竹下さんと通話
家に帰りダラダラとスマホを弄っていると、《ねぇ、優人君の声聞きたい》と紅羽先輩からLINEが来た。
《わかりました。かけてきてください》とメッセージを打ち送信する。
数秒もしないうちに紅羽先輩から電話がかかってきて急いで電話に出た。
「ちょっと優人君? あの愛ちゃんって女の子何なの? うちに喧嘩売ってるの!?」
やっぱりその話か。
なんとなく想像はしてたけど紅羽先輩にとってはライバルみたいな存在が現れたんだもんな。
喧嘩を売られているように感じても無理はないだろう。
「いやいや、竹下さんに悪気はないですって。それに最後に仲直りしてたじゃないですか」
「してたけど……あの時は仕方がないでしょ? うちは少なくともあと数か月は弓道部で顔を合わせることになるんだし、それより優人君のほうが大変だと思うけどね」
「大変? なんで僕が大変なんですか?」
「はぁ……優人君は同学年なんだよ? それに両方とも振った上に優人君は恋人がいないということだからね?」
「それはわかります。それの何が大変なんです?」
「まだわからないの……? いい? うちは強制するわけじゃないけど恋人がいない状態だと愛ちゃんが優人君と距離を縮めようとしてくるんだよ」
「え……それってかなりやばいじゃないですか!!」
「やっと事の重大さを理解したのね……」
紅羽先輩は大きくため息をつき落ち込むのが通話越しにも分かった。
けど、竹下さんが僕との距離を縮めるために狙ってくる?
いやいや、流石にないでしょ。
いくら一目惚れとは言っても相手が紅羽先輩なら誰だって引き下がるって。
そんな甘い考えをしているとLINEの通知音が鳴った。
「ちょっと待ってくださいね」
「ほいよ〜」
紅羽先輩に一言断りを入れLINEを確認すると竹下さんからだった。
《少しお話できませんか?》とシンプルながら距離を詰めてきているのが分かる一文だ。
「瑞希ちゃん……やばいです」
「何? どうしたの?」
「竹下さんからお話できないかとLINE来ました」
「愛ちゃん……本気で優人君の恋人狙ってるわね」
「まさか、僕なんか狙う価値ないですよ」
「価値はあるよ」
紅羽先輩の一言はとても真剣で重みのある雰囲気で話した。
紅羽先輩は自分が絶対と思うことに関しては曲げない人だ。
それ故に『結婚』や『恋愛』の時も真剣だったのだろう。
「優人君は不意に見せるやさしさ、人一倍頑張ろうとする努力、相手のことを考えれる思いやり、そのすべてが魅力的なんだよ」
「……」
「ちょっと聞いてるの?」
「聞いてます。聞いてますけど、あの……それ言われる側ってめっちゃ恥ずかしいんですよ? 顔の温度が熱くなってますし」
「うちは本当に思ってるよ。だから優人君との将来のことも真剣に考えてるし」
「あぁ……もう! なんですか? 瑞希ちゃんは僕を照れさせて殺すつもりですか?」
「そんなつもりあるわけないじゃん。あーあ、隣にいてくれたらギューしてとどめさせてたのにな〜」
「完全に絞めに来てるじゃないですか……」
「とにかく! 愛ちゃんに気をつけること、別に遊ぶなとは言わないけど……。
その……うちの事を1番に考えて欲しいな」
「瑞希ちゃんの事を1番に考えるのは当然です! 部活休みの時にデート行きましょ! なのでこれからもよろしくお願いしますね?」
「うんっ! 優人君大好き!!」
紅羽先輩の声が明るくなったのが聞いていてわかった。
あまり、長電話をするのも申し訳ないのでまた電話すると約束をして電話を切った。
さて……竹下さんに返信しないと。
《どうしました?》一旦この文で送り返そう。
送信してから1分も経たないうちに《通話出来ますか?》と返信が来た。
いきなり通話ですか……まだ竹下さんのことそんなに知らないんだよ?
