよいよ紅羽先輩とデートです!!
服装は黒のパンツに水色のシャツその上に紺色のジャケットにした。
我ながら無難で軽快なイメージの服装だと思う。
紅羽先輩はどんな服装で来るんだろうか。
全く想像できない……カジュアル系? 大人女子系? 紅羽先輩ならどんな服装でも似合いそうな気がする!!
そんなわけで待ち合わせ場所についてしまったけど……まだ時間は9時。
早く着きすぎてしまった。まあ遅刻するよりはいいよね。それに、女性を待たせるのは失礼だし。
もう少ししたら紅羽先輩にLINEしよう。
それまで多少弓道のことについて調べてみようかな。
『弓道 作法』
と打ち込み検索を始める。すると色々と難しい用語や射法といった詳しい解説が出てきた。
(へぇ……こんなに難しいこと紅羽先輩はやってるんだ)
そんなことを考えながらスマホに釘付けになっていると
「優人君?」
「は、はい!!」
いきなり声をかけられたが……まあ、声と呼び方で予想は付いている。
紅羽先輩だ。そんなに時間経ってたのか? いや、かなり早く来てしまった僕も僕だけど。
「紅羽瑞希ちゃん!! 到着致しましたです!!」
いつもとは違う……新鮮な感じ。
いつもとは言ってもまだ制服姿の紅羽先輩しか見たことないけど。
髪はふわっとゆるふわ巻き髪でオトナの女性っぽさを引き出し、
ホワイトやベージュを中心に統一されていて色気があり無意識に紅羽先輩を意識してしまう。
失礼を覚悟の上で思うけど女性ってこんなにも変われるんだな……。
「ほ、ほんとに紅羽先ぱ……み、瑞希ちゃんなんですか?」
「もう少しで"紅羽先輩"って言ったのに……」
「言ったらお願い事きかないとじゃないですか‼︎」
「だから言ってくれてよかったのに……」
「言うわけないじゃないですか!!」
……でも、もし言ったらどんなお願い事をされたんだろう?
やっぱり「結婚して」とか「付き合って」なのだろうか。逆に気になってくる……。
「ねえねえ!! うちの服装どうかな? かわいい?」
「その……かわいいというか、オトナな女性って感じがします」
僕からしたら紅羽先輩は十分に大人だと思う。
知識も人生経験も僕よりは多少なりとも多いはずだし。
「オトナな女性か〜。それも悪くないねっ!!」
「質問してもいいですか?」
「どーぞ?」
「僕がみ、瑞希ちゃんって呼ばずに紅羽先輩って言ったら僕にどんなお願い事するんですか?」
「うーん、そうだな〜。まだ決めてない!! えへへ」
な……まだ決めてなかったのか。
でも可能性は0じゃないし「付き合って」とか無茶ぶりを押し通される可能性もあるんだね。
「優人君!! とりあえず弓具屋さん行こ? うち優人君とデートするの楽しみなんだからさ」
「そ、そうですね!! 弓具屋さんに行きましょう!!」
紅羽先輩と僕は公園を後にし弓具屋さんに向かった。
いざ、弓具屋さんに着くと専門店は専門店だけど、専用のスポーツ用品店とはまた雰囲気が違った感じの店だった。
「ここが弓具屋さんですか……」
「そうよ!! なんかこう"The和風"って感じでしょ?」
紅羽先輩の言いたいことが分からないでもない。
最近のお店は和風っぽさがなくなりつつあるし、そう言った面では新鮮でワクワクする。
「今時だと珍しい外観ですね」
「最近の店はほとんどが洋風になってきてるからね〜。
うちはこの和風っぽい外観結構好きなんだ〜」
「めっちゃわかります‼︎ 僕もこの和風って感じ好きです‼︎」
紅羽先輩は和風が好きなんだな。
意外というか別に意外ではないかもしれないけど、紅羽先輩の好きなものが一つ知ることができて少しだけだけど嬉しい。
「とりあえず、中に入ろうか。
大丈夫‼︎ 何も緊張することないから。
……独特な雰囲気があって苦手な人は苦手かもしれないけど」
ちょっと待って⁉︎
独特な雰囲気って何?説明が少なすぎて理解が追いついてないんですけど?
「ど、独特な雰囲気って何ですか?」
「店に入店すれば否応もなしに分かるよ」
紅羽先輩から不安な助言をされドキドキしながらの弓具屋さんに入店した。
店内に入ると和風の音楽が流れていて店内に置いてあるテレビには弓道をやっている人の映像が流れていた。
「どうしようかな〜」
「紅羽せ……瑞希ちゃんは何を今日は買いにきたんです?」
「うーんとね、今日は矢を新調しようと思ってて」
「矢ですか……いろいろなデザインだったり色があるんですね」
「かわいいよね〜。
前は青色の羽のちょっとお洒落なの使ってたんだけど、今回はどうしようかな〜。赤色のもいいし、あえて白に黒線が入っているのもいいよね〜」
紅羽先輩は夢中になって矢を選んでいる。
どれにしようかと悩みながら選んでいるその姿はまるでお菓子やおもちゃをえらぶ幼い少女のようだった。
やっぱり紅羽先輩は綺麗というよりかわいい要素の方が強い気がする。
「優人君はどれがいいと思う?」
「え、ぼ、僕ですか?」
「うん‼︎ 優人君の意見も聞いておきたくて」
「でも僕の意見より自分の直感を信じた方がいいと思いますよ?
所詮僕の意見なんて他人の意見なんですから」
「いいの‼︎ どれがいいか優人君が直感で決めてみて‼︎」
どれがいいと言われてもな……
全く矢のことなんてわからないし、正直どれでもいい。
色やデザインで選ぶとすると、格好良さより、どちらかいうと目を惹く珍しさで勝負したい気持ちがある。
全体的に見渡してどれがいいかと選んでみると一つだけ心に刺激が通った矢があった。
「これなんてどうですか?
個人的にめっちゃ好みなんですけど」
「確かに、滅多に見るデザインじゃないわね」
僕が選んだのは、羽がピンクに黒い線が一本入っている独特なデザインだった。
シャフトもピンクで全体的にピンクで染まっており羽の黒がピンクをより引き立たせているようなデザインだった。
「うちこれにする‼︎」
「え……僕が選んだのでいいんですか?」
「優人君が選んでくれたからいいんだよ〜。
うちだけで選んだら絶対にこの色に巡り合うことはなかったわけだし、これにするの‼︎」
確かに一理あるかもしれない。
僕と弓具屋さんに来て矢を選んだことで今選んだ矢に巡り合えたと言っても過言ではない。
そう言った意味では自分の意思だけではなく誰かに選んでもらったりするのも悪くはないのかもしれない。
「ちょっと買ってくるね‼︎」
「あ、はい」
紅羽先輩は買う矢を手に持ちレジの方へ走っていってしまった。
無邪気というか何というんだか。
弓具屋さんというところに初めて入ったけど、いろいろなものがあって楽しい。
僕一人だったら絶対に入ることはなかっただろう。
ふと、店内の商品を見渡してみると少しかわいい弓道をモチーフにしたキャラクターのキーホルダーが目に入った。
(これ紅羽先輩にプレゼントしたら喜んでくれるかな?)
紅羽先輩は矢の長さを調整するために店の奥の方にはいってしまっているし、買ってプレゼントするなら今しかない‼︎
僕は迷わずキーホルダーを一つ取りレジで購入した。
紅羽先輩喜んでくれるといいんだけどな。
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