紅羽先輩の部屋にて
そんなわけで紅羽先輩……いや、瑞希ちゃんと鍵をした部屋で2人きりです。
2人きりで部屋ということはつまり……そういう解釈でいいんだよね?
落ち着かずにソワソワしていると紅羽先輩が話しかけてきた。
「あのね?」
「は、はい」
「藤原に告白された」
「え……いつ告白されたんですか?」
「弓道の大会中午後の部が開始した後に呼ばれて告白されたんだ。
『大会中に言うことじゃないのはわかってる。だけど今言わせてもらわないと射に集中することが出来ない。
ずっと前から好きだった。俺と付き合ってもらうことを考えてほしい』って。
正直、大会中に言われたから午後の射はブレブレで結果はボロボロだよね。
藤原はいいかもしれないけど私の射が集中できなくなるっての」
正直驚くことしか出来なかった。
まさか藤原先輩が紅羽先輩に告白するとは。
いや、紅羽先輩は美しく、綺麗。
モテる容姿なのは十二分にわかっているし告白されても当たり前だ。
けれど……なんだろう、この心にあるモヤモヤした感情は。
「よ、良かったじゃないですか」
「ホントにいいの? うちが藤原に取られちゃうかもしれないんだよ?」
「……」
「ほら、黙っちゃう。やっぱり取られるのは嫌なんでしょ?」
「そんなの……」
「そんなの?」
「そんなの当たり前じゃないですか! 瑞希ちゃんは綺麗だし美しい、それでいてかわいい一面もあって魅力的です!」
「ちょ……嬉しいけど、堂々と言わないで。恥ずかしいじゃん……」
「え……あ! ごめんなさい!」
藤原先輩に取られないように紅羽先輩を褒めたつもりだったがストレートに言いすぎてしまった。
けど、紅羽先輩を誰にも取られたくない気持ちは本物だ。
僕が紅羽先輩を思う気持ちは世界中誰にも負けない。
「じゃあさ、優人君はうちのこと好きってことでいいんだよね?」
「はい! もちろん、瑞希ちゃんのことは好きです」
「ねぇ、優人君……キスしよ?」
「はい!?」
紅羽先輩は恍惚としているように見える。
まるでなにかに取り憑かれてしまったように。
「もう一度聞くけどうちのこと……好きなんだよね?」
「は、はい。好きですけど……」
「好きですけど……何?」
「好きです! 大好きです」
「ふふっ、ありがとう」
そういうと紅羽先輩はいきなりキスをしてきた。
今までとは比べ物にならないくらい長い時間、唇を離さなかった。
徐々に上唇と下唇が緩みお互いの舌が触れ合い絡み始める。
とても濃厚で深く、相手を感じ取ることが出来る。
「ねぇ……」
「は、はい?」
「うちとさエッチしてみない?」
「な、なに冗談言ってるんですか。ははは」
「冗談だと思う? うちは本気だよ?」
服を脱ぎ、キャミソール姿になって真剣な目で訴えてくる。
おそらく紅羽先輩は本気だろう。
僕の手を掴み紅羽先輩の胸に押し当てられる。
きめ細やかな肌がみずみずしくてつるつるしている。
「あの……」
「ほら、うちは大丈夫。ね? 優人君の好きなようにしていいよ?」
心臓がいつもの3倍の速さで鼓動している。
慌てて紅羽先輩の手を払い胸から手を離す。
「ダメです! こんな不純なこと……」
「不純じゃないよ? お互いに愛し合ってるんだから純粋な愛だよ!」
確かに、純粋かもしれない。
お互いに愛し合いお互いを求めるのであれば不純要素は見当たらない。
「僕と瑞希ちゃんはまだ学生です。もし、妊娠したら? 瑞希ちゃんの人生を壊してしまったら? 僕はまだ責任を負うことが出来ません」
「そっか……」
「それくらい瑞希ちゃんのことを考えて愛しているんです! だからこそ真剣にお付き合いをして——」
「安心したよ」
「え?」
