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まずはお友達から

 入学初日から最悪だ……。

 疫病神と貧乏神がセットで憑いたのか?


「あ、紅羽先輩? なんでよりによって僕なんですか?

 僕なんかよりもかっこよくて優しい男の人はごまんといますよ?」


「うちは君!! 小野寺君がいいの!!」


「あのー。なんで僕の名前知ってるんですか? 教えてないですし、今日入学したばかりですよ?」


 すると履歴書のようなものをひらひらとさせた。

 目を凝らしてみてみると僕が高校に提出した履歴書だ。


「な、なんで履歴書を紅羽先輩が持ってるんですか!?」


「うふふ。これが生徒会の権力よ」


「いやいや、権力じゃないですよ!!  個人情報管理ガバガバじゃないですか!!」


「ほかの生徒は大丈夫よ!!」


「僕の情報が全然大丈夫じゃないです!! 現在進行形で危機にさらされています」


「ねぇ~結婚しよ?」


「だから、僕以外の人にしてください!!」


「……さっき、体育館で『目』合ったでしょ?」


 紅羽先輩の言葉に胸が早鐘を打った。


「え……あ、合いましたね」


「うちはあの瞬間恋に落ちたの」


「はい?」


「君と目が合った瞬間時間が止まって声が出せなくなったの」


「は、はぁ……」


 正直僕も時間が止まった感覚に襲われた気はする。

 けど自分だけだと思っていたから、まさか紅羽先輩も同じ感覚に陥っているなんて。


「これは運命なの!! だからうちは君といや……小野寺君と結婚したい!!」


「分かりました」


「え!! 結婚してくれるの?」


「違います!! そういう意味の分かりましたじゃありません」


「なぁんだ……残念」


「先輩の言いたいことはわかりました。

 失礼ながら先輩は今何歳なんですか?」


「えぇ、女の子に年齢を聞くのは失礼じゃない?」


「じゃあ、いいです!! 一応、先輩との結婚を真剣に考えるために年齢確認をしたんですけど……」


「あぁ、分かった分かった。

 うちは3月生まれの17歳だよ~」


「まだ先輩17歳ですよ? 今後の人生のパートナーをそんなに早く決めちゃっていいんですか?」


「小野寺君なら大丈夫!!」


「どこからそんな自信が湧いてくるんですか……」


「ふふん。直感よ!!」


 あ、ダメだ。

 直感とか言い始められたらどうすることもできない。


「でも、若いうちなんてすぐに目移りするものですよ?

 ほら、『隣の芝生は青い』っていう言葉もあるくらいですし。

 結婚までいかなくても付き合っている途中で相手の嫌なところに目が行って、

 嫌いになっていく生き物ですよ。人間って」


「なんか、小野寺君って大人だね。

 博識っていうのかな? ますます好きになっちゃった」


 ダメだこの人……早く何とかしないと。

 それに、生徒会の権力とか言ってたよな?

 まさか、この危ない人が生徒会長とかじゃ……さすがに考えすぎか。


「と、とにかく!!

 結婚は絶対無理です!! それにわかってます? 僕達まだ未成年なんですよ?」


「あ……」


「『あ……』って。

 先輩には一般常識というものがないんですか?」


「う、うるさいっ!!

 一般常識くらいあるもん!!」


「現時点で一般常識がないように見受けられるんですど、その点についてはいかがお考えですか?」


「うぅ……そ、それは。

 うちの小野寺君に対する想いは一般常識くらいじゃ止めることはできないの!!」


 失礼だとは思うけど紅羽先輩は頭のネジじゃなくてメインコンピューター自体が欠損してしまっているかもしれない。

 どうすればこの状況を打破できる?

 早く教室に戻りたいし……。


「紅羽先輩、僕教室戻っていいですか?」


「ダメに決まってるでしょ!! うちと婚約するまでは教室に戻すことはおろかこの生徒会室から出さないわ!!」


 これは、意地でも僕を教室に返さないつもりか。

 やれやれ、手荒な手段は使いたくなかったけど……。

 一度大声で威圧してこの状況を切り抜けようか。


「あの!!」


 大声を出したためか紅羽先輩はビクッと体を震わせた。


「僕教室戻っていいですか?

 入学初日から呼び出されるとか気分が悪いんで」


「ご、ごめんなさい……」


「紅羽先輩は3年生だからって調子に乗ってないですか?

 それに、いきなり結婚って無理に決まってるじゃないですか!!

 僕より先輩なんですから少しは冷静になって考えてください」


「はい……」


「でも、しっかり考えた上でそれでも僕のことが好きなら……まずは友達から始めませんか?

 話はそれからです」


「え……?」


「その……完全に断ってしまうのは紅羽先輩に対して失礼ですし……

 付き合うとか結婚は無理でも友達なら問題ないですから!!

 あ、でももし迷惑ならお友達もやめておきます!!」


「……」


 紅羽先輩は無言になり頬には、涙が伝っていた。

 しまった……いくら先輩とはいっても女性だ。

 強く当たったらダメに決まってるのに……。


「……あの、紅羽先輩?」


「あ、ごめんごめん。

 泣いてなんかないから!!」


「え……で、でも」


「とにかく泣いてないの!! うちは全然大丈夫だから。

 それより!! うちと友達になってくれるんだよね?」


「あ、はい。

 友達なら喜んでならせてもらいます!!」


「じゃあさ、友達ついでに一つお願いしてもいい?」


「付き合うとか結婚はダメですよ?」


「そ、そそ、そんなことは当たり前じゃない!!」


 明らかに動揺しているし……。

 友達ついでに「付き合って!!」とか言おうとしてたんじゃないか?


「それで? 僕にお願い事って何ですか?」


「さっきの部活動紹介、話は聞いてたよね?」


「えっと……紅羽先輩が紹介していた『弓道部』まではしっかりと聞いてました」


「そっか、ならばよし!!」


「何が『よし!!』なんですか? 全く状況が飲み込めないんですけど……」


「うちの部活紹介は聞いてたんでしょ? ならお願い事には全く影響しないから『よし!!』なのよ」


「ま、まさか……」


「そう、そのまさかよ!!」


「やめてください!! 僕は運動部なんかに入らず帰宅部か文化系の部活に所属して幽霊部員になろうとしてるんですから!!」


「……帰宅部? そんな部活は存在してないわよ?」


 あ……先輩が言うくらいだし帰宅部ってやっぱり伝説の存在なんだ。

 残念。この一言に尽きる。


「とにかく、僕は運動部には入らないって決めてるんです!!」


「弓道部入ってくれないの? じゃあうちと付き合って。

 絶対にどっちか一つ選んで!! これは先輩命令よ!!」


「はい?」


 いやいやいや、卑怯するぎるでしょこの先輩。

 確かに友達にはなったかもしれない。

 でも、やっていることがほぼ脅迫じゃないか!!

 付き合うのは……無理。となると消去法で残されたのが弓道部。

 運動部と言っても弓道は走りこむとか球技とは違った運動部だからな……。


「それで? どっちにするの?

 うち的には付き合ってくれると嬉しいんだけど?」


 絶体絶命とはまさにこのことを言うんだろう。

 今すぐにでも逃げ去りたいけど入り口を紅羽先輩に塞がれているから不可能だ。

 とりあえず弓道部のことを聞いてみて入るかどうか決めよう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘お願いいたします。

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