思い返すと紅羽先輩もいきなり電話かけてきてた気が……でも、多少は話したりしてたよね。
紅羽先輩との初回電話は……デートの予定立ててたな。
返信だけしておこう。
《通話出来ますよ》と打ち込んで送信!
送って即 《かけてきてください》とLINEが返ってくる。
僕の方からかけるんですね。
なるほど……なるほど?
え、めっちゃ緊張するんだけど。
紅羽先輩は慣れたから大丈夫だけど初対面というか初の相手にかけるのは緊張する。
《かけます》と送信してから数秒後覚悟を決めて通話開始ボタンを押す。
呼び出して3回ほどのコールで竹下さんが電話に出た。
「も、もしもし」
「もしもし、竹下です」
「あ、小野寺です! それでお話とは一体何でしょうか?」
「いや、そのゆ、優人君と2人きりでお話ししたくて通話したくて……特に話題があるってわけじゃないんですけど」
「そうなんですか。えっと、じゃあ質問してもいいですか?」
竹下さんに聞きたいことはたくさんある。
少しは竹下さんのことを知ることが出来るだろう。
「はい! なんでも聞いてください」
「竹下さんは今までお付き合いとかしたことはあるんですか?」
「ないです! 今までは人に興味がなかったというか、中学生の時は勉強一筋だったので恋愛から離れてました」
「なるほど、竹下さんは高校では勉強一筋じゃないんですか?」
「高校では青春を味わいたくて勉強だけではなく恋愛や部活に力を入れたいと思ってます!」
「おお! いいじゃないですか」
「あの……」
「はい?」
「私も、瑞樹先輩みたいに“愛”って名前で呼んで貰いたいです」
「あ、わかりました! 愛さんって呼びます。あと、同学年なんですし気楽に話しませんか?」
「そうですね! 敬語辞めてタメで話しましょ!」
「はい! そうしましょう」
「ちなみに、次の日曜日って予定あります?」
「今のところは家でゴロゴロする予定ですね」
「一緒にお出かけしませんか?」
「いいんですけど。えっと、それって二人きりでですか?」
「もちろん! 私と優人君だけでお出かけするんです!!」
「要するに僕とデートがしたいということでいいんですか?」
「ですです!」
食い気味にデートを要求してくる竹下さん。
これは、紅羽先輩に助けを求めたほうがいいのだろうか?
けど、逐一竹下さんとの交友関係を報告する必要があるだろうか?
まだ両方ともお付き合いはしてないし、浮気にはならないはず。
それに報告をしても紅羽先輩が嫉妬してしまうだけなら報告しないほうがいいよね。
紅羽先輩にメッセージを打とうとしていたが途中で辞めトーク画面を閉じ、ホーム画面に戻ってカレンダーアプリを立ち上げた。
「日曜日ですね。時間とかは何時にします?」
「あれ? い、いいんですか?」
「ん? やっぱり行くのやめます?」
「行きます! ぜひとも行かせてください!」
出かけたい気持ちが強かったのか竹下さんは3倍ほどの声量で話した。
危うくスマホを落とし画面がお釈迦になるところだった……いきなり大声で話すのはやめてもらいたい。
「わかりました。わかりましたから時間を決めましょう」
「午前中に集まってお昼食べて夕方に解散するのはどうでしょう?」
「集合場所はどこにします?」
「私動物園行きたいんだけど、動物園集合でもいい?」
「なんか、めっちゃ女の子っぽいですね」
「う、うるさいっ」
恥ずかしかったのか照れ隠しのために怒られてしまった。
日曜日の動物園デートがいったいどうなるか。
竹下さんとはこれから部活での付き合いがあるし険悪な関係にはなりたくない。
けれど、紅羽先輩との関係を大事にしたい。
そのために竹下さんのお付き合いは断らせてもらわないと。
日曜日に僕の思いをすべてぶつけて竹下さんを説得しようと思う。
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