「あのまま優人君にめちゃくちゃに襲われても良かったけど、優人君はちゃんと理性のブレーキが付いてるんだね。ちょっとした検証も兼ねてたけどやっぱりうちは優人君が大好きだよ!」
紅羽先輩はいきなり力強く抱きしめてきた。
不思議と嫌な感じはしない。
優しく包み込まれているような感じがした。
「ちょ、いきなり抱きしめないでください! それに、検証ってなんですか?」
「ん? あぁ、友達が無理やり襲われたから優人君はどうかな? って思って」
「なんですか……それ。あ、話したくなければ話さなくていいですけど」
「んー詳しくは言えないけど少し仲良くなった男友達を家にあげたんだって。そしたらいきなり抱きつかれて、キスされて、押し倒されて……まぁあとは察して」
「な、なるほど……理性のブレーキか利かなくなってしまったということですね、それは」
「きっと一時的な性という欲望に飲まれてしまったんだと思うよ」
「なんか、ごめんなさい」
「まぁ……優人君も男の子だもんね、性的興奮はしちゃうよね」
「そっ、それは瑞希ちゃんだから興奮しちゃってるんです」
「硬くなってるのはそういう事なのかな?」
紅羽先輩が僕の意識とは全く関係なく反応してしまっている部分を凝視している。
正直密室でキャミソール姿の好きな人がいて興奮しない人がいるだろうか……否! いるはずがない、と思う。
何とか僕の理性がしっかりしているうちに行動を起こさないと。
「あ! さっき好きなようにしていいって言ってましたよね?」
「え……言ったけど、何!? まさか襲うつもり? 優人君が狼になるの?」
「僕も……男なんでね。一応瑞希ちゃんにも教えておかないと」
「わかった、優人君が男の子ってことは知ってるから!」
逃げようとする紅羽先輩の腕を掴み対面で座らせる。
先程は襲って来ないと高を括っていたのだろう。
よく見ると紅羽先輩は小刻みに震えていた。
震える紅羽先輩を今度は僕から優しく抱きしめる。
「え……襲わないの?」
「襲うってなんですか。真剣にお付き合いをして順序を踏んで愛を深めていきましょ。それに襲うって言うなら今、襲ってます。これが僕の今できる精一杯の『襲う』という行動です」
「やっぱり優人君は優人君だ。優しくて安心したよ」
「あ! 瑞希ちゃん……目閉じてもらっていいですか?」
「え……わ、わかった」
怯えながらもゆっくりと紅羽先輩が目を閉じる。
目を瞑り震えている紅羽先輩の唇を奪った。
自分からキスをするのが初めてですごく緊張してしまった。
もしかしたら紅羽先輩に緊張しているのが伝わっているかもしれない。
少しの間唇を重ね合い、安心しきったのか紅羽先輩の震えは無くなりお互いに抱きしめあった。
「初めてだよね。優人君からキスしてくれるの」
「そ、そうですね」
「何〜? 緊張してるの?」
「緊張してますよ? しないわけないじゃないですか!」
「あのさ、本当に襲わないの?」
「瑞希ちゃん……その発言、アウトですよ? 逆に襲って欲しいんですか?」
「だってキスしたらそのままうちを押し倒して服を脱がせたりするんじゃないの? なんかの本で見たよ?」
「その知識偏りすぎてますよ……。
とにかく、今はキスまで! ね? 今後のことはしっかり考えて行動しましょ?」
「うんっ!
よし、じゃ藤原の告白断る!」
「いいんですか?」
「だってうちには優人君がいてくれるし優人君以外の彼氏は嫌だもんっ!」
そう言うと紅羽先輩からもう一度キスをされた。
紅羽先輩は本当に良かったのだろうか?
そう思ってしまう反面、僕を選んでくれたという嬉しさもあった。
その後は特に何も無く普通にお話したり、デートの予定を立てたりなどしていた。